「危機管理マニュアル」と「危機管理広報マニュアル」を正しく準備しておくことで、いざというときの行動がガラリと変わってきます。
法人にとって問題はもちろん起きないのがベストですが、起きてしまう可能性が「0」でないことも事実です。万が一、問題が起きてしまい危機的状況におちいってしまったとき、本当に法人にとっての危機となるのかは、対策を正しくおこなっているかどうかにかかっているのです。
危機管理のマニュアルについて正しく準備しておくためのノウハウをしっかり学んでいきましょう。
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目次
危機管理広報マニュアルとは
危機管理広報マニュアルとは問題が起きたときにメディアや法人関係者、そのほか多くのことへの初期対応から収束までの手順が詳しく記載されているものをいいます。問題が大きければ大きいほど法人トップや役員、顧問弁護士にとどめておき、極秘で話を進めるケースが7割も起きているのです。何も知らされていない、広報やリスク管理をしている部署(仮にリスク管理部とします)は大混乱におちいり、最終的に法人を守り切れないという最悪な事態を招いてしまう恐れもあります。
法人内で実際に現場で働く社員や、外部とのコミュニケーションをとっている広報部などに、危機的状況を知らせることができれば、事前に状況把握することができ、法人全体の混乱や、トップや役員による隠ぺいなどから従業員や法人を守ることができるのです。そのとき力を発揮するのが、危機管理マニュアルや危機管理広報マニュアルの存在です。
危機管理広報マニュアルに必要な6つの項目
危機管理広報マニュアルに記載しておきたい項目は大きく分けて6つあります。
- 問題が起きてからの初期対応
- 問題が起きたときの広報対応の準備(1)
- 問題が起きたときの広報対応の準備(2)
- 問題が起きたときの広報対応の実施(1)
- 問題が起きたときの広報対応の実施(2)
- 問題が起きたときの広報対応の実施(3)
1. 問題が起きてからの初期対応
・問題の情報収集
問題が起きてしまったら、まずは情報収集をおこないます。もちろんすべてを把握するには時間がかかってしまいますので、今すぐ把握できる情報を収集しておきましょう。
・社内連絡
問題が起きてしまったら、まず誰に報告すればいいのか、どういうルートをたどって最終的に誰に報告できていればいいのか、迅速に対応するにも示しておく必要があります。
・待ってもらうために
問題が起きてしまってから、世間に説明するまで時間がかかっては信憑性や誠実さにかけ、世間の目も冷たくなってしまいます。しかしながら、事態をまだはっきりと把握できていないのに適当なことを言ってしまうと、隠ぺいととらえられてしまったり、法人のイメージがさらに悪くなってしまう恐れもあります。把握できているところまで正直に話し、必ず情報開示する旨を伝えることで少し時間をもらうことが大切です。
・報告書の作成
問題が起きてしまったとき、問題の発端から収束までを一か所で管理しておく必要があります。どのような経緯で問題が発生したかなど、あとで見返したり、今現在やるべきことなどを確認したりとさまざま目的に使用するため、なるべく事細かに記載しておくのがいいでしょう。
・危機管理広報対応方針の策定
危機管理広報による最善の対応がとれるよう方針づくりも必要です。方針に取り入れるべき項目は次のようになっています。
すでにメディアが問題を知っているか?もしくはすぐに知り得るか? 知るまでにどれくらいの時間があるか? |
まだ問題が公になっていないのか、それともすでに周知され問い合わせを受けているのか、など |
問題に対する報道ランク | 報道規模や法人に対する悪影響の度合いなどから、あらかじめランクをつけておく |
緊急対策本部立ち上げの要否 | 問題に対する対応・対策の部署が必要かどうか |
危機管理広報対応の要否 | 危機管理広報部による対応が必要かどうか、また必要な理由も記載しておく |
危機管理広報によるメディアへの対応方針 | 「情報開示は行うのか」「記者会見の要否」ニュースリリースや個別対応などメディアに対する方針をあらかじめ定めておく |
危機管理広報による内部への対応方針 | 法人内への情報開示を全員にするのか、部署で区切るのか、役職で区切るのかなど内部に対する方針をあらかじめ定めておく |
危機管理広報による外部への対応方針 | 消費者やユーザーなど外部に対する対応が必要かどうか、対応日や対応方法はどうするのかを定める |
お詫びの掲載の要否 | サイトなどへお詫びの広告を掲載するかどうか |
臨時サイトへの切り替えの要否 | お詫びのことばが掲載された臨時サイトへ切り替えるかどうか |
問題を発生させないために必要な2つの部署
問題が発生してしまったときに、中心となって動くのが「広報部」と「リスク管理部(リスク管理をしている部署)」の2部署です。
リスク管理部の初期対応
- いつどこで、どんな問題が起きたのか、経緯・被害・原因と責任の所在などの情報収集をおこなう。
- 危機管理マニュアルにしたがい、連絡すべき人へ調査内容の報告をする。
- 必要となる証拠を確保したり、事故などで死傷者が出た場合、急いで病院に駆けつけるなど、必要に応じて行政機関に情報を提供することもある。
- 問題の内容によっては、緊急対策本部の立ち上げを常設のリスク管理委員会に提案する。(広報部から提案することもある)
- 広報部とすべての情報を共有し、綿密な連絡をとりあうことが大切。(初期対応はとにかく広報部と二人三脚でおこなうことが重要である)
広報部の初期対応
- リスク管理部から情報の共有をしてもらう。
- 発生した問題をメディアがすでに知っているかどうか、あるいはすぐに知ることになるのか、しばらく知ることはなさそうかなど、調査し判断する必要がある。(公式発表をする場合、どの程度の準備時間がとれるのか知るためのひとつの基準となるため)
- 問題は発覚後、あまり時間をおかずに公表するのが望ましいが、何をするにも準備は大切である。問題の内容、発生時、規模、状況などから、発表までの時間や日数を導き出し、どれぐらい猶予があるのか上層部へ報告する。
- 状況確認のため、時間を要する旨を世間に伝えるためのホールディングコメントを用意する。
知っておくべき問題発生から事後対応までの流れ
危機管理マニュアルや危機管理広報マニュアルを作成したら、実際に問題が発生してから収束するまでどんな流れで進んでいくのか、イメージしながら実際にマニュアルどおりに実践してみることが大切です。
危機管理マニュアルもあわせて知っておこう
危機管理広報マニュアルまとめ
今回は危機管理広報マニュアルについて書きましたが、危機管理マニュアルと危機管理広報マニュアルどちらも法人に取り入れることで、問題発生時の法人全体の対応と問題発生時の法人外の対応どちらもおろそかにならず、結果法人を守ることにつながるのです。文章を読んだだけではイマイチ理解できない、イメージがわかないなど、どうしても他人事に感じてしまう方もいらっしゃるかもしれません。そんなときは危機管理についてのセミナーに参加して専門家や経験者の生の声を聴いてみるのもいいけもしれません。レピュ研でも危機管理についてのセミナーを開催しておりますので、都度ご紹介していきます。お気軽にお問い合わせくださいね。
※出典:危機管理&メディア対応 新・ハンドブック | 山口昭雄(著)