【2022年8月】企業炎上調査分析レポート

本レポートはレピュ研を運営する株式会社ジールコミュニケーションズが、独自の調査から「企業の炎上」として判別した事例の分析内容です。先月特に目立っていた炎上事例とその発生要因を解説し、月間を通してどのような傾向、トレンドが見られるのか解説しています。企業におけるWeb・SNS、及びレピュテーショナルリスクの管理、評価、対策等に活用していただくことを目的として毎月発表しております。

2022年8月の炎上件数の推移

ジールコミュニケーションズの独自調査・判定より、2022年8月の炎上件数は26件となりました。炎上タイプの内訳は下グラフの通りです。

政治的なインパクトでその他不祥事が霞んでしまった7月と比較して、炎上件数は再び増加傾向にあります。内訳の傾向を分析すると、エンタメ系の炎上件数が増加していることから、ユーザーのネット環境における娯楽需要があがっていることと、今後もエンタメ系の炎上が増え続けていくことが予想されます。

公式企業アカウントによる嫌味リプライに批判殺到

ある公式Twitterアカウントがリプライで投稿した嫌味のような内容に対して、批判が殺到し炎上してしまいました。

炎上した公式アカウントは個人事業主によって管理・運営されているTwitterアカウントです。公式アカウントとは無関係のユーザーが、育児中の友人について愚痴のようなツイートを投稿したところ、当該公式アカウントが、以下のような反応をしめしました。

これに対してSNS上では、

  • 公式アカウントが発言する内容ではない
  • なぜ、攻撃されたわけでもないのに厭味たらしいリプライをおこなうのか理解できない
  • 公式アカウントの役割を理解していない

というような反応が沸き起こり、炎上する事態となりました。

その後も、炎上アカウントは自身の意見に賛同する少数の投稿をリサーチしてはリツイートやいいねを繰り返し、ついにはネットニュースやまとめサイトに取り上げられてしまう結果となってしまいました。

「公式」アカウントである、ということ

今回の炎上において根本的な問題とされるのは、公式SNSアカウント本来の役割を全うできていないという点です。

そもそも公式SNSアカウントというものに明確な定義はありません。企業や法人それぞれが、本来自由に「公式」という役割を与えて、それぞれのルールをもって情報発信しているに過ぎません。そんな、一見バラバラにみえる公式アカウントのありかたですが、昨今の炎上傾向を分析するとある前提条件が浮かび上がります。

それは、「公式」と銘打ったアカウントから発信された情報は、当たり前のことですが企業の公式見解だとユーザーには受け取られるということです。特に、

  • 企業の方針でSNSの運用を判断している
  • 企業が選定した担当者に運営権を与えている
  • 企業が許可した情報のみを発信している

ということを前提としてSNS運用をしている、とSNS上のユーザーはとらえていることは、SNS運用をおこなうにあたって最早常識となりつつあります。そのため、昨今の炎上謝罪文としてよくみられるような「 炎上した投稿は、担当者の独断でおこなったことなので企業の公式見解ではない 」という切り替えしはかえって逆効果となることが多くあります。なぜならSNSユーザー達にとって、公式SNSの運用に関する責任を全面的に負っているのは企業である、という認識を持っているからです。

また、2022年7月の炎上事例レポートでもとりあげたように、自社の社員を大事にしている企業ほど好感度が高いという傾向が消費者の間でみられています。このことから、公式SNSでの不祥事・不手際の責任を負わず、逆に運用担当者を切り捨てるような対応は、ブランドイメージの低下を招きかねません。SNSを運用する際は、最終的な責任は企業が背負っている=公式での情報発信は企業の公式見解、という意識をもって臨む必要があります。

「なんとなく」がもたらす公式SNSの炎上

そもそも、公式SNSアカウントの大半が、認知度の拡大やファンコミュニティを形成を目的として運用されています。マーケティングの施策としてSNSを運用する場合、当たり前のことですが、この場合「ターゲット」の選定や、情報発信でどのような結果を得たいのかという「ゴール」を設定する必要が出てきます。この「ターゲット」と「ゴール」が重なり合った情報による集客は効果的と言われています。

この範囲は、SNSマーケティングにだけ関係ある話ではありません。SNSリスク対策にも関わる、重要なメカニズムとなります。

どのような企業や法人にも、それまで企業名・社風・体制・業績・業態・これまでの広報活動など、さまざまな要素で培われたブランドイメージが存在します。炎上発生のメカニズムとして、世間やSNSユーザー間でのブランドイメージと、企業・法人がSNS上で発信する情報の齟齬により炎上が発生しやすいことは、弊社のSNSリスクセミナーでも、都度お話してまいりました。

SNSを通じたユーザーコミュニケーション施策として公式SNS運用を計画。ゴールを集客としたケースにおいて、上記のメカニズムを組み合わせると、以下のように情報発信のコンテンツを位置づけることができます。

「興味関心」…ターゲットが興味や関心を持っている情報
「目標
・目的」… 起こしたい態度変容や期待されるターゲットの行動など
「ブランドイメージ」…企業や法人が本来持たれているイメージや期待値

「興味関心」×「目標・目的」×「ブランドイメージ」が重なり合う中心が、最も炎上リスクを回避しやすく、かつ集客効果が見込めるセーフティゾーンということになります。このセーフティゾーンの定義は、SNS運用の要件定義によって異なりますが、基本としてこの範囲を守りながら情報発信をおこなっていく必要があります。

逆に「なんとなく」情報を発信するという行為は要注意する必要があります。意味もなく発信した情報が、上記の範囲に収まった場合は問題ありません。しかし、範囲を外れてユーザーの持つブランドイメージと異なる情報だった場合は、炎上リスクが一気に高まりますし、一方でイメージの範囲内で目標・目的のみにフォーカスした情報は、認知もしてもらえない可能性があります。情報発信の際には、事前の要件定義をしっかりとおこない、リスク回避と効果を兼ね備えたコンテンツを作成する必要があると言えるでしょう。

病院の人事担当がパワハラを公開して炎上

とある病院の人事アカウントが、院内でのパワハラ行為を発信したことにより、炎上してしまいました。病院の採用や認知拡大施策を担っている人事担当が、以下のような発信内容で、従業員から受けた相談を一蹴し、逆に𠮟りつけたことを明らかにしました。

この投稿に対して、SNS上では

  • 人事担当が、わざわざこの病院はブラックだと伝えたら意味がない
  • SNS運用担当者が交代したばかりみたいだけれど、引継ぎがうまくいっていないのでは?
  • なんだか文面がおじさん臭いなぁ

という否定的な意見が殺到することとなり、炎上に発展してしまいました。その後、当該病院の広報担当は謝罪文を公表しましたが、複数のまとめサイトやニュースサイトに取り上げられ、採用活動に大きなダメージを負う結果となってしまいました。

相次ぐ人事アカウントの炎上

2022年に入り、人事や採用担当・アカウントの炎上が頻発しています。

今回の炎上も含めて、上記の人事・採用アカウントの炎上に共通するものとは一体何なのでしょうか?それは、トレンドを把握して情報発信に取り入れていない、という点です。

株式会社マイナビが発表した『 2023年卒大学生就職意識調査 』によると、2023年新卒の大学生が選ぶ行きたくない会社のトップに『ノルマのきつそうな会社』がランクインしています。また、『暗い雰囲気の会社』『休日・休暇がとれない(少ない)会社』も上位にランクインしており、就活生が企業に求めるものとして、リラックスして働くことが出来、かつ、プライベートな時間も確保できる環境であることが伺えます。

株式会社マイナビ 『 2023年卒大学生就職意識調査 』より引用
https://career-research.mynavi.jp/reserch/20220426_27155/

この前提を先述したSNS運用をおこなう際のメカニズムに当てはめたとき、『辞めたいと相談する従業員を邪険に扱いました』という情報発信が果たして効果的なSNS運用となり得るでしょうか?答えは「否」です。ターゲティングを間違えた勘違い投稿は、情報発信メカニズムのセーフティゾーンを離れ、炎上のリスクにしかなり得ません。

なお、引用したようなトレンドやアンケート情報は、自らトレンド収集をおこなおうと思えばいくらでも手に入れることが出来ます。自ら進んでトレンド収集をおこなおうとする姿勢と、収集した情報をSNS運用に活用することこそが、SNSリスクを回避する基本だと言えるでしょう。

8月の炎上【傾向と分析】

政治的インパクトで、その他のニュースや不祥事が霞んでしまった7月でしたが、8月に入り炎上発生の勢いが徐々に戻りつつある印象です。さらに9月の後半には、7月の政治的ニュースに関連したビッグイベントが控えています。事件当時ほどの衝撃はないものの政治的な緊張感が続くため、政治に関連するキーワードの情報発信には細心の注意をはらう必要があるでしょう。

今回のレポートでトピックとしてあげた事例は、ともに情報発信のセーフティゾーンを見誤ったが故の炎上でした。解説にあげた炎上メカニズムとセーフティゾーンは、基本として守ることは大切ですが、トレンドや炎上の情報収集をおこなって範囲のブラッシュアップをしていく必要があります。SNSのトレンドは常に移り変わっています。それに伴い、SNS上での常識やルールも固定のものではなく流動的に変わっていくものになります。一度決めたセーフティゾーンをブラッシュアップしないでいたら、SNSの常識が変わっていて炎上してしまった、なんてことも起こりかねません。

リスク対策で、まず何をしたらよいか分からないというご担当者様もいらっしゃるかと思いますが、まずはトレンドや炎上の情報収集をおこなうことから始めてみてください。リスク対策で一番重要なことは、その場しのぎのガイドラインを作ることでも、決められた社内研修でもありません。SNSの運用やリスク・コンプライアンスを司るご担当者様が率先して情報収集をおこない、トレンドの変化を施策に取り入れていこうとする意識が、最も重要なミッションとなります。SNSトレンドの変化についていけるスピード感を養うことこそ、今、本当におこなうべき「リスク対策」なのです。

事例の分析で、炎上リスクのノウハウを蓄積

ジールコミュニケーションズが開催している無料のオンラインセミナーでは、今回ご紹介した炎上事例の他にも、様々な事例をさらに深掘りする形で解説しております。セミナー中の炎上事例解説では、データに基づいた炎上トレンドや、具体的に注意すべき投稿内容についてお伝えしております。

ぜひ、弊社セミナーにご参加の上、今後のSNSリスク対策にお役立ていただければ幸いです。

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