本記事では2020年に起こった炎上の傾向を分析し、2021年企業はどんなリスクに備える必要があるのか解説します。
2020年は新型コロナウイルスの影響もあり、企業の炎上リスクにも変化が見られました。ニュースメディアやSNSなどで、大きなSNS炎上を目にする機会も多かったのではないでしょうか。今回はレピュ研で毎月分析してきた炎上事例をもとに、2021年の炎上リスクに備えるためにどんな備えが必要なのか、傾向と対策をまとめました。事例を知るだけでも防ぐことができるリスクは多くありますので、最新の炎上について一緒に学んでいきましょう!
2020年のSNS事情
2020年、企業の情報発信や発言がきっかけで起こった炎上は86件でした。これは「メディアやエンタメ関連の炎上」また「個人の言動がきっかけとなった炎上」「企業が間接的に関わった炎上」などを除く数字であるため、全体数としてはさらに多くの炎上が起こっています。
コロナ禍におけるSNS利用の変化
アライドアーキテクツ株式会社の調査によると、新型コロナウイルス感染拡大防止のための外出自粛に伴い、SNS利用に変化があったことが分かっています。
SNSの利用時間においては「増えた」「すごく増えた」と回答した人が3割を超えました。さらにその内、SNSの情報がきっかけで特定の企業の見方が変わった経験があるかという問いに対しては63%のユーザーが「経験がある」と回答しており、コロナ禍では特にSNSの情報が企業の見え方に大きく影響していることが分かます。
SNSにおける社会問題
2020年はSNSでの誹謗中傷が大きな社会問題になった年でもありました。このような状況を鑑みて、総務省では「#NoHeartNoSNS (ハートがなけりゃSNSじゃない!)」をスローガンに、SNS等における誹謗中傷対策に取り組んでいます。今後さらにSNSにおける規制が厳しくなっていく可能性も想定し、企業としてもガイドラインの強化が必要になってくるかもしれません。
2020年に起こった炎上の傾向
2020年に起こった炎上には例年と比較してどのような特徴、傾向があったのか分析しました。新型コロナウイルス流行によるインフォデミックや誹謗中傷問題が取りざたされる中、企業の直接的なSNSリスクとなり得るSNS炎上には、どのような傾向があったのでしょうか?
ジェンダー炎上の激化
ジェンダーにまつわる炎上は数年前から頻繁に発生していますが、2020年は特にこの炎上が目立った1年でした。女性蔑視などと批判される炎上は、主に社会的な役割や家庭内での役割など、「ステレオタイプな価値観の押しつけ」が多くの原因となりました。 しかし昨今では「新しい考え方」の発信や、「共感」を演出する狙いすぎたマーケティング活動によりターゲットであるはずの女性から逆に反感を買ってしまう、といった事例も増えてきています。
また、女性に対して性的な表現や見方をしていると批判されてしまう炎上も多く、テレビ番組などの各種メディアでも取り上げられました。結果的に普段SNSをあまり利用しない層にもジェンダー炎上が認知され、多くのシーンで議論の対象となっています。
公式SNS炎上の増加
企業公式SNSの炎上が増えた要因として考えられるのは、企業のSNSにおける動向、発言の影響力が大きくなったことが考えられます。冒頭で解説した調査結果からも分かるように、ユーザーや消費者の企業に対する評価・判断基準の中で、SNSという媒体の重要度が上がっているためです。
対して2019年に多く発生した従業員の言動がきっかけとなる炎上は、2020年減少傾向にありました。この2種類の炎上の違いとして、公式SNSの方が炎上に発展する上での沸点が低いことが挙げられます。従業員のSNSが炎上のきっかけとなるのは明らかに不適切な言動があった場合がほとんどです。しかし、公式SNSの場合は世間やユーザーが企業に抱くイメージや期待値と乖離を感じただけでも、炎上のきっかけとなってしまう恐れがあります。
企業としては公式サイトやその他メディアと比べて、よりフランクで手軽に情報を発信できるプラットフォームと考えている面もあると思います。しかしユーザーからしてみると、すべて「企業の考え方を体現したもの」と捉えるしかありません。その企業側とユーザー側との認識のギャップも炎上が多発してしまう要因の1つとなっているかもしれません。
企業対応に対する批判から炎上に発展
特に2020年上半期、新型コロナウイルスの流行が始まった時期には企業対応に対する批判から炎上に発展する事例が多く発生しました。社員のコロナ感染発覚時の対応や緊急事態宣言に伴う購入や予約のキャンセル対応など、各企業が同時期に対応が必要になった事象が発生したために、それぞれ比較され批判対象となってしまうことも多かったです。また、コロナに関するハラスメントや不当な労働環境を告発するような投稿の数も増えました。 企業名を伏せられていることも多く大規模な炎上に発展した数は少なかったですが、今後流行が続くと考えるとリスクとして把握しておくことが必要と言えます。
コロナ関連の他には、炎上や不祥事対応の失敗による二次炎上も目立ちました。記者会見で不適切な態度を取ってしまった、世間から反感を買うような見解を発表してしまったなどトラブル早期収束のカギとなる対応を誤ったことで更なる批判へと発展しています。対応内容のミスだけでなく、初動の遅れも収束が遅くなる大きな原因になるため有事の際の対応方法についてはマニュアル化しておくことが大切です。
巻き込み型炎上
ここでの巻き込み型炎上とは、企業以外の第三者や同業他社の情報発信や言動がきっかけとなり企業に飛び火する炎上を指しています。WHOが新型コロナウイルスの流行に伴うインフォデミックへの注意を促しているように、様々な情報が錯綜したことも要因の1つとなっています。
巻き込み型炎上は企業が知らないところで発生してしまうため、SNSアカウントの保有の有無に関係なく起こる、またデマ情報であっても拡散されることで企業リスクとなり得るという特徴があります。リスクのコントロールは非常に難しいですが、同業他社でトラブルが発生しているときは情報発信を控える、日ごろからSNS上の情報に対して広くアンテナを張っておくことなどが対策として有効です。
2020年炎上事例3選
2020年に起こった炎上事例を4つご紹介します。それぞれどんなことがリスク発生の要因となってしまったのか、自社だったらどのような対応を取るか、リスクの見直しきっかけにして頂ければと思います。
ジェンダー×公式SNS×同業巻き込み型の炎上
あるタイツの製造・販売を行う企業がTwitterで「#ラブタイツ」というキャンペーンを実施し、内容が不適切だとして炎上してしまいました。キャンペーンの概要は次のようなものです。
【キャンペーン概要】
・30人のイラストレーターに同社製品を着用させた女性をイメージしたイラストの制作を依頼
・イラストレーターがそれぞれTwitterに投稿
・同社公式Twitterアカウントでその投稿をRT
概要だけだと問題がないようにも見えますが、依頼した女性のイラストが性的な描写を連想させるとして批判され、炎上に発展しました。ここまでだと他のジェンダー炎上と類似の事例だと思われるかもしれませんが、この事例には続きがあり、同じくタイツや靴下を扱う同業他社に炎上が飛び火していきました。
【巻き込まれた同業企業A】
公式アカウントで問題となったキャンペーンの投稿にいいねをしたり、「素敵な企画ですね」などとコメントを投稿してしまったことで、「この企画を肯定しているのか」と批判された。
【巻き込まれた同業企業B】
炎上が発生している最中、公式アカウントの中の人が配偶者のことを「嫁」と呼んだことで女性蔑視だと批判された。
【巻き込まれた同業企業C】
炎上が発生している最中、昔企業Cの採用面接を受けた女性が「面接中母子家庭を批判するような態度を取られた」と投稿して批判意見が集まった。
各社それぞれ謝罪などの対応を行いましたが、その対応も比較されて様々な意見が飛び交い大きな話題となった事例です。
デマ情報による炎上 (対応遅延による収束遅れ)
新型コロナウイルスによるマスク不足の中、あるマスク製造会社が炎上してしまった事例があります。この企業ではもともと日の丸が印刷されたマスクを販売していましたが、あるメディア媒体にこのマスクの写真が掲載されたことがきっかけで「この会社は政府の要請で日の丸入りのマスクを製造している」というデマ情報が拡散しました。その結果、企業に対しての批判やさまざまな憶測が飛び交い、騒動収束後も3か月以上に渡って通常業務に影響が出てしまったと言われています。
マスク不足という問題が発生している最中での炎上ではありますが、この事例にはどんな状況でも注意が必要なポイントが2つあります。1つ目は情報の発見が遅れてしまったこともあり、初動対応が遅れてしまった点、2つ目は適切な手段で情報の否定を行わなかった点です。特に2つ目について、この事例では当初社長個人Twitterアカウントで簡単にデマ情報の否定を行いました。しかし公式としての発表はしなかったためきちんと情報が伝わらず、デマだという事実が広く知れ渡るまでには時間がかかってしまいました。このように企業対応に求められるのは早さと内容の的確さだけではなく、きちんとユーザーまで情報を届けるために正しい手段を選択することも大切です。
誠意の伝わらない謝罪による二次炎上
最後に、ある健康食品を販売するメーカーが謝罪対応を失敗したことで炎上してしまった事例を紹介します。このメーカーの商品を購入したユーザーがTwitterに「商品に虫が混入していた」と写真付きで投稿し炎上しました。このトラブルに対して企業が行った対応が不適切だったとして二次炎上に発展してしまいました。対応内容は次のようなものです。
・謝罪文を発表したが冒頭や前半に謝罪はなく、最後の1行でようやくお詫びの言葉が記されていた
・虫の混入は自社での製造中ではなく、輸送中の事故であるという見解
・人体への影響はないので安心するように、と論点のずれた文章であった
・この文書へのリンクを公式Twitterでも投稿したが、そのツイートのみリプライが送信できない仕様になっていた
・注文済みの同商品のキャンセルや返金を求める声が多かったが対応は行わなかった
上記のような対応に批判が集まり、さらに混入した真相が不明なままということもあって「二度と商品を購入しない」という声も多く見られました。
2021年企業に必要に備えとは?
炎上を防ぐためにはまず、SNS・炎上のトレンドや自社と似たような環境下で起こった炎上事例を多く知ることが大切です。その為にまず、SNSの監視体制など情報の把握ができる環境を整えましょう。その後は、監視して蓄積した情報をもとに自社で想定されるリスクを洗い出し、それらを下記のような項目に反映していくことで炎上リスク抑制の施策としていくことがおすすめです。
炎上リスク抑止に向けた取り組み例
各種ルールやガイドライン・ポリシーの作成
- SNS運用におけるガイドライン
- 従業員向けSNS利用ルール/炎上を含む危機発生時の対応マニュアル
- ソーシャルメディアポリシー など
各部署に向けたSNS教育の実施
- SNS運用担当者向けのリスク研修
- 上層部向けのSNSリテラシー研修
- 有事に向けた危機管理広報トレーニング
- 新入社員向けのSNS研修 など
レピュ研を運営する株式会社ジールコミュニケーションズではSNSやWebから派生するさまざまなリスクを抑制、対策するサービスを幅広くご提供しています。「2021年、炎上を起こさないために自社には何が必要なのか?」などの無料相談も受け付けていますので是非お気軽にご相談ください!