企業が、コンプライアンス研修の一環としてSNS教育をするべき4つの理由と、コンプライアンス違反が原因で起こった炎上事例5つをご紹介します。
コンプライアンス研修と一口に言っても、個人の不正やトラブルから組織ぐるみの不正や不祥事を防ぐものまで幅広いです。そのため研修内容に含む項目に悩む担当者も多のではないでしょうか。本記事では、個人の不正やトラブルを防ぐためのコンプライアンス研修、その中でも「SNS」という項目について解説します。従業員個人がSNS上で問題を起こし企業にまで悪影響を及ぼすことも増えているため、コンプライアンス研修の項目としてSNS教育はとても重要です。
「これからコンプライアンス研修を行う方」「既存の研修内容をアップデートしたい方」はぜひ一緒に、コンプライアンス研修におけるSNS教育の重要性について学んでいきましょう!
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企業におけるコンプライアンス
コンプライアンスとは一般的に“法令順守”を指しますが、“法令”というのは法律のことだけではありません。社内のルールや倫理・モラル的に社会通念上守るべきルールなどの幅広いルールを指します。公共の場での不適切な発言、SNSへの不適切投稿、歩きスマホや歩きたばこはすべてコンプライアンス違反といえるでしょう。そしてそのような行為をした従業員は「○○株式会社の人」のように社名とともにSNSで拡散されてしまうことも少なくありません。
コンプライアンス研修とは
コンプライアンス違反については仕事への責任感のなさ、過度な利益重視、社会人としての自覚の欠如などさまざまな要因が考えられます。そのような要因から発生するコンプライアンス違反のリスクを最小限にするために必要なのがコンプライアンス研修です。
「知らなかった」「ついやってしまった」などという理由によるコンプライアンス違反を防ぐためにも大切な研修になります。
コンプライアンスとSNS
インターネット社会の現代では、誰でも簡単に全世界に向けて情報発信ができるようになりました。その発信された情報がコンプライアンス違反であると指摘されることは多く、ユーザーはコンプライアンスという言葉に過敏になっているところもあるかもしれません。また発信した情報には、企業に所属する従業員としての責任も持たなければならないことを理解していない人が多いです。そのため従業員を雇った企業側は、リスクをコントロールするためにもSNS教育を含んだコンプライアンス研修を行うことが必要になります。
コンプライアンス研修でSNS教育が必要な4つの理由
コンプライアンス研修の中にSNS教育を含むことの重要性について4つの理由から解説します。
1:従業員のSNS炎上は企業にも影響があるため
従業員個人のSNSが炎上した場合でも、勤務先が特定されて社名も一緒に拡散されてしまうことが多いです。業務に関わる投稿を禁止することももちろんですが、SNS上で実名や勤務先を明かすことのリスクを伝える必要もあります。
また写真や動画が炎上した場合、特定班と呼ばれるネットユーザーは写っている人の服装や背景など細かなところから人物や場所、状況を特定します。業務に関わる内容の文章や社名を投稿していなくても、写真や動画から情報が判明してしまうことも多いです。業務時間外であっても、制服や名札、社員証などを身につけた状態で撮影することのリスクについてもコンプライアンス研修で伝えるべき内容になります。
2:使用者責任を問われてしまう可能性があるため
従業員の不法行為は民法715条で定められている使用者責任に問われる可能性があります。条件があるため全てが該当するわけではありませんが、該当した場合雇い主側の企業に直接的な過失がなくても損害賠償などの請求をされてしまう恐れがあるのです。
第715条(使用者等の責任)
1.ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
2.使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。
3.前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。
例えば従業員がSNSで社内の取り引きに関わる内容を投稿し、その投稿によって取引先に不利益が生じた場合などは使用者責任に問われる場合があります。そのような事態を防ぎ、従業員個人が担っている責任について知ってもらう為にもSNS利用に関する教育は重要なのです。
3:あらゆるコンプライアンス違反はSNSから発覚することが多いため
泥酔や騒音、歩きたばこ、歩きスマホなど公共の場での迷惑行為はSNSから拡散して発覚することも多いです。また社員同士の飲み会の様子をアップする人は多いですが、社員が大勢集まっているだけで目立つ上に、社外秘の情報をうっかり口にしてしまうこともあるかもしれません。もちろんそのような行為をすること自体がよくありませんが、SNSを通じてルール違反を全世界に発信してしまうことで会社の大幅なイメージダウンにもつながります。
4:SNSからの情報漏洩のリスクを防ぐため
SNSからの情報漏洩は故意的なものだけではありません。SNS上のメッセージで相手を間違えてしまったり、複数の相手に送ってしまったりする「誤爆」によるリスクや、ウイルス感染などシステム的な要因のリスクも想定されます。知らなかったゆえの悪意のないコンプライアンス違反をなくすためにもSNS教育は必要なのです。
コンプライアンス違反が原因のSNS炎上事例5つ
実際にあった、コンプライアンス違反が原因で発生した炎上事例についてご紹介します。このような事例をコンプライアンス研修時に一緒に落とし込むことも効果的なSNS教育方法の1つです。
1:銀行員の家族がSNSに顧客情報を投稿して炎上
2015年6月、銀行に来た芸能人の情報を銀行員の家族がSNSに投稿して炎上しました。投稿されたのは次のような内容です。
「○○さん △△銀行にご来店 来店の理由※カード損失」
「母が帰ってきたら○○くん情報たくさん頂こう。住所はざっくりと電話で教えてもらったし」
「この前母は○○さんの免許証顔写真のコピーをとってきた笑」
「お父さんの遺産手続きの為に母親が勤めている銀行に○○くんとマネージャー来たらしいよ」
事件発覚直後に銀行側は公式サイトとTwitterで謝罪をしました。しかし翌日には株価が急落し、時価総額460億円の損失が発生しています。
2:飲食店従業員の不適切な投稿が炎上
2019年2月ある寿司屋の従業員が店内キッチンで調理中に、一度ごみ箱に捨てた魚を再びまな板に戻して調理する動画をSNSに投稿して炎上しました。この事件により寿司屋を運営する会社の株価は急落し、時価総額27億円の損失が発生しています。この時期、前後に類似の事件が相次いでいたこともありテレビなどでも大きく報道されてしまいました。このような従業員の不適切投稿が多発し、問題視されるようになったこともSNS教育に注力する企業が増えるきっかけの1つとなりました。
3:社外秘の情報をSNSに投稿して炎上
2017年8月、ある自動車工場で働く従業員が工場の検査ラインで未発表の新型車を発見し写真とともにTwitterに投稿。すぐに拡散されて炎上し、工場の管理体制も含めて批判の声が集まりました。この投稿以外にも工場内の画像を複数投稿していたり、顔写真も公開していたことから犯人はすぐに特定されてしまっています。
この事例の場合、企業から一般消費者への直接的な過失はなく企業側も被害者と言えるかもしれません。しかし社外秘の新作情報が漏れてしまったことでの企業の損失、イメージダウンは避けることができませんでした。
4:会社の公式Twitterの担当者が不満を投稿して炎上
2019年1月、ある印刷会社の公式Twitterが担当者の独断による投稿で炎上した事例があります。ツイート内容は以下のようなものでした。
#お知らせです
社長より
「お前のやっていることは仕事でもないし、ブログすべて無駄。すぐ製品を収めて入金してもらうことが仕事として正しいので、今すぐやめろ」
と言われたので、ツイッターでの宣伝広報は今後いっさいしません。Facebookは担当が別なのでよく知りません。
バイバイ
このツイートに対して、まず「ブラック企業ではないか」「そんな考え方の会社で悲しい」と会社の方針が批判されました。しかしその後、この担当者が公式アカウントを私用化して、上司の愚痴や転職をほのめかすような発言をしていたことが発覚。「ありえない」「頭がおかしい」などと担当者が批判されることになりました。最終的に企業にも担当者個人にも非難が集まったことで、企業イメージが大幅に下がってしまった炎上事例です。
5:宅配業者の不適切な対応がTwitterに投稿されて炎上
2019年3月、宅配業者のずさんな荷物の取り扱いや、従業員とのやり取りをお客さんがTwitterに投稿したことで炎上しました。次のような内容が8回に分けて投稿されています。
・荷物を投げて渡されたこと
・その結果、段ボールが破損してしまったこと
・指摘すると「中身が破損していたら電話すれば?」と逆ギレされたこと
・荷物の到着が遅れたにもかかわらず、謝罪がなかったこと
このツイートが大きく炎上した理由として“共感”の多さが挙げられます。「自分も同じような対応をされたことがある」「理不尽な理由で怒鳴られたことがある」などというコメントが多く集まり、会社の体制自体に問題があるのではないかとイメージダウンにつながりました。
この事例は社員や従業員ではない第三者からの投稿で発生したものです。しかし、このようなパターンの炎上リスクがあることを事前に知らせておけば、行動の抑制力となりリスクを抑えることができたと考えられます。
リスク回避のためにできる4つのこと
コンプライアンス研修時に事例も一緒に落とし込む
コンプライアンス研修の一環としてSNS教育を効果的に行う為には、実際にあった事例を一緒に落とし込むことが大切になります。教育や研修は、行っていてもなかなか身近なことと捉えてもらえず、形式だけの意味がないものになってしまうことが多いです。特に企業の規模や業種に合わせて、自社でも起こり得る事例を共有することで当事者意識が生まれます。
内部通報制度を導入する
内部通報制度とは社員や職員のコンプライアンスに反する行動などを相談、通報する窓口を社内に設けることを指します。この制度には次のようなメリットがあります。
・問題に対して、まず社内で対応・解決方法を考えることができる
・SNSで告発しなくても、社内で匿名でも打ち明けることができる
・マスコミに報道される前に企業として会見、謝罪をすることができる
・社内で集まった相談内容、件数を知ることで社内環境の改善に役立てることができる
コンプライアンス違反が発生したとき、企業から発表するのと先に報道されてしまうのとではかなり印象が違います。自浄作用のある企業として社会的評価を得るためにも重要な対策です。
有事の際の対応方法を知っておく
万が一トラブルが発生したときの対応方法や正しい謝罪方法を知っておきことも重要になります。もし対応が遅かったり、方法を間違えたりすると事態が悪化することもあるからです。さまざまなコンプライアンス違反を想定し、対応方法を準備しておくことで有事の際の悪影響は最小限に抑えることができます。
SNS監視を行う
コンプライアンス違反をいち早く発見するためには、SNSを監視しておくことも効果的です。外部のツールやサービスを利用すれば自社名、サービス名でフィルターをかけ、関連する投稿をすべて洗い出すことができます。レピュ研ではSNSを監視したり、炎上を未然に防ぐサービスもご紹介しています。少しでも不安に思うこと、お悩みがありましたらぜひ一度ご相談ください!