本記事では「DMCAの悪用はなぜ起こってしまうのか」「実際にDMCAの悪用が疑われて炎上した事例」「DMCA攻撃から企業を守る方法」についてご紹介します。
DMCA(デジタルミレニアム著作権法)はネット上の著作権を保護するためにアメリカで制定された法律です。しかしその仕組みを逆手に取り悪用する事例が多発しています。実際に「身に覚えのない理由で自社コンテンツが削除されてしまった」という方もいるのではないでしょうか。また言いがかりをつけられて削除されないためにはどうすればよいのか、DMCA悪用のリスクとは何なのか知りたい方も多いと思います。
今回は「DMCAの悪用はなぜ起こってしまうのか」「企業をDMCA攻撃から守る方法」について実際の事例を用いて解説します。不当な理由で不利益を被るのを防ぐためにも、一緒に学んでいきましょう!
DMCAの悪用とは?
DMCA(デジタルミレニアム著作権法)に抵触するコンテンツは、誰でも比較的簡単に削除申請することが可能です。その仕組みを逆手に取り、自社に都合の悪いコンテンツに対してあらさがしや細工をし、虚偽の削除申請をする「悪用」が多発しています。
DMCAとは?
DMCAとはデジタルミレニアム著作権法(Digital Millennium Copyright Act)の略称で、デジタルコンテンツ上の著作権保護に関するアメリカの法律です。DMCAに抵触するコンテンツはGoogleに対する削除の申し立てが可能になります。申請が認められると、対象URLのインデックスが削除され、検索結果上から非表示になります。
DMCA悪用の手口と目的
DMCAを悪用する人の目的としては以下のようなものが多いと想定されます。
・都合の悪い情報の隠蔽
・競合他社による検索順位を下げるための攻撃
・嫌がらせ
このような目的でも「サイトの更新日を細工する」「一般的に流用されているコンテンツでも自分に著作権があると主張する」ことで削除申請が通ることもあるようです。
なぜDMCAを悪用した申請が認められてしまうのか
Googleには毎日大量の削除申請が届いているため、精密な判断が難しくなっているのではないかと言われています。申請数や削除の状況はGoogle透過性レポートで閲覧が可能ですが、2019年8月20日現在4,215,965,415件のコンテンツが削除申請されていました。
DMCAの悪用が疑われた事例
DMCAの悪用ではないかと疑われてしまうと、削除された側のサイト管理者がネット上に書き込み話題になることも多いです。特に大きな話題になった事例を3つご紹介します。
SNS運営会社がブログ記事を削除申請
ビジネスSNSの運営会社についての批判的な記事が削除されたことが問題となった事例があります。DMCAに抵触すると訴えたのは会社代表の女性の写真の無断使用についてです。同社は写真の著作権は会社が保有していると主張し、Googleに対して記事の削除を申請しました。この事例で問題視されたのが以下の2点です。
・著作権の保有を主張しているのは代表の「写真」だけであるにもかかわらず、記事自体の削除申請を行ったこと
・代表の写真を使用している記事は多数あるにもかかわらず、当該記事のみに対して削除申請を行ったこと
この問題はネット上で大きく話題になり、同社が運営するSNSは退会する人が相次ぎました。
Web事業を行う会社の問題行為隠蔽
Web関連会社が社員旅行でタイに行った際、全裸で大騒ぎし現地警察が出動、メディアにも大きく取り上げられるという事件がありました。この事件は日本でも大きな話題となり、複数の記事やブログ、まとめサイトなどに取り上げられてしまいます。これらのサイトに対して同社が削除申請を行ったことが大きな問題となりました。削除申請は承認され記事は削除されますが、騒ぎを起こしたこと以上にこの削除がDMCAの悪用だとして批判が集まった事例です。
人気ゲームの公式Twitterアカウント凍結
130万人以上のフォロワーがいるTwitterの人気アカウントが凍結される事例も発生しました。アカウントの運営者によると利用しているアイコン画像に対する著作権侵害の申請があったということです。第三者が偽名を使いDMCA侵害による削除申請がされていたことから虚偽の申請、悪用ではないかと疑われました。
このような事例が企業の公式Twitterアカウントで発生すれば、たとえ一時的な凍結であってもユーザーの不信感につながりかねません。DMCAの悪用はGoogleだけでなく、Twitterなどの各種サービス・サイトでも起こり得るということを認識しておきましょう。
DMCA攻撃から企業を守る方法(Google)
DMCAの悪用の中でも、もっとも多いGoogleに対する虚偽の削除申請から企業を守る方法を解説します。
Google Search Consoleに登録する
Googleのサーチコンソールに登録しておくと、自社サイトに対して削除申請が行われた際「DMCAに基づくGoogle検索からの削除のお知らせ」という通知が届きます。悪用が疑われる申請に素早く対処するためには、いち早く気づくことが大切です。自社が発信したコンテンツのすべてを常に見張っておくことは難しいため、まずはサーチコンソールに登録しておきましょう。
申請に対して異議申し立てを行う
「もしDMCAに基づいてコンテンツを削除した」という通知が届いた場合、メッセージ内に記載されている「DMCAに基づく異議申し立て通知」から再掲載の申請を行うことができます。入力フォームに沿って必要事項を入力すれば異議申し立てが可能です。入力項目は以下の通りとなっています。
・氏名
・申立人の役職
・会社名
・住所
・居住国
・連絡用メールアドレス
・電話番号
・対象コンテンツのURL
・コンテンツの復帰をリクエストする理由(選択式)
・リクエストが正当である理由(記述式)
・宣誓
・署名
「リクエストが正当である理由」については感情的な文章にせず、端的に事実のみを記載することが大切です。すべての申し立てが通るわけではありませんが、心当たりのない削除理由については有効な方法といえるでしょう。
法的措置を取ることが可能な場合もある
弁護士によると、DMCAの悪用によって実際に損害が発生してしまった場合、威力業務妨害や偽計業務妨害、また民事での損害賠償の請求が可能なこともあるようです。実際に虚偽の申請をされてしまったことにより企業に損害が発生した場合は法的措置に踏み切ることも1つの方法です。
DMCAの正しい知識をつけよう
悪用されて泣き寝入りという結果を防ぐためには、悪用した側に負けない正しい知識を持っておく必要があります。またDMCAに関するリスクは悪用だけではありません。自社が持つ著作権を侵害されてしまう、知識がなかったために他人の著作権を侵害してしまう可能性もあるのです。法的なアドバイスを受けたい、相談したいという場合はネットトラブルに強い弁護士への相談をおすすめします。正しい知識を持って、企業をDMCA攻撃から守りましょう!