今回は有名人が、ネットに誹謗中傷を書いた投稿者を特定し、損害賠償請求した事例を紹介します。
この事例は「ネットの誹謗中傷を抑止するきっかけを作った」として、テレビやネットニュースでも大きく報じられ、話題となりました。多額の損害賠償金額を請求されてしまった投稿者は、突然の出来事に驚き、困っているそうです。「誹謗中傷を書き込まれて困っている」法人の方におすすめの記事になっています。また「SNSや掲示板に誹謗中傷を書き込んだことがある」方にも、教訓となる内容になっています。事例と対策方法を知っていきましょう。
目次
止まないネット誹謗中傷に「投稿者特定」で対策
有名人Sさんは、ネットの匿名掲示板に自分の誹謗中傷を書き込まれ悩んでいました。ある時、
「有名人Sさんの嫁はブス」
など、有名人Sさんの家族への誹謗中傷が書き込まれていることに気づきました。その後も数年間、誹謗中傷はやむことがなかったために、投稿者特定に踏み切ったそうです。
投稿者に200万円損害賠償請求!
特定された投稿者は、一般人の20代女性でした。有名人Sさんは、投稿者特定にかかった料金と、名誉棄損などを含む約200万円の損害賠償を投稿者に請求しました。投稿者の女性は、
「書き込んだことは反省しています」
「こんな大金払えない。どうしたらいいのか途方に暮れています」
などと困惑している様子をメディアで発言していました。
ネットからは有名人Sさんを絶賛する声が上がる
ネット掲示板の投稿者は、弁護士に依頼し、多くの段階を踏んでやっと特定されるものです。また、今回特定にかかった費用は約77万円だったそうです。損害賠償がもらえたとしても、かかった時間や費用を比べると割に合わないものでした。それでも、ネットの誹謗中傷から家族を守った有名人Sさんに対し、ネットでは絶賛する声が上がりました。
「すごい行動力。匿名だって諦めなかったのがカッコいい!」
「いい事だと思う。匿名だと思って書いたもん勝ちみたいになるのは嫌」
「匿名の誹謗中傷を抑止するきっかけになってくれたと思う!」
「気軽に」誹謗中傷してしまう悪い文化とは?
誹謗中傷を書き込んでしまった理由は「ない」
書き込みをした一般人の20代女性は、取材してきた雑誌メディアに次のように答えています。
「暇つぶしにみていたネット掲示板に、軽い気持ちで書き込んだ」
「まさかこんなことになるなんて…」
この発言から、投稿者本人には、誹謗中傷を書き込んだ「これといった理由はない」ことがわかります。
「気軽に」誹謗中傷をするのが当たり前というモラル麻痺
匿名掲示板の投稿者を特定した今回の事例に、一部のネットユーザーからは、
「この程度で起訴するなんて大人気ない。無視すればいいのに」
「匿名の意味がなくなる。これじゃあ気軽にネットで発言できなくなる」
などの声が上がっていました。「誹謗中傷されてても無視すればいいじゃん」「ネットでなら誹謗中傷してもいいだろう」というようなモラルの麻痺がおこっているのです。匿名掲示板では、面と向かって言えないような批判的な意見も、気軽に発言できてしまう環境があり、社会問題の1つでもあります。
有名人がネット誹謗中傷を「泣き寝入り」する理由とは?
多くの有名人が「ネット誹謗中傷があっても泣き寝入りしてしまう」のには、明確な理由があります。それは、誹謗中傷の投稿者1人を特定しても、次々と新しい投稿者が出てくるためです。多くのメディアに出演する有名人になると、ネット掲示板やSNSなのでの誹謗中傷は絶えません。1人投稿者を特定しても、次々と投稿者が増え、いたちごっこになるため、有名人は誹謗中傷の書き込みを泣き寝入りするパターンが多いのです。
ネット匿名掲示板の投稿者を特定するには?
ネット匿名掲示板の投稿者を特定するには、投稿者のIPアドレスの取得から始まります。IPアドレスとは「書き込んだ人物にたどり着くための情報の切れ端」であり、IPアドレスから、投稿者本人の名前・住所・電話番号など、個人情報を取得することができます。
IPアドレスを取得する
投稿者のIPアドレスは掲示板の運営に開示請求することで取得できます。しかし、IPアドレスの開示請求を行うためには、裁判所からの仮処分請求が必要です。裁判所からもらった仮処分命令を、掲示板の運営側へ連絡します。一連の流れには、約1ヶ月程度かかります。
IPアドレスから個人情報を取得する
IPアドレスからわかった投稿者が、インターネット接続に使っているプロバイダに投稿者の個人情報開示請求すると、個人情報を取得できます。
プロバイダは各IPアドレスに紐づく投稿者の個人情報(名前・住所・電話番号等)を持っています。プロバイダの持つ投稿者の個人情報は、投稿者の任意交渉にて開示が行われます。任意交渉のため、投稿者が開示を認めなかったときは、個人情報が開示されません。その場合は裁判によって開示請求をしなくてはならないのです。
企業がネット被害対策で早期対策する2つの理由
理由1:IPアドレスには保存期間があるため
IPアドレスには保存期間があるため、投稿者特定は早めの対応が必要です。今回投稿者特定ができたのには、IPアドレスの保存期間内に対応できたからです。IPの保存期間をすぎると、掲示板が投稿者のIPアドレス情報を消してしまうため、投稿者特定が難しくなってしまいます。ネガティブな投稿を見つけたら、IPアドレスに保存期間があることを念頭に対策していくことが重要です。
理由2:便乗者を出さないため
誹謗中傷の便乗参加者を増やさないためには、早期の対策が必要です。有名人が誹謗中傷で泣き寝入する理由に、誹謗中傷の投稿者が多く、特定してもキリがない問題があります。企業の場合、2~3人で誹謗中傷していた掲示板を放置したことで、便乗者が増えてしまう問題もあります。IPアドレス保存期間同様に、誹謗中傷は多くの人に情報が広がる前に対策し、便乗者が出る前に行うことが重要です。
個人がネット書き込みで注意したい2つのこと
注意点1:自分の発言に責任をもつ
ネットでの自分の発言には責任を持つことが重要です。ネットの世界は完全な匿名性ではありません。今回の事例のように、気軽に発言した内容が思わぬ事件になることがあります。大事になってから、後悔するのでは遅いのです。1人1人が自分の発言に責任を持つことを心がけましょう。
注意点2:ネットリテラシー知識をもつ
基本的なネットリテラシーの知識を持つことが重要です。今回の事例で「ネット匿名掲示板の投稿者が特定できることを初めて知った!」という声が多くありました。基本的なネットリテラシーの知識がないからこそ「バレないから誹謗中傷しても大丈夫」という人が多い印象をうけました。ネットのツールを日々使う上で基本的なネットリテラシーの知識を持ちましょう。
無責任な匿名を無くすために
今回の事例をきっかけに、匿名掲示板は匿名ではないことが広まりました。また、気軽に発言した内容が、多額の賠償金を請求される事態になることも目の当たりになったことで無責任に誹謗中傷をする人が減ることを願います。
レピュ研は、誹謗中傷に困っている人たちの手助けするために、情報を発信しています。また「ネット誹謗中傷をみつけたがどうすればいいかわからない」「誹謗中傷を早期に発見したい」という問い合わせが多く寄せられています。詳しい対策内容やご相談など、お気軽にご連絡ください。
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