企業炎上分析レポート【2023.09】

本レポートはレピュ研を運営する株式会社ジールコミュニケーションズが、独自の調査からデジタルリスクに値すると判断した事例を分析したレポートとなっております。2023年、毎月にわたって特に目立っていた。または特徴的な炎上事例とその発生要因等を解説し、どのような傾向・トレンドがみられるのかを追っていきます。企業または学校におけるデジタルリスクの管理やトレンドの情報収集に活用していただくことを目的として毎月発表しております。

2023年9月までの炎上発生件数推移

ジールコミュニケーションズの独自調査・判定より、2023年9月の炎上件数は15件となりました。炎上タイプの内訳は下グラフの通りです。

先月までの増加傾向と打って変わって、落ち着いた1ヶ月となりました。特筆すべきは、メディアや政治を発端とした炎上件数が0件なのに対して、個人発端の炎上が7件と約半数を占めていることです。以前の炎上レポートでもたびたびお伝えしていますが、個人発端の炎上だからといって法人に悪影響がないとは限りません。人間は企業や学校・団体・地域など何かしらの組織に所属して生きています。そのため、個人が不適切発言・行動をおこした際には当然のように所属組織の監督責任や説明責任が求められることはもはや常識となりつつあります。法人のご担当者さまは、法人発端の炎上事例のみを追うのではなく、個人発端の炎上を所属企業がどのように対応したのかというポイントに注目することが大切です。

広告で使用されたイラストが無断転載だとして炎上

ある企業がSNSに出向した広告イラストが無断転載ではないかとして炎上しました。

炎上の発端となったのは、あるイラストレーターによるX(旧Twitter)での告発投稿でした。

待って〇〇会社さん…そのプロモーションで使ってるの私の絵ですよね?
わざわざ背景切り取って左右反転して色まで変えたんですか? 

元投稿より引用・一部改変

告発内容によると、大手通信会社のSNS広告イラストに当イラストレーターのイラストが無断で使用されており、なおかつイラスト自体も一部改変が加えられてしまったということでした。

当イラストレーターはSNSのフォロワーも多かったために、騒動はすぐさま炎上に発展する事態となりました。しかし、事の次第をすぐさま察知した広告主である企業がリポスト欄で当イラストレータに「見える形」で接触。謝罪と著作権料の支払いを申し出たため大きな炎上となる前に鎮火することとなりました。告発投稿から約1時間45分でのスピード対応をおこなった企業に対して、SNSユーザーがからは逆に賞賛のコメントが多くあがりました。

ロイヤリティフリーに潜む闇

本炎上における事の真相は、「広告の運用委託をされた広告代理店が、違反アップロードされたロイヤリティフリー素材を知らずにしようしてしまった」ところにありました。

ロイヤリティフリー・著作権フリーとは?表で確認してみよう

ロイヤリティフリー使用料を支払えば規約の範囲内で自由に利用できる素材。
著作権フリー著作物への使用料を支払わずとも、規約の範囲内であれば自由に利用できる素材。
ライツマネージド提供者によって使用権を管理された素材。規約によっては一定期間素材を独占することも出来る。
パブリックドメイン著作者が著作権を放棄した素材、または著作者没後70年が過ぎて著作権が消滅した素材のこと。
クリエイティブ・コモンズ・ライセンス著作者が利用条件を設定し条件下であれば、作品を自由に利用しても
良いとする意思表示のためのルール。

どうしてロイヤリティフリーなのに無断転載になってしまったの?

今回のSNS広告も、広告運用を委託された代理店は「ロイヤリティフリー」画像を、大手素材サイトで購入・ダウンロードして使用しました。しかし、使用したイラストは、「複製する権利」「アップロードする権利」といったいわゆる「著作権」をもっていない第三者が無許可で素材サイトに提供している規定違反素材だったのです。今回の炎上騒動を相関図にすると、以下のようになります。

素材サイトは素材を安全・健全に使用出来ると謳っているにも関わらず、このような問題が発生してしまいました。

違反素材を見抜くためには?

このような違反素材を見抜くためにはどのような対策方法が有効なのでしょうか?

素材提供者情報のリサーチ

使いたいと思った素材があったら、素材の提供者が投稿した他の素材を確認するといった対策が有効です。イラストの絵柄や画風・写真・動画ジャンルなどがあまりにもバラバラで統一感が無い場合は、無断転載が疑われます。

素材自体の事前リサーチ

使用する素材を予め画像検索にかけておくという対策方法も有効です。画像検索には高性能なAI学習機能が備わっており、既存の作品の場合、高確率で検索に引っかかります。しかし、今回のように一部改変されてしまうと検索から零れてしまう可能性は0ではありません。

ライツマネージド素材を使用する

ライツマネージドは素材の使用権を規約範囲内で独占することが出来ます。素材の使用回数も制限されているため、既存の著作物を無断使用してしまったり、別のメディアとの重複利用をしてしまう可能性がロイヤリティフリーより低いという特徴があります。

モニタリングの重要性

今回の炎上が早期に鎮火した要因として最も大きなポイントは「企業のスピード対応」です。イラストレーターの告発投稿から2時間も経たずに謝罪対応・広告停止をおこなった様子から、当企業は「モニタリング(SNS監視)」を外部の専門企業に委託する形でおこなっていたと推測されます。

モニタリングをおこなうことによって、自社に関するネガティブなコメントや炎上の火種を早期にピックアップすることが出来ます。また、今回のように自社に非がある場合は早期の対応を取って、後手に回ることを防ぎます。

モニタリングサービスの導入が特にお勧めされるのは、「SNS運用を別業務と兼任している」「少数先鋭でSNS運用をおこなっている」というご担当者の方です。本来ならば、公式SNSアカウントを運用しつつ、自身でモニタリングやエゴサーチをおこなうのがベストですが、別業務と兼任している場合だとリソースが割けない等の問題が発生してきます。また、判断に困るようなコメントがあった場合、それによる悪影響などを推し量ることも困難です。

インシデントが発生した際の信頼できるパートナーとして専門企業によるモニタリングを導入した場合、インシデントの早期発見や対応方法の相談など、トラブルが起こるのではという不安な心理を軽減させることが出来ますし、なにより時世やトラブルにマッチした観点からのモニタリング結果を共有することができます。

シングルマザー限定の婚活パーティーに批判殺到

関東圏内で開催されたシングルマザー限定の婚活パーティーに対して、SNS上では批判が殺到しています。

当婚活パーティーは、シングルマザーを真に理解してくれる男性とのマッチングを目指して開催された催しものであり、30〜40代の年収500万円以上の独身男性20名と、再婚希望者でシングルマザーの女性20名を募集していました。

ところがこの企画に対して「シングルマザーの子供に対して性的ないたずらをすることが目的の男性が紛れ込んでしまうのではないか?」という懸念や批判の声がSNS上で相次ぐ事態となりました。

「シングルマザーは大丈夫なのに、どうしてシングルファザーはダメなの?変な人が集まりそう…。」

「最初からシングルマザーをロックオンしてる人って別の思惑がありそうで怖いなぁ。」

実際にSNSに寄せられた意見を抜粋

SNSは社会と心を映し出す鏡

昨今のSNSでは、性犯罪に対する懸念意見が増えたのではないか?という印象を受ける方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

しかしこの事態は、心配しすぎ、考えすぎという話ではありません。こども家庭庁が発表している「令和4年度児童虐待相談対応件数」によると、近年における児童への性犯罪数は年々増加を続けているという大変危機的な状況であることが分かります。つまり、SNSにおいて児童への性犯罪を懸念する声が増えたという事象は、ただおせっかいな人が増えたり、主張の強い人が増えたというわけではなく、社会がそのような事態に陥っているということなのです。

こども家庭庁「令和4年度児童虐待相談対応件数(令和4年)」より引用

SNSは社会や人々の心を映し出す鏡のようなものです。「SNSは若者が使うツールだから意見が偏っている」「匿名性だから大口をたたきやすい」というのももちろん真実です。しかしそれすら、社会の仕組みやセオリーをSNSが映し出しているだけにすぎません。

SNSという存在を社会を映し出す鏡=社会の縮図としてみてみると、いつもみているタイムラインも違って見えてくるのではないのでしょうか?くだらない呟きひとつとってみても、さまざまな理由や背景が交錯しています。これは、普段モニタリングをしているSNSリスクのご担当者にとっても同じことです。一見、自社名を出されただけの何の変哲もない投稿であっても、裏には葛藤や社会的な問題が複雑に絡み合っていて、思いがけないところで炎上に発展するケースもなきにしもあらずです。

大切なことは「理由がない事象なんて存在しない」と知ることです。「モニタリングでネガティブコメントが検知されました、けれどあまり影響力がなさそうなので大丈夫」ではなくて、「どうしてこのような意見をしたのだろうか?」「その人をそこまで突き動かすパワーの源は社会的問題にあるのだろうか?」など、事情を推し量ることが重要です。

例えば、大きな企画などをSNSでプロモーションしたときにSNSユーザーから反発を受けてしまったという場合、その企画には今の社会にとって受け入れがたい何らかの因子があると推測されます。今一度、企画を見直し、時世に沿った企画・プロモーションを行うことをおすすめします。

事例の分析で、炎上リスクのノウハウを蓄積

ジールコミュニケーションズが開催している無料のウェビナーでは、今回ご紹介した炎上事例の他にも、様々な事例をさらに深掘りする形で解説しております。ウェビナー中の炎上事例解説では、データに基づいた炎上トレンドや、具体的に注意すべき投稿内容についてお伝えしております。

ぜひ、弊社ウェビナーにご参加の上、今後のSNSリスク対策にお役立ていただければ幸いです。

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