本記事では、SNSガイドラインについて必ず知っておくべき基礎知識をご紹介します。
SNS時代と呼ばれる昨今、企業がSNSガイドラインを作成することは当たり前となりつつあります。リスク対策としてSNSガイドラインを作成しようと思っても
「何から手をつけたら良いか分からない。」
「そもそも、どういったものなの?」
と不安を抱えていらっしゃる方も多いのではないでしょうか?
SNSガイドラインの基礎知識をつけることで、SNSガイドライン作成の第一歩を踏み出しましょう。
「ソーシャルメディアポリシー/ガイドライン|作成のためのハンドブック」をダウンロードする
SNSガイドラインとは?
SNSガイドラインとは、SNSの運営・利用上において、企業の持つブランドイメージ・利益・信頼性を保つための行動基準を社内に向けて示したものを指します。
ガイドラインの定義は企業によって異なる場合が多く、行動基準のみを定めたものから具体性の伴うルールや注意事項まで定めたものまで様々に存在します。
本記事では、具体性の伴うルールや注意事項まで範囲に含めるガイドラインを前提に説明します。
まずはSNSガイドラインが具体的にどのような意味を持つものなのか、「対象者」「役割」という2つの視点から解説します。
SNSガイドライン作成時のポイント
SNSガイドラインは『企業公式SNS』と 『従業員が個人的に利用するSNS』という2つの対象を想定して作成するのが一般的です。
『企業公式SNS』を運営する上で大事なのは次のようなポイントです。
・投稿内容の質を保って運用をつづけること
・企業イメージ、ブランドイメージに沿った運用を行うこと
・運用の目的を明確にし、担当・関連部署全員が共通認識として持っておくこと
・トラブルの発生も想定し、対応方法も事前に明確にしておくこと
このポイントを押さえられなかったが故にSNS炎上を招いてしまうケースが多いため、これらを押さえた企業SNS運用のガイドライン作成は、リスク対策として有効となります。
一方『従業員が個人的に利用するSNS』については下記のようなポイントを押さえておきましょう。
・一般従業員の年齢層・SNSのトレンド等を加味した具体的なルールを定めること
・SNS利用上のリスクを具体的にイメージしやすい内容であること
・リスクに対する当事者意識の自覚を促す内容であること
以上のポイントを抑えた上でのSNSガイドライン作成をおすすめします。
一般従業員一人ひとりに対して、プライベートにでのSNS利用自体を制限することは厳しいですが、従業員による不用意な情報漏洩や炎上を防ぐためにも、その他社内規定も併せてSNS利用のルールを周知していく必要があります。
SNSガイドラインが持つ2つの役割
SNSガイドラインには、大きく分けて2つの役割があります。
平時におけるSNSガイドラインの役割
1つは『平時』におけるリスク抑制の役割です。
企業であれば公式SNSを利用した情報発信時、個人であれば日常的なSNSの利用などに際して、注意点・禁止事項を明確にガイドライン化しておくことで、SNSの炎上だけでなく、情報漏洩・法令違反などのさまざまなといったトラブルを未然に防ぐ効果を発揮します。
汎用的な内容ではなく、保有しているアカウントの特性や数、また従業員の雇用形態や年齢層等を加味して、自社で想定されるリスクやトラブルを漏れなく抑制できるものを策定することが大切です。
有事におけるSNSガイドラインの役割
2つめは『有事』に適切な対応を行うための準備としての役割です。
いくらリスク抑制のためにSNSガイドラインを策定していたとしても、リスク発生を完全に防ぐことは出来ません。そのためリスク抑制のための項目と併せて万が一SNS炎上が起きてしまった場合の対処方法をガイドラインに含むことが重要となります。具体的には報告フローや問い合わせの担当窓口、見解や謝罪の発表方法など、細かく決めておくことがおすすめです。
この準備をしておくことで万が一炎上などのトラブルが発生してしまった際、すばやく適切な対応が可能となりSNS炎上の悪影響を最小限にとどめ、炎上の長期化や二次炎上を防ぐことができます。二次炎上に関しては、こちらの記事で詳しくまとめていますので合わせてご覧ください。
SNSガイドライン作成時に確認しておきたい『3つのステップ』
SNSガイドラインを作成する際には、作成前・作成時・作成後で重要となる3つのステップがあります。
ガイドラインをとりあえず形にしただけで終わってしまった、というケースもよく耳にしますがこの3つのステップをきちんと押さえることで本来の目的や役割を発揮させる効果が期待できます。
【ステップ1】準備
はじめに、SNSガイドラインを作成する準備をしましょう。
準備では以下の3つを行う必要があります。
① 自社の保有するSNS公式アカウントの実態や従業員のSNS利用状況の把握
② SNSガイドラインの作成目的を明確化
③ 自社で起こり得る潜在的リスクの洗い出し
作成前の大前提として、方向性やリスクを明確化してSNSガイドラインの内容に具体性を持たせることが大切です。そのための準備として上記3つの項目は必要不可欠となるため、この準備を省略して作成に取り掛かるのはやめた方が良いでしょう。
このステップでは包括的な現状把握が重要となりますので、SNSガイドライン作成チームだけでなく、社内全体の協力を仰ぎ、各部署が連携して作成を進めていくことが重要となります。
【ステップ2】作成
ステップ1で状況把握と目的が決まったら、さっそくSNSガイドラインを作成していきましょう。
事前に把握した情報をもとに具体的な内容を作成していきます。
SNSガイドラインの基礎項目として以下のような内容が必要となります。
【ステップ3】共有と研修
SNSガイドラインは作成したらそれで終了というものではありません。社内全体に向けてSNSガイドラインの共有を行うことで、初めてその効果を発揮します。
おすすめはガイドラインの社内共有時に研修を行うことです。
企業SNSの運営者だけではなく、一般従業員を含めた社内全体に対して共有していく必要があります。一般的なSNSのリスクと自社のSNSガイドラインの内容を研修を通して伝え、SNSリスクの共有と遵守を促します。
研修内容に自社の業種・業態・労働環境と近い事例を盛り込むことにより、自身に置き換えたリスクをイメージしやすくなり、危機意識の向上が期待できます。
また、研修後に理解度テストを実施することで、ガイドラインの理解度をより深めることにも繋がります。 SNSガイドラインの研修に関しては、こちらの記事で詳しくまとめていますので合わせてご覧ください。
ガイドラインの重要性【事例紹介】
ここまで、SNSガイドラインの概要と作成方法についてご紹介しました。
実際にSNSガイドライン作成しないとどのような事態になってしまうのでしょうか?公式SNS運用と従業員の個人的なSNS利用それぞれについて事例を交えて解説します。
もしもSNSガイドラインがあれば【企業の場合】
自社のオウンドメディアでニュース記事を投稿・運営しているA社では、記事の更新情報を発信するため、公式Twitterを運営しています。
公式Twitterで打ち出した以下のキャンペーンクイズの内容が『不謹慎』だと炎上してしまいました。
クイズに答えると抽選で1名様にギフト券をプレゼント!
本日のクイズは『 ○○(国名)』について!
当時、この国は大規模クーデターの真っただ中でした。
多くの死傷者が出ているクーデターに便乗して情報発信しようとするA社の姿勢に対して批判の声が集まり、公式Twitterは炎上してしまいました。この事例は、いわゆる『不謹慎狩り』と呼ばれる炎上です。もしA社に適切なSNSガイドラインがあったら、以下のような対応をすることが出来ました。
・SNSを投稿する前に、ニュースやトレンド情報、またその情報に対する世論を確認することで、炎上を想定し、投稿を見合わせる判断ができた。
・過去事例をもとにしたガイドラインがあれば『不謹慎狩り』のリスクを防ぐことができた。
不謹慎狩りについては、こちらの記事で詳しくまとめていますので合わせてご覧ください。
もしもSNSガイドラインがあれば【個人の場合】
IT機器メーカーのB社にエンジニアとして勤めるBさんは、個人的にTwitterを利用しています。ある日Bさんは、自宅にて次のような写真を投稿したところ、社外秘情報が漏洩してしまい、拡散されてしまいました。
・未発表の商品が写真に写りこんでしまった。
・パソコンの画面が写真に写りこんでしまったため、社名や商品内容が特定されてしまった。
これにより、未発表商品の情報が流出。B社はマーケティングに失敗しただけでなく、杜撰な情報管理をする会社としてブランドイメージを損ねる結果となりました。このような、従業員による不用意な情報漏洩は特に多い事例です。もしB社に適切なSNSガイドラインがあれば、以下のような対応で情報漏洩を防ぐことが出来たでしょう。
・SNSに投稿する前、文章や写真の中に社外秘の情報が含まれていないか改めてチェックし、情報漏洩を防ぐことが出来た
・SNSガイドラインの内容に情報漏洩によって引き起こされるリスクや損害を具体的にイメージ出来たため、当事者意識をもってSNSを利用出来た
SNSガイドライン作成時の注意点
SNSガイドラインは一度作成すれば大丈夫というわけではありません。SNSを取り巻く環境は、トレンドやその他外的要因によって大きく変化する流動的なものです。そのため最新の状況、リスクに適応できているか定期的に確認し、必要であればガイドラインのアップデートを行う必要があります。
世間的な動向の変化の他に、企業として新しくSNSアカウントの運用を開始したタイミングや、新入社員が多く入社したタイミング等も同じく想定されるリスクが変化するため注意が必要です。担当者は、SNSやWebにおける最新の動向を調査・分析できる環境を整え、さらに会社として抱えるSNSリスクに変化がないか確認できるようにアンテナを張っておくようにしましょう。
また、SNSガイドラインは企業の業界・社風・理念など様々な要素によって、SNS炎上要素は大きく異なります。したがって、業界の傾向や職種・想定される炎上事例に合わせた、各企業ごとの項目策定が必要になります。以上の要素に注意しながら、SNSガイドラインの作成を進めていきましょう。
SNS上のトラブルを防ぐために
SNSガイドラインの基本と、作成~社内への落とし込みまでのイメージはできましたでしょうか?ここまでで解説させていただいたように、SNSガイドラインの作成は多くの人を巻き込み、作成自体長期化するケースも多いです。せっかく作ったガイドラインが無駄なものにならないよう、是非今回の記事をご参考に作成を進めていただければと思います。