危機管理は「危機」を感じる前に!~3つの事例と4つの実施ポイントから学ぶ~

危機管理は「危機」を感じる前に!
  • 「危機管理」とは何なのか?
  • 「危機管理」の目的とは?
  • 「危機管理」の具体的方法とは?

法人にとってのリスクはひとつとは限りません。自然災害によるものや、事故、人的ミスなどさまざまなところにリスクは潜んでいます。いたるところに潜むリスクから、法人にとっての一生を脅かすほどの損害を生む可能性もあります。万が一、問題が起きてしまった場合、素早く対応できるのか、低下してしまったブランドイメージを回復させることができるのか、法人の存続に対する「危機管理」についてきちんと理解していきましょう。

危機管理とは

危機管理(クライシスマネジメント)とは、問題が発生した場合に影響を最小限におさえ、最悪の状態から抜け出し、回復をはかることをいいます。“問題が発生した場合に”とありますが、ここで注意しておきたいのは、問題が起きた場合の事後対応が目的であるとはいえ、問題が起きる前に“起きたあと”の対応も検討しておかなければならないということです。

危機管理とは

法人の未来は、問題が発生してしまったことよりも、問題が発生した後の対応によって変わってくるということも理解しておきましょう。

危機管理の目的と3つの事例

危機管理の目的と3つの事例

危機管理をする主な目的は3つあります。

  1. 起きてしまった問題を解決する前に、別の問題が起きないように管理する
  2. 起きてしまった問題に対して一秒でも早く穏便に鎮火させるために管理する
  3. 問題が起きてしまい、失った信用をなるべく早く取り戻すために管理する

危機管理の目的とは、問題を肥大させることなく素早く鎮火させ、法人へのダメージを最小限にし、なるべく早い信頼回復に努めることなのです。


危機管理すべき3つの事例

1. 風評被害 情報元の進歩や法人に対する世間の目が厳しくなったことから、嘘の情報が流されることによって法人が多大の損失を被る事例が増加している

  1. 1999年テレビのニュース番組により農産物が有機物質に汚染されている可能性を報道
  2. 報道からイメージ悪化を招き、汚染事実のない農産物を含む売上の大幅減少を引き起こした
  3. 産出者はテレビ局側に損害賠償を求めたが、報道内容がほぼ事実だったため棄却された
2. 個人情報漏えい コンピューター処理により、顧客情報を効率的に大量収集・蓄積することができるようになった反面、個人情報が第三者へ漏えいしてしまう事例も多発している

  1. 1998年に発生した自治体の住民情報流出問題
  2. 住民1名あたり1万5千円の慰謝料支払いを求める判決が2001年に出された
  3. 1万人の個人情報を流出させた法人に対する慰謝料は単純計算で2億円近くなる
3. ブランドイメージと広報対応の重要性 ブランドイメージの失墜が法人に及ぼす影響は大きくなっており、ブランドイメージへの価値が重要視されはじめている

  1. 不祥事が発覚した法人は、危機管理においての体制が整っておらず、対応の不備によりブランドイメージを失墜する結果となった
  2. 会見での法人は、法人内での伝達や管理が行き届いていないこと、危機感が欠如していたこと、マスコミに対して情報開示する姿勢がないことなどが見て取れた
  3. 世間から不信感をあおる結果となり、この一件から多くの経営者が広報対応の重要性を痛感したという

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危機管理の手法と4つのポイント

危機管理の手法と4つのポイント

危機管理とは具体的に何をすればよいのか、実際に知識をつけ、行動することが大切です。

危機管理のプロセスの順序

1 準備 研修や訓練を実施し、資料や体制を整えることでリスクに備える活動
2 対応 問題が発生したときに、素早く的確な対応を取ると同時に問題の拡大を防止し、損失を最小限に抑える活動
3 復旧 対応後、通常の業務に素早く復帰するための対策
4 減災 発生したリスクを教訓に、法人内のルール決めや役割分担の策定など、同じ間違いが二度と起きないようしっかりと対策をとる

危機管理のプロセスは、問題が起きる前の対策である「準備」「対応」、問題が起きてしまった後の対策である「復旧」「減災」に分かれています。

危機管理の具体化と4つの実施ポイント

危機管理を具体化させるために一番必要なことは、危機管理において法人内の体制を構築しておくことです。プロセスの順番でいうと、1番目の「準備」の部分になります。法人内の体制を構築し実施するうえでのポイントは以下の4点となります。

  1. リーダーとしての重要性
  2. 担当者・担当部門と各自の責任
  3. マニュアル時とイレギュラー時の訓練
  4. 危機管理における外部情報のチェック・活用
  1. リーダーとしての重要性
    ”危機”という目に見えないものに対する費用対効果やかかるコストやリソースなど、対策を考える上で経営者やリーダーが懸念してしまう点がいくつかでてきます。2000年6月に起きた「乳製品集団食中毒事件」によりメーカーの株式時価総額は半年で約800億円も減少してしまい、そのあとも社長の引責辞任や長期にわたる業績低迷など多大の損失をこうむることとなりました。もしも法人が“危機”に関して何らかの対策をおこなっていたとしたら、多大な損失を回避できたのかもしれません。危機管理に対して先行して投資したものについては危機を回避することで回収できますが、先行投資してまで危機管理に関する対策をとるのかどうか、法人の“危機”経営者やリーダーにかかっているのです。
  2. 担当者・担当部門と各自の責任
    危機管理に取り組むことになった場合、部門ごとに何をするのか、だれがどの段階で対応するのか、役割分担と責任の所在を明らかにしておくことが重要です。可能であればコンプライアンスに関わる専門的な部署を設置し、すべての対応を一貫しておこないましょう。もちろん専門部署があったとしても、各部門の役割分担や責任の所在は明らかにしておく必要があります。法人内の問題に対し、一切無関心となってしまうと、危機管理においての体制を構築しづらくなってしまうからです。
  3. マニュアルどおりの訓練と臨機応変な訓練
    問題に対するマニュアルを従業員へ配布しておくとともに、マニュアルに沿って訓練をしておくこと、さらにマニュアルに載っていない想定外のことが起きても対応できるよう臨機応変な訓練しておくことが大切です。例えば、災害や問題発生の概要部分のみ準備しておき、従業員には訓練当日までなにが起こるか分からないようにし、訓練をとおしてマニュアルをしっかり理解しておかないと緊急時の対応が難しいことを認識させることが重要です。また実際には、マニュアルには載っていない想定外のことが多発する旨も伝えておく必要があります。危機管理には、ただマニュアルを作成し、従業員に配ればいいというものではなく、訓練など教育・検証が必要不可欠なのです。
  4. 危機管理における外部情報のチェック・活用
    危機管理を具体化させるためには、報道されている国内外の他社の事故や問題を収集し、自社で同じことが起きたらと仮定し検証することが重要です。法人にとって危機管理という対策がどれほど重要なのかを理解することができますし、対策を導入している法人にとっても、現在の対策で対応しきれるのかを検証し、対応力のレベルをあげることが可能です。また長期にわたり、法人内のみで対策をおこなっていると、対応や評価の甘さ、“危機”のレベル、実行力の維持など客観的評価に欠ける部分がどうしてもでてきます。そんなときは、外部機関や、コンサルティング会社などを活用していくことも危機管理の徹底という意味では非常に有効的と思われます。

危機管理のまとめ

法人の周りには、たくさんの”危機”がさまざまな形となって転がっています。法人の存続が危うくなったときに「危機管理に取り組まなければ!」と思っても遅すぎるのです。どんな”危機”にも対応できる体制をつくり、維持していくためには、コストもリソースもさかなければなりません。いつか起こるかもしれない”危機”に対して、どれだけのコストやリソースをさけるかが、危機管理の成功と失敗を分けているといっても過言ではありません。”危機”が起きてしまったときの損失と、”危機”が起きても損失を回避するためのコストを算出して、先行投資についてぜひ一度考えてみてはいかがでしょうか。

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