不謹慎狩りが起きてしまう原因と、企業がするべき6つの対策について4つの事例をもとに解説します。
災害発生時や世間でネガティブな出来事が話題になっているとき、SNSユーザーは不謹慎な投稿に対して過剰に反応します。偶発的な要因であるため、既存のマニュアル通りにSNS運用やPR活動を行っていても非難され、炎上してしまうかもしれません。そのため「どんな投稿が不謹慎狩りの対象になってしまうのか」「会社としてどのような対策をしておくべきなのか」と不安に感じているSNS、PR担当者も多いと思います。
レピュ研ではそのような不謹慎狩りが発端となり炎上した事例を分析して、その発生原因と対策方法についてまとめました。企業を良くするために発信した情報がきっかけで、評判が悪くなってしまったら本末転倒ですよね。そんな残念な結果にならないように不謹慎狩りについて正しい知識を身につけ、対策を実践しましょう。
目次
不謹慎狩りとは
不謹慎狩りとはネット上の不謹慎と捉えられる情報に対して、過剰に反論したり、誹謗中傷したりすることを指すネットスラングです。
その多くは災害や事件、事故また戦争などに関わる話題が挙がっている際の、ポジティブな印象の情報発信が原因になっています。
不謹慎狩りは2016年に発生した熊本地震の前後から特に目立つようになっており、日本では2011年の東日本大震災以降、悲惨な災害などが起こったら「自粛」しなくてはならない、というムードが流れていることも不謹慎狩りが蔓延している要因の1つです。
不謹慎狩りの4つの事例まとめ
実際にあった不謹慎狩りの4つの事例を紹介します。一口に「不謹慎狩り」と言ってもその原因や内容はさまざまです。
芸能人や政治家など著名な人物のブログやSNSがターゲットとなった事例が多いですが、その中で企業にも起こりうるタイプのものをまとめました。
Twitterの何気ない投稿が不謹慎狩り
人気テーマパークの日本公式Twitterが8月9日の長崎「原爆の日」に“なんでもない日おめでとう”と投稿して批判されました。
この投稿はあるアニメ劇中歌の中で登場する、誕生日ではない残りの364日を祝う「The Undirthday Song(お誕生日じゃない日のうた)」に因んだもので、投稿者は原爆の日を意図していなかったと考えられます。
少しの配慮が足りなかったために不謹慎狩りのターゲットとなってしまいました。
なんでもない日おめでとう
その後、同アカウントは謝罪コメントを掲載しています。
ハッシュタグが原因で不謹慎狩り
電力会社の公式TwitterとInstagramで投稿された内容が不謹慎狩りのターゲットとなりました。
事故のあった原子力発電所の画像を「#工場萌え」というハッシュタグをつけて投稿したもので「被害にあった人たちに対して無神経すぎる」と非難が殺到し、担当者のユーモアが裏目に出た結果になっています。
このアカウントではこの投稿以外でも「#電柱萌え」「#鉄塔好きな人とつながりたい」など、ハッシュタグを巧みに使った投稿が目立ち人気を集めていました。ほんの少しの配慮があれば投稿前に気づくことができたはずですが、運用の管理体制の甘さが命取りとなった事例です。
#工場萌え #工場好きな人とつながりたい
同電力会社は謝罪文を掲載したものの、問題の投稿はハッシュタグを外してそのまま再投稿されています。
PRのタイミングが悪く不謹慎狩り
有名モデルが西日本で豪雨被害が発生している最中に、「梅雨も明けた?ので夏の必需品〜!」と自身がイメージキャラクターを務める日焼け止めのPRをインスタグラムに投稿して非難が殺到しました。
梅雨も明けた?ので夏の必需品〜!
#UVスプレー #UVカット #日焼け止め
「明けてませんよ?ニュース見てますか?」
「ちゃんと事態を知ってほしい。残念」
「バカすぎてびっくり」
とInstagramのコメント欄は批判が殺到しましたが投稿は削除せず、翌日には次のように投稿を続けています。
私は私を応援してくれる方にオススメしたいもの、仕事の事、ファッションなど…
私が良いなと思った事を掲載させて頂いてます。
ニュースなどに目を向けていないわけではありません。
災害、被害に遭われている方の事を考えていないわけではありません。
すべてのニュースにコメントする事は難しいし出来ません。
私の投稿をよく思わない方もいます。
それに対してコメントを残してくれる方もいます。
全てを真摯に受け止めておりますが、私は応援している方へ掲載したいので、見たくない方は見ないでください。
フォローも外して下さい。
よろしくお願いいたします。ーInstagramより
結果この投稿が炎上をヒートアップさせてしまうことになりました。
この事例は芸能人のインスタグラムでしたが、商品のPRという点では企業でも同じ原因で批判される可能性があります。SNSではPRの仕方だけではなくタイミングにも注意が必要です。
SNS運用開始の前に!
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売名行為だと不謹慎狩り
女性タレントが熊本地震の被災者のために500万2千円を寄付したと、金額が入った振込受付書の写真とともにブログに掲載して批判されました。ブログには、2千円は2人の息子からだという旨も書かれていたためか「好感度を上げたいだけだ」「そこまで見せる必要ない」というコメントが殺到しています。このような募金や寄付活動がきっかけとなる炎上は他にも多数発生している事例です。
不謹慎狩りが横行した結果、このような災害時の支援や情報提供など発信者が善意で行ったことでも「売名行為」「偽善行為」として不謹慎な行動だと批判される可能性があるので支援の方法には気を付けましょう。
なぜ不謹慎狩りが起こるのか
不謹慎狩りが起こる原因は大きく2つに分けられます。
1つは日本の異常なまでの“自粛ムード”、2つ目は不謹慎狩りを起こす人たちの過激な正義感です。
当事者たちの心理から、なぜここまで不謹慎狩りが横行しているのかを解説します。
不謹慎狩りを行う人の心理
不謹慎狩りのきっかけを作る批判的な書き込みをするのは「ソーシャルジャスティスウォリアー(SJW)」と呼ばれる人たちです。
ソーシャル・ジャスティス・ウォリアー(Social justice warrior、SJW)は
フェミニズム、人権(市民権)、文化的多様性、アイデンティティ・ポリティクスなど様々な社会進歩的な考え方を広めようとする人を指して言う言葉で、軽蔑的なニュアンスが色濃い。
直訳すると「社会正義の戦士」ですが揶揄する意味で使われることが多く、ネットスラングでは不謹慎狩りを行う人を「不謹慎厨(“不謹慎”という言葉を使って過剰な批判を行う幼稚な人)」と呼びます。
文化庁が実施した「国語に関する世論調査」によると「(ネット)炎上を目撃した際に書き込みや拡散をするか」という問いに対し、「すると思う」と答えた人は2.8%でほとんどの人が関与していないことが分かります。不謹慎狩りはネット上で正義感を振りかざし、批判的な書き込みをすることを「正義」と思い込んだ一部の人達から拡散されているのです。
被災者の心理
不謹慎狩りが一部のネットユーザーの行為だったとしても、被災者が同意見であれば彼らの書き込みは本当に「正義」であると言えます。自然災害を例に挙げたとき、実際に被災者はこの不謹慎狩りについてどのように感じているのでしょうか。
あ、あとあれだわ
あの時テレビ番組自粛とかさ、「被災者に対して遠慮しろ!不謹慎だ!不謹慎!」みたいに騒いでた部外者な
被災した側としては毎日毎日リアルでもテレビでも暗い話題ばっかで参ってんだよ、黙ってろって思ったよね
ACネタは笑わせてもらったから好きだったな pic.twitter.com/VcVALccIll
— ryuki@YZF-R25 (@YZFR25ryuki1) 2019年3月10日
宮城県民です。
震災翌年、年賀状に「あけましておめでとうと書くのは不謹慎」という人がちらほらいました。
別に「辛い一年をお互い乗り切れたね。」って考えでおめでとう言い合ってもいいのに。
津波被災者だって、お正月くらいは例年のように普通に過ごしたい人もいるかもしれないのに。
— しかゆかZ⊿ピエール瀧更生成功祈願中 (@nikukazechan) 2019年3月11日
このような投稿が目立ち、「不謹慎だ!」と騒ぎ立てる人達の多くは被災者ではないことが分かります。被災地の方たちは「災害について忘れてほしくはないがいつも通りの日常を過ごしたい」という思いを持っている方が多いようです。このような被災者の思いから「不謹慎と騒ぐことが不謹慎」だと、不謹慎狩りについて批判する意見は増えています。
不謹慎狩りのターゲットとなりやすい3つのポイント
分析した事例から不謹慎狩りのターゲットとなりやすい3つのポイントについてまとめました。企業側の配慮が足りなかった事例もありますが、思いもよらぬことが不謹慎だと捉えられて炎上してしまうことも少なくありません。
SNSの場合
災害発生時や世間でネガティブな出来事が話題となっているときは、いつも問題なく投稿している内容でも不謹慎だと批判されてしまうことがあります。「楽しい」「明るい」「嬉しい」「おいしい」などポジティブな感情を連想させる文章や画像は、不謹慎だと認識されてしまう可能性が高いので特に注意が必要です。
また被災者や被害にあった人達を励ますような投稿も裏目に出てしまう場合もあるので、投稿前に内容をチェックする人数を増やすなど平常時より確認・配慮を強化しましょう。
企業のPR活動の場合
SNS同様にポジティブな感情を連想させる商品やサービスのPRは控えるのが賢明です。加えて「豪雨の時に晴れを連想させる」「津波が起きた時に海を連想させる」「戦争に関わる記念日に火を連想させる」など直結するイメージがなくても、関連性のあるものや反対の意味のものは不謹慎狩りのターゲットとなる恐れがあります。情報を公開する前に、ニュースやカレンダー、SNSを注意深く観察することが大切です。
通常業務の場合
災害や大規模事件、事故の発生直後は通常業務を行う前にも確認するべき点があります。たとえ通常通り営業をしていても、娯楽的であったり、多量のエネルギーを消費する業務、事件・事故に関わる事業は不謹慎だと捉えられてしまう恐れがあるためです。同業や関連する事柄についてSNSではどのような声が上がっているのかを確認し、自社のサービス・商品が今世間でどのような立ち位置にあってどんなイメージを持たれているのかを知っておく必要があります。
不謹慎狩りのターゲットにならないための6つの対策
不謹慎狩りのターゲットにならないための6つの対策方法を紹介します。行動者の過激な心理により、思わぬことが不謹慎狩りのターゲットとなる可能性があるため細かい配慮が必要です。
災害直後でなくても「○○から何年の日」に注意
終戦記念日や大きな地震があった日など犠牲者が多数出てしまった災害や事件・事故は、発生直後でなくても不謹慎狩りのターゲットになる可能性が高いです。
震災があった日、終戦の日などは当たり前のように知っていると思っていても日常的には忘れているかもしれません。災害カレンダーなどを用意して、SNSやPRのスケジュールを立てるときに照らし合わせるなどの対策が必要です。歴史に残る大規模なものや5年以内に起こったものは必ずチェックしておきましょう。
1月17日 | 阪神・淡路大震災 |
3月11日 | 東日本大震災 |
8月6日 | 広島 原爆投下の日 |
8月9日 | 長崎 原爆投下の日 |
8月15日 | 終戦記念日 |
9月1日 | 関東大震災 |
9月11日 | アメリカ同時多発テロ |
10月23日 | 新潟中越地震 |
Yahoo!の災害カレンダー
https://typhoon.yahoo.co.jp/weather/calendar/?m=3
SNSの自動更新を停止
企業公式アカウントの自動更新を設定している場合、災害や大規模事故が発生したとき担当者がまず初めにやるべきことです。「○○から何年の日」も同様です。どんなに対策をしていても、この作業を忘れるとすべてが水の泡になってしまうので気を付けましょう。
新しい情報の公開・発信をしない
災害や大規模事故、事件の発生直後はSNSや新サービス・商品のプレスリリース、広告など新しい情報の公開・発信は延期にすることが賢明です。延期時期については焦らず、世間が落ち着いてから改めて発表すれば、不謹慎狩りだけではなく企業のイメージダウンも防ぐことができます。
気象情報・地震速報に注意
担当者は地方の災害にいち早く気づくために警報や速報などの情報にもアンテナを張っていなければなりません。ニュースは必ずチェックしている企業がほとんどだと思いますが、気象情報や地震速報は自社から離れた地域のものであれば聞き流してしまうことが多いのではないでしょうか?専用のアプリをダウンロードする、メールでの通知設定をするなどして常に情報収集できる体制を整えておきましょう。
SNSで世間の生の声をチェック
過激な批判をする人は少数派ですが、それ以外にも世間のリアルな声が散らばっているいるのがSNSです。今どんなことが話題になっていて、何が問題とされているのか、自社や同業他社の商品・サービスはどんなイメージを持たれているのか、などニュースでは分からない分野の情報収集ができます。
Twitterや検索エンジンでエゴサーチをする、専門業者に依頼するなど方法はいろいろあるため、自社に合ったものを選び効率よく行いましょう。特に災害、事件・事故の発生直後は平常時より念入りにSNSをチェックすることが有効な対策となります。
SNS運用方法の見直し
既にSNSの運用マニュアルを作成している企業も多いかもしれませんが、災害や事件、事故が発生したときにはイレギュラーな対応が必要になります。実際に不謹慎狩りにあった企業もSNSの運用マニュアルは作成されていた企業も多いです。「マニュアル通りに運用すれば大丈夫」と過信せず、常に様々なリスクを想定しながら運用しなければなりません。
このような状況に当てはまる場合はすぐに運用方法の見直しが必要です。
・マニュアルがなくSNSの運用が属人化している
・投稿内容は担当者が1度チェックしているだけ
・担当者が1人しかいない
・専任の担当者がいないため、片手間で運用している
SNSの運用は次のような体制を整えてから始めましょう。
・マニュアルを作成して運用を標準化
・担当者不在にならないように最低2人以上の担当者を常駐させる
・投稿内容は必ずダブルチェック
・専任の担当者を置く
不謹慎狩りから企業を守るために
不謹慎狩りを起こすのは少数派のネットユーザー
不謹慎狩りを起こしているのは一部の過激な正義感を持ったネットユーザーです。
常識的な配慮をしていてもあら捜しをして難癖をつけるユーザーは一定数いるため、いつどんなことでも不謹慎だと叩かれてしまう可能性があります。「気にしなければ良い」と思う方もいると思いますが、ネット上の情報は思わぬ形で独り歩きし、結果として企業のイメージダウンにつながってしまうことも多いのです。
炎上に備えることも有効な対策方法
「不謹慎狩りのターゲットにならないための6つの対策」の実践に加えて炎上に備えることも効果的な不謹慎狩りの対策方法です。具体的な方法としてネット監視があります。ネットの情報を監視して生のユーザーの声に耳を傾ければ炎上の火種にいち早く気づき鎮静化できる可能性があります。また有事の際の対応方法や謝罪方法などの知識を蓄えておけば、ピンチを逆手に取り企業のイメージアップにつながる事例も少なくありません。
レピュ研では対策に有効なネット監視ツールをご紹介しています。炎上を未然に防ぐためのネット監視から、有事の際の対応方法や謝罪方法のコンサルティングまで一括サービスでレピュテーションリスクからお守りします。不謹慎狩りから企業を守るためには、日頃から万全の対策を行うことが大切です。ぜひご検討くださいませ。
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