【2021年7月】企業炎上動向調査レポート~東京オリンピック2020を振り返って~

レピュ研を運営する株式会社ジールコミュニケーションズが、独自の調査により「ネット炎上」として判別したデータをもとに作成したレポートです。先月特に目立っていた炎上事例とその発生要因を解説し、月間を通してどのような傾向、トレンドが見られるのか分析しています。
企業におけるWeb・SNS、及びレピュテーショナルリスクの管理、評価、対策等に活用していただくことを目的として毎月発表している調査レポートです。
今回は特集として、7~8月にかけて行われた東京オリンピック2020に関する炎上事例を分析し、振り返っていきます。開催まで紆余曲折あったオリンピックですが、開催の裏で一体どのような炎上が巻き起こっていたのでしょうか?

SNS上に人種差別的な投稿をしたため炎上


大手出版社と業務提携をしていた編集者が、 Twitter上で人種差別的投稿をしたことで物議を醸しました。
当該編集者は、試合に負けた日本の選手に対して以下のような発言しています。

おっしゃ!メンヘラゴリラ敗退!
はよアメリカに帰れ!

このような人種差別・女性蔑視の投稿が問題視された結果、編集者は個人情報を特定され、企業との契約も解除されてしまいました。

問題視された原因

問題の投稿では、社会的関心の高いタグや、選手の個人名をハッシュタグとして付けていました。また別の投稿では、選手に関するニュース記事に誹謗中傷のリプライもしています。
複数回にわたる誹謗中傷に共通してみられる特徴は、トレンドやニュースに便乗して投稿しているという点です。
トレンド性の高い内容を投稿した場合、その他多くの投稿に埋もれてしまうケースもあります。
しかし、『社会的関心の高いハッシュタグをつけて投稿する』『話題性の高いのニュース記事にリプライする』という、人目に付きやすい形で誹謗中傷をおこなったことで多くのユーザーの目に留まり、炎上につながりました。

個人情報の開示が招いたスピード炎上

炎上したアカウントの特徴として、Twitterのプロフィール欄にFacebookへのリンクがはられていたことがあげられます。このFacebookページには本名のほかに、契約企業名や自身の書いた記事が掲載されていました。
結果として、SNS上における特定や企業への問い合わせといった動きがわずか5時間足らずで巻き起こり、翌日には企業が謝罪文を公表するというスピード展開となりました。

日本人と外国人のエレベーターを分けたため炎上


大手グループの系列ホテルが、宿泊客用のエレベーターに「日本人専用」と「外国人専用」という張り紙を掲示したことで炎上しました。
炎上したホテルは公式HPにて、「東京オリンピックに際する、コロナウィルス感染拡大防止措置のため」と釈明のうえ掲示を撤去しましたが、海外のメディアにも大々的に報道されるなど、炎上は長期化する事態となりました。

炎上の社会的背景

今回の炎上背景にあるのは、社会的な人権に対する関心の高まりです。
持続可能な国際目標として掲げられているSDGs政策など、昨今では人種差別や不平等を改善しようとする運動が世界的に活発化しています。また、東京オリンピック開催に際して、IOC(国際オリンピック委員会)が競技場での政治的抗議パフォーマンスを一部認めたことで、社会的マイノリティーの人権意識を世界に訴える動きが、より注目されつつあります。
こういった機運が高まる中において、人種差別への無配慮・知識不足は厳しい批判を受ける傾向があります。特にこの事例では、南アフリカのアパルトヘイト政策をイメージさせるなど、人種差別に対する歴史的理解の浅さが露呈してしまいました。

過去のいじめ発言が問題視され炎上


東京オリンピック・パラリンピック開会式の作曲担当者(以下、A氏)が、過去のインタビューで「同級生をいじめていた」という発言をしていたことで炎上しました。
インタビューでは、以下のようないじめの内容が語られていました。

● 段ボールに箱詰めして閉じ込める
● ジャージを脱がせる
● バックドロップをかける

以上の内容は、作曲担当者としてA氏が発表された直後から問題としてトレンドに上がり、犯罪といっても過言ではないいじめ内容に批判の声が続出した結果、大炎上となりました。
当初、A氏は謝罪文を掲載したうえで開会式の作曲担当は辞任しない意向でしたが、世論の厳しい声により辞任へと追い込まれました。

企業がリスクの把握をする必要性

問題となったインタビュー記事は1994年に発売された音楽雑誌に掲載されたものですが、実は今まで何度も問題視され、炎上を繰り返してきた過去があります。2005年には問題のインタビューがネット記事によって話題となり、A氏所属バンドのファンが利用していた掲示板が、炎上・閉鎖される事態となっています。
今回は、東京オリンピック・パラリンピックの作曲担当として発表されたことがきっかけで、A氏に関する検索が多く行われた結果、過去のいじめ発言や炎上事例が再注目され、問題視されることとなりました。

このように、過去の誹謗中傷や炎上騒動が明るみになって立場を追われる社会現象を「キャンセルカルチャー」と呼びます。
企業や団体として、過去に従業員が発言した誹謗中傷や炎上がないかどうか、現状の炎上リスクを改めて把握する必要性があったと言えるでしょう。

謝罪文による二次炎上の発生

今回の炎上は、謝罪文の発表がかえって炎上をエスカレートさせてしまった事例です。
炎上をうけたA氏は、発生から約2日後にTwitter上謝罪文を掲載したうえで、「作曲担当は辞任しない」とし、同日に運営委員会もA氏の続投を表明しました。
しかし、SNS上で謝罪を行ったことと、辞任という形で謝罪を表明しなかったことが、火に油を注ぐ事態となりました。
「多様性と調和という大会ビジョンにそぐわない」
「辞退以外あり得ません」
「辞退することで謝罪の意を示すべき」
というユーザーの不満が多数上がり、二次炎上へと発展。謝罪文には3500件を超える批判コメントが投稿され、「A氏(仮名)の辞職を求めます」というハッシュタグがTwitterのトレンドに入りました。

責任行動の伴わない謝罪文が二次炎上のきっかけとなり、A氏は作曲担当の辞退を発表することとなりました。

7月(オリンピック関連)の炎上【傾向と分析】

国際的ビッグイベントということもあり、 様々な分野で東京オリンピックと関連した炎上事例が見受けられます。世界中のメディアが日本に注目していることもあり、海外で批判報道される事例も見受けられ、炎上が長期化する一因となりました。

また、発生した事例の多くに「厳罰化・処罰の公表がされないと炎上が収束しない」という特徴がみられます。社会的な人権意識の高まりとともに、SNS上での私的制裁だけでなく、公式的な処罰を求める炎上傾向が強くなってきていると考えられます。公式的な処罰を求める声が多い場合、形のみの謝罪文を公表することはかえって逆効果となり、二次炎上を引き起こしかねません。

万が一の炎上にそなえた対応ルールを策定しておくことにより、 炎上原因や批判の声を冷静に受け止めるとともに、 効果的な事後対応を行えるよう前もって準備しておくことをお勧めします。

ガイドラインの策定と炎上シミュレーションの必要性

企業の炎上は、たとえSNSを運用していなくとも十分に起こり得ます。万が一炎上したときに備えて、ソーシャルメディアガイドラインの作成をしておき、事前に炎上の対応ルールを決めておく、炎上を想定したシミュレーションをおこなっておく等の準備をしておくことが、炎上の長期化や二次炎上を防ぐことに繋がります。

「まだソーシャルメディアガイドラインを策定していない」
「どのようにシミュレーションを行えばよいか分からない」
といったお悩みを抱えている方は、ぜひレピュ研を運営するジールコミュニケーションズにご相談ください。ソーシャルメディアガイドライン策定からSNSリスク教育・炎上対応のシミュレーションまで、徹底的にサポートいたします。

企業の炎上リスクに備える為の9つの項目

・炎上発生に備える基本体制の構築
・ネット情報の監視と分析方法
・炎上発生時の準備

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