炎上事例をもとに、原因と対策について紹介します。今回は、SNSで行った広告が原因で炎上してしまった化粧品会社のケースを解説します。この炎上によって、企業のイメージは大きく下がってしまっています。同じような炎上にあわないためにも、原因と対策について知っていきましょう!
広告に不快な表現があったことでネット炎上
某化粧品会社のツイッターで行われた広告の内容に、不快な表現があったとしてユーザーから苦情がよせられました。「女磨きしていますか」と題した簡単な診断テストで、診断結果から化粧品会社のオススメ商品が表示されるといったものでした。広告の内容は、
「いつの間にか女磨きをおろそかにしていませんか?」
「どんなときでもキレイな所作と言葉遣いを心がけている?」
「『だって』『でも』『どうせ』という言葉は使わないでいる?」
などと、化粧品とは全く関係ないものでした。また、女性に対してシビアな内容が多く
「余計なおせわですけど!」
「女磨きを強いられているようですごい嫌なかんじ」
「時間なくて疲れてる女性たちにこんな質問して何がしたいんだ」
と批判があいつぎ、ツイッターでは炎上状態になってしまいました。
すぐに謝罪するが情報は拡散されてしまった
化粧品会社は、すぐに「お詫びとご報告」を公式サイトに公開しましたが、ツイッターやブログ、ニュースサイトなどで、炎上内容は多くの人に拡散されてしまいました。これは化粧品会社のファンユーザーだけではなく、診断テストのことを全く知らなかった人にまで情報が広まり、ブランドイメージを大きく下げてしまった可能性があり、今後の商品の売り上げに影響をおよぼすかもしれません。
女性向け広告が炎上している理由
今回の炎上だけではなく、2016年の初めから2017年にかけて、女性向け広告の炎上が頻繁に起きています。女性向け広告がこんなにも炎上してしまう理由は、女性への固定概念がまだまだ根付いてしまっていることにあります。
2017年7月更新の炎上レポートでは、女性向け雑誌の不適切広告で炎上した事例について分析しています。
では、女性への固定概念が根付いてしまっている理由を考えていきましょう。
ステレオタイプによる女性への固定概念の定着
女性への固定概念は、ステレオタイプによる問題と言えるでしょう。ステレオタイプとは心理学用語であり、人々に定着してしまった先入観のことです。
ステレオタイプの典型的な例に、血液型占いがあります。「A型だから真面目だね」「O型だからおおざっぱだ」など、ほとんどの方が血液型占いについて人と共有したことがあると思います。しかし、血液型による性格の違いに学術的根拠は一切なく、その事実を知らない人がほとんどなのです。ただ、学術的根拠がないことを知った上で「明日から血液型占いを信じない」となる人は少ないのではないでしょうか。
一度多くの大衆に根付いてしまった認識やイメージは、そう簡単に正すことが難しいのがステレオタイプの問題の1つです。そして今回の炎上は、根本的に企業のイメージする女性への固定概念が変わらなければ、繰り返し同じ炎上がおきてしまう可能性があります。
「女性とは」に隠された裏側
今回の炎上には、広告制作者が意図しないうちに使った女性への固定概念が、誤解を生んでしまったのではないでしょうか。
例えば「女性はきれいな所作や言葉使い」「女性は化粧をいつもしていてきれい」といった何気ない言葉も実はステレオタイプであり、不快な思いをする女性もいます。
「どこがだろう」と思われた方が多いと思いますが、この言葉の裏側には「女性はこうあるべき」という願望が隠れています。「女性はきれいな所作や言葉使いをするべき」「女性は化粧をいつもしていてきれいであるべき」と言い換えるとどうでしょうか。何気ない言葉が願望に変わってしまいました。これは個人のとらえ方にもよると思いますが、今回の炎上では例と同じような、広告文に対して
「女性への理想のおしつけだ!」
「じゃあ、できてない私は怠慢なの?」
と不快に感じてしまった方が多かったようです。
危険なブランドイメージのブレとは
今回の炎上で、多くよせられた発言の1つが、化粧品ブランドの急激なイメージ変更への戸惑いの声です。化粧品会社のファンユーザーからは
「好きだったイメージが変わってしまった」
「こんなイメージじゃなかったですよね」
といった声がよせられました。ブランディングの手法やマーケティング情報を発信するBRANDINGLABでは「顧客が持つブランドイメージからズレないことが大切である」と述べております。
経営が安定していないとき、企業側はいろいろな施策を試そうとして、ブランド・プロミスを破ってしまうことがあります。そうなれば、顧客側の持つブランド・イメージとのズレが発生しますから、顧客との約束を破っていることになります。その結果、顧客から信用されなくなり、顧客離れが起きる可能性があります。(1)
ブランドイメージは、会社にとってとても大切な理念の一つです。ブランドイメージの良し悪しで、売り上げにも大きくかかわってきます。製品や商品だけではなく、会社名やサービスにも関わってくることです。また「このブランドだから信用できる」「このブランドだから買いたい」と、考えが確立した顧客を逃さないのも、大切なマーケティングのひとつと言えるでしょう。
企業として対応すべきことは
こうした状況におかれた企業は、どのように対応すべきだったのでしょうか。今回の炎上事例をどのように回避できたか、炎上が起きたあとの対策はどうすればいいのかまとめてみました。
女性の雇用とイメージ改革
炎上事例分析を行っている中で、今回の某化粧品会社の炎上事例だけでなく、女性軽視が絡む炎上事例には女性への固定概念が意図せずに使われてしまい、誤解を生んでしまったものが多い印象でした。
多くなる女性軽視炎上の中で「またか」「何も学ばない」といった声も多く上がっています。なぜなら、女性消費者たちから「女性向け商品の広告を、男性だけで製作しているのではないか」と思われてしまっているからです。「男性だけで作っているのでは」という考えは、炎上が何度も繰り返される中で生まれたものであり、それがすべて真実であるとはかぎりません。しかし、日本はまだ男女格差が顕著であり、女性役員よりもはるかに男性役員のほうが多いのが現状です。それを裏付けるように内閣府が公開している2016年度ジェンダー・ギャップ指数のデータで、日本順位は115ヶ国中111位です。(3)
ここからもわかるように「男性だけで広告が作製された」という考えになってしまうのは不思議ではないと思います。
その中で、繰り返される負のスパイラルをとめる一番の手立てが、積極的な女性雇用であると私は考えます。女性の雇用を積極的に進め、女性意見をしっかり取り入れることで、ブランドイメージのブレを防ぐことができ、さらには社会進出する女性が増えることで根本的な女性への固定概念を打ち砕くこともできるのではないでしょうか。
■10代の若い女性を中心に人気なインスタグラムの炎上事例をまとめました
>他のSNS炎上とは違う!インスタグラムの炎上する4つの事例
■SNSの企業公式がユーザーを煽るような発言をして炎上した事例を紹介!
>SNSでユーザーを煽る投稿をしたアプリ会社が炎上!
■SNSで炎上してしまったときの対処とは?
>SNS炎上の流れと炎上したあとの3つの対策方法
出典
(1)BRANDINGLAB「顧客から支持されるブランドになるには? 社員が自ら動き出すブランディングの手法をわかりやすく解説」
(3)内閣府男女共同参画局「共同参画 2017年1月号」