企業炎上分析レポート【2023.11】

本レポートはレピュ研を運営する株式会社ジールコミュニケーションズが、独自の調査からデジタルリスクに値すると判断した事例を分析したレポートとなっております。2023年、毎月にわたって特に目立っていた。または特徴的な炎上事例とその発生要因等を解説し、どのような傾向・トレンドがみられるのかを追っていきます。企業または学校におけるデジタルリスクの管理やトレンドの情報収集に活用していただくことを目的として毎月発表しております。

2023年11月までの炎上発生件数推移

ジールコミュニケーションズの独自調査・判定より、2023年11月の炎上件数は16件となりました。炎上タイプの内訳は下グラフの通りです。

10月は増加傾向がみえた炎上件数ですが、11月は一旦その鳴りを潜めている様子です。年末の炎上ラッシュに向けた、嵐の前の静けさのようですね。特徴としては、例月に比べて法人炎上が多く発生していることが挙げられます。近年では一般ユーザーのSNSリテラシーが向上しつつあるため、企業の情報発信や対応方法にも厳しい目が向けられるようになりました。公式SNSアカウントを運用している企業のご担当者の方は、今一度自社における情報発信のスタンスを見直し、炎上に対するリスクヘッジをおこなうことを推奨いたします。

過去の投稿に対して非難が浴びせられ炎上

ある世界規模の団体が過去に投稿した風評加害投稿に対して、非難が浴びせられ炎上してしまいました。

問題となったのは2021年4月にX(旧Twitter)で投稿された内容です。投稿内では、団体の人権理事会本部が「日本が福島原発の汚染水を放出すること」に対する遺憾の意を表明しています。この当時はそこまで注目されることもなく、普段の投稿として流れていきました。

ところがその投稿に対して、コミュニティノートが付けられたことで話は一変。投稿された情報は誤った情報として指摘されたうえ、SNSユーザーから非難を受けて炎上する事態となります。

これに対して団体側は投稿をサイレント(報告しないで)削除してしまいます。この対応が更なる批判を呼び、二次炎上してしまうこととなりました。

コミュニティノートとは一体なんなの?

今回、過去の投稿が再注目されるきっかけとなったコミュニティノートについて解説いたします。

コミュニティノートとは、X(旧Twitter)内で横行している誤情報や誤解を招きかねない情報の拡散を防ぐために、Xのユーザーが協力して投稿の背景情報を提供することが出来る機能のことです。日本では2023年7月にリリースされています。

コミュニティノートは、「協力者」として登録されたXの一般ユーザーによって書かれています。協力者は様々な投稿にコミュニティノートを残すことが出来ますが、ある一定の数の協力者によってノートが役に立つと評価されないと、その他の一般ユーザーには表示されない仕組みとなっています。この協力者として登録されるためには以下の資格が必要とされています。

  • Xのルールへの違反についての通知を最近受け取っていないこと
  • Xのに登録してから6カ月以上経過していること
  • 電話番号が認証済みであること

このような施策内容から、コミュニティノートには誤情報の拡散を防ぐ十分な力が備わっていると思われがちですが、そうとも限りません。ProPublicaとコロンビア大学の共同研究チームによると、コミュニティノートは誤情報の拡散防止機能として十分ではないという研究結果を発表しています。研究チームによると、調査対象となったイスラエルとハマスの紛争についての誤情報の投稿2000件のうち、80%はコミュニティノートによる訂正が付けられていなかったことが判明しています。さらに、X上で誤情報であることが判明した200件のポストのうち80件以上は、コミュニティノート以外で誤りが発覚していたとしています。また、2023年10月7日(イスラエルとハマス紛争の最初の攻撃日)から2週間に投稿された400件の誤情報を含む投稿を分析したところ、誤情報が投稿されてからコミュニティノートが表示されるまでに、平均で7時間もかかったことも判明しました。このように、現段階(2023年12月現在)ではコミュニティノートが当初期待されていた機能を十分に果たしているかが懐疑的であることが分かります。

なお、コミュニティノートは誤情報の拡散を防ぐために導入された機能のため、コミュニティノートがついた元の投稿は収益分配の対象外とされています。

サイレント修正・削除をするリスク

今回の炎上は、団体側がコミュニティノートのついた投稿を釈明無し(サイレント)で削除したことから二次炎上に発展しています。

SNSの投稿が炎上する、または投稿内容の誤りを指摘された際に、その対応として釈明や報告なしで削除したり修正することはかえって悪手です。何故かというと、サイレント修正・削除をすることで、批判意見に対して責任逃れをしているかのように捉えられてしまうからです。特に企業や法人団体の運営する公式SNSアカウントは、一般のSNSユーザーから正しく企業然とすることを求められる傾向にあります。この場合、企業や法人団体として自社がおこなった情報発信の内容に責任を持つことが要求されますが、それには企業として相応しくない情報発信をおこなってしまった場合や、誤った情報を発信した場合の謝罪や報告義務もあると認識されているのです。また、削除対応を行う場合や修正を行う場合も、企業として報告義務があることもSNS上での暗黙の了解です。

炎上した際の初動対応は、SNSの批判ユーザーたちが企業としてどのような行動を期待しているのかを見極めて、慎重に行動に移すことが求められます。

患者の診療情報をSNS上に無断掲載して批判殺到

患者の診察情報(CT画像)を、SNSに患者に無断で掲載した病院の公式SNSアカウントが波紋を呼んでいます。

問題とされたのは、ある病院の公式X(旧Twitter)アカウントで投稿された画像と情報の内容です。

「このCT画像を見たら何に留意してどのような対応をしたら良いでしょうか?」という文章とともに、患者の年齢・性別とCT画像が投稿されました。この投稿に対して、「この投稿は患者さんの許可をとっているの?」「もしも許可が出ていたとしても、本人を特定されかねない情報を故意に載せることは病院としてどうなの?」という疑問の声が多く寄せられました。

こういった反応を受けた病院側は、投稿の翌日にコメントを発表しました。

当アカウントで公開する診療情報は、包括的同意を得た上で、個人が特定されぬように配慮し年齢や性別、その他の情報に対して匿名加工したものです。

実際の投稿より引用

このように、情報発信の内容に問題は無いとしつつも、当該投稿は削除されました。さらに2日後に追加の声明を発表し、

多くの皆様に不快感と不安、不信感を与えるような投稿をおこなってしまったこと深くお詫び申し上げます。

事実関係を確認したところ、掲載にあたってCT画像とともに提示された患者様情報(年齢・性別・受傷事由等)は実際の症例とは異なり、投稿した内容から個人を推察することが出来ないよう配慮していたとのことでした。

少しでも救命の現場を目指す方々に興味を持ってもらおうとしてのことでしたが、当センターの信頼を著しく損なう不適切な投稿でありました。

皆様からのご指摘を重く受け止め、該当アカウントを無期限での休止といたします。

実際の投稿より引用

と報告。公式アカウントは無期限の休止状態となりました。

SNSユーザーのリテラシー向上とリスクヘッジ

昨今は、SNSユーザーのリテラシーレベルが急上昇している傾向にあります。これは、度重なる炎上の発生や炎上によって人生の危機に陥ったユーザーが大きく取り上げられたことで、SNS利用・運用に対するリスクヘッジが常識化しつつあることの現れと言えるでしょう。

このことから、極端に前の事例でも解説したように、企業や法人団体には情報発信時の責任が問われるため、SNS炎上や情報漏えいに対するリスクヘッジをおこなっていることが当然のように求められるようになりました。そのため、今回のように患者の情報や事例を発信することは、SNSリスクに対する危機意識の欠如だとSNSユーザーには捉えられてしまいますし、やるべきリスクヘッジをおこなっていない無責任な企業だとしてイメージダウンにも繋がります。

仮に本当に許可を得た問題のない情報だとしても、SNSユーザーからの指摘を想定せずにいたことも問題です。公式SNSアカウントを運用する上で必要最低限のSNSリテラシーさえあれば、ユーザーに許可の有無を指摘されることは当たり前のように想定することが出来ます。逆に言えば、最低限のSNSリテラシーさえ持っていれば、投稿内に「この投稿および情報開示は、患者様の許可を得ておこなっております。」という一文を入れることが事前に出来たはずです。このことから、当該公式アカウントの運営者は、世間一般のSNSユーザーと比較してリテラシーが欠如していたと言わざるを得ません。

冒頭でも申し上げたように、SNSユーザーのリテラシーレベルが向上しつつある今、リスクに対して先回り出来る柔軟な対応能力が求められています。そのためにも、ガイドラインのブラッシュアップやSNS研修制度の強化などをコンスタントにおこなう必要があります。SNSリテラシーレベルはどうしても個人の能力や感性に大きく依存しがちです。個人によってSNSリテラシーレベルが異なるのではなく、組織全体としてのリテラシーレベルを上げるためにも、組織単位での施策や体制づくりが重要になることに着目する必要があるでしょう。

事例の分析で、炎上リスクのノウハウを蓄積

ジールコミュニケーションズが開催している無料のウェビナーでは、今回ご紹介した炎上事例の他にも、様々な事例をさらに深掘りする形で解説しております。ウェビナー中の炎上事例解説では、データに基づいた炎上トレンドや、具体的に注意すべき投稿内容についてお伝えしております。

ぜひ、弊社ウェビナーにご参加の上、今後のSNSリスク対策にお役立ていただければ幸いです。

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