レピュ研を運営する株式会社ジールコミュニケーションズが、独自の調査により「ネット炎上」として判別したデータをもとに作成したレポートです。先月特に目立っていた炎上事例とその発生要因を解説し、月間を通してどのような傾向、トレンドが見られるのか分析しています。
企業におけるWeb・SNS、及びレピュテーショナルリスクの管理、評価、対策等に活用していただくことを目的として毎月発表している調査レポートです。
目次
ご当地ヒーローのデザインが盗作だとして炎上
ある地方団体のご当地ヒーローが、既存のキャラクターデザインを盗作しているとして炎上しました。当該ご当地ヒーローは、クラウドファンディングによって資金を募り、誕生しています。しかし、 Twitter上のファン層から告発を受けたことにより、デザインを外部に発注する際に既存キャラクターをベースに配色変更して作成するように指示していたことが明らかになりました。それにより、当該ヒーローは活動休止を表明するとともに、クラウドファンディングで得た資金も返金対応することとなりました。
今回の炎上では、炎上前と炎上後の対応も含めて3つの問題点がありました。特に留意すべき炎上要因を時系列順にご紹介致します。
過去の事例を踏まえた営利展開を行っていなかった
今回のようにデザインの類似性から注目され、炎上する事例は過去にも発生しています。当該ヒーローの前身となった旧ご当地ヒーローも、デザインが既存キャラクターに酷似しているとして話題になりました。その他、2020年の11月には地方自治体のゆるキャラが、国民的アニメキャラクターに酷似しているとして炎上しています。
今回の事例では、意図的に既存キャラクターのデザインを模倣した上で営利展開をおこなっています。過去の事例と同じように炎上の可能性が高いことは事前の予測が可能でした。にも関わらず、短絡的にデザインの盗作をおこないSNS公開をおこなうということは、軽率な判断だったと言えるでしょう。
SNS上で盗作が告発されるかもしれないという危機感が薄かった
盗作したデザインをSNS上で発信することに対しての危機感が足りなかったことが炎上要因の1つとして挙げられます。SNS、特にTwitterは各界隈におけるファンの結びつきが強いことが特徴です。そのため、その界隈のファンであるユーザーが問題提起的な内容の投稿をおこなうと、拡散されやすい性質があります。特に、コアなファンが多いSNSの界隈ではこのような傾向が強くみられます。実際、当事例で炎上のきっかけとなったアカウントのフォロワー数は、多方面への影響力が及ぶほど多くありませんでした。しかし、このアカウントと繋がりの深いフォロワーが素早い反応をしたことにより、告発投稿は加速度的に拡散・炎上することとなりました。
このような土壌で情報発信をおこなうとなった際に、「告発の可能性が高まるから情報発信は控えよう」ひいては「盗作したデザインはファンやユーザーを不快にさせるので公開を見送ろう」という判断に至らなかったことが、今回の騒動におけるターニングポイントとなりました。
答えを濁す釈明文や逃げるような投稿全削除をおこなった
この炎上によって新たに発覚した支援金の不透明な経路について、団体代表者はTwitter上で釈明をおこないました。しかし、「支援金の用途が不明確では心配なので、証拠として領収書を提出してほしい」というユーザーの声に対して、支援金の横領は絶対にしないと言いつつも領収書の公開を渋る代表者に、SNS上では疑惑の念が一層深まる事態となりました。
加えて、炎上発生から約2日後に投稿した謝罪文ごと全ての公式SNSを削除したため、「当該企画運営チームはユーザーの批判から逃げている」と捉えられてしまいました。
企業関係者が転売を容認する投稿をしたため3ヵ月で3回連続炎上
企業関係者、あるいは企業の不適切な情報発信が次々と問題視された結果、連続で3回炎上してしまった事例です。玩具専門雑誌の事業展開している企業が、3ヵ月で3回連続の炎上を起こしたことで話題となりました。連続炎上に至った経緯を、時系列でみていきましょう。
【1回目】当該社員がTwitter上で転売を容認する投稿をおこなった
連続炎上の火種となった1回目の炎上は、当該社員がTwitter上で転売を容認する投稿を行ったことがきっかけです。
「転売を憎んでいる人たちは、買えなかった商品が高く売られているのが面白くないだけだよね?」
「ユーザー優先な状態が必ずしも良いとは限らない」
このように正規ルートで商品を購入する消費者を否定するかのような投稿が繰り返された結果、当該社員のアカウントは炎上してしまいました。また、問題の投稿をおこなったアカウントは勤務先企業を公表したうえでTwitterを利用していたため、すぐさま個人情報が特定されるとともに企業への問い合わせが殺到する自体となり、大規模炎上に発展してしまいました。
この炎上では、拡散から1日後には謝罪文が公式Twitter上に掲載され、3日後には当該社員の退職と役員の降格処分が発表されました。連休真っ只中での炎上にも関わらず素早い対応と厳格な処分を下した当該企業に、SNS上では賞賛の声が上がりました。
【2回目】ぞんざいな謝罪文掲載 、問題社員のコラムを継続連載
前回の炎上から約1ヵ月後、当該企業から発売された雑誌に対して批判の声が殺到し、再度炎上する事態となりました。具体的な批判内容としては、前回の炎上の際に掲載した謝罪文と全く同一の文章を、雑誌の最終ページに差し込んだことが大きく取り沙汰されました。
また、炎上した社員のコラムが別担当に引き継がれたとはいえ連載継続したことや、降格された役員の名前が紙面に名を連ねていたことから、
「運営体制は結局改善されていないのだろうか」
「前回の降格処分はポーズだったのか?」
というユーザーの声も上がるなど、複数の要因が重なり合うことで炎上を引き起こしてしまいました。
【3回目】自称支援者が転売を容認する投稿をおこなう
3回目の炎上では、当該企業の社員ではなく、当該企業からの支援を受けている”自称”モデラ―がTwitter上で転売を容認する投稿をおこなったため、批判の声が殺到する事態となりました。問題の投稿を行った人物が”自称”であったことから、企業からの謝罪文や釈明文は公表されませんでした。しかし、再三にわたる炎上に対して、
「関係者への根回しもできないのか。雑誌の程度もしれているな」
「どうしてこんなに次々と問題が起こせるのか」
というように、怒りを通り越して呆れの声が多く上がりました。
今回転売の容認をおこなったSNSアカウントは個人利用によるものですが、
「企業名を公開してSNS利用をおこなっている以上、そのアカウントから発信される情報は公式SNSと同等の影響力がある」
というSNSの特徴をうかがい知ることができます。
「転売」キーワードの持つ2つの傾向
この炎上で注目すべき点は、「転売」に潜む問題の根深さにあります。転売は玩具やグッズなど希少価値のある商品を買占め、高価格で売ることにより利益を出す行為です。買占めによって正規品が品薄状態に陥るため、商品の希少価値と価格相場がさらに上がり、本来購入出来るはずの消費者層に商品が行き渡らない状態となります。このように、転売は商品の流通を滞らせるとともに、嗜好品の普及や認知拡大までも阻害するため、社会的に問題視されている行為になります。今回の事例では、転売の持つ2つの傾向から、大炎上にまで発展してしまったと推察されます。
ファン層や一般ユーザーからの強い転売否定
SNS上、特にTwitterを利用している各界隈のファン層の多くが転売に対して否定的であり、転売行為を強くバッシングする傾向にあります。転売自体が明らかに悪質な行為ではあるのですが、それを罰する明確な法律がないことで転売および転売屋へのヘイトを溜めることとなり、結果的に大バッシングを受ける炎上へと繋がります。また、転売に関する炎上は頻繁に発生しており、トレンドにも上りやすいことから、各ファン層以外の一般ユーザーも必然的に転売へのバッシングを目にする機会が多くなります。そのため、ファン層と同じく一般ユーザーも転売に対して「極めて悪質な行為である」という印象をより抱きやすいと推測されます。そもそも「転売」自体が炎上に発展しやすいキーワードなのです。
今回の炎上では、本来ならば転売を真っ先に否定してユーザーの味方であるべき企業関係者が転売を容認したことにより、常日頃から転売を否定していたファン層の不満が爆発することとなりました。当該企業は玩具雑誌ですが、市場を問わず転売は横行しているため、今後同じような炎上は発生しやすいものと予測されます。
社会全体でみられる転売抑制の傾向
先述の通り、転売を罰する明確な法律はありませんが、近年、転売をなくしていこうという社会全体の動きが顕著にみられるようになりました。特に、企業の転売防止施策は積極的に行われており、転売への規制も厳しくなりました。企業の転売防止施策などの導入事例がネットニュースに取り上げられ、賞賛される等、一般ユーザーからも好意的に受け止められています。
1回目と3回目の炎上で問題視された投稿は、そうした社会の動きに逆行する内容でした。特に、当該企業は母体となる組織がサステナビリティや転売防止活動に対して意欲的に取り組んでいたこともあり、母体組織とSNSユーザーの両者から睨まれる状態に陥ってしまいました。
このように、SNSのトレンドと社会のトレンドの移り変わりにはシンクロ性が見受けられます。今回の炎上は、個人SNSでの情報発信が発端でしたが、企業として「情報発信の際には、社会のトレンドに対して高いアンテナを張る必要がある」と教育さえしていれば、今回の炎上は十分防げた内容だったと推察されます。
Vtuberがオンラインゲームで不正行為をおこない炎上
人気Vtuberが、オンラインゲーム内で不正行為をおこなったことで波紋が広がっています。当該Vtuberは、自分より格上のプレイヤーにランク上げを手伝わせる「ブースティング」と呼ばれるゲーム内の規約違反を行いました。更にこの違反行為に関わっていたとされるプロゲーマー・ストリーマーは身分を隠す目的でサブアカウントでプレイしていたこともあり、「スマーフィング」と呼ばれる初心者狩り行為であるとして、ファンやゲームプレイヤーから多くの避難を浴びることになりました。
誤った謝罪ツイートの投稿による炎上長期化
この炎上を受けて、当該Vtuberと、一緒にプレイをした関係者数名がTwitter上で謝罪をおこないました。ところが、謝罪ツイートには一般ユーザーからのリプライ欄が封鎖されており、謝罪ツイートは一方的な情報発信となってしまいました。これにより、先述の公式SNSを全削除した事例と同じく「ユーザーの批判や不都合な面から逃げている」と捉えられてしまい、炎上は長期化する事態となりました。
今回の例に限らず、アカウントの削除やリプライ欄の封鎖は、ユーザーから責任放棄とみなされて二次炎上や炎上の長期化に発展する恐れがあります。アカウント削除やリプライ欄封鎖の対応をしたところで、批判される場が変わるだけであって炎上対応とはなり得ません。逆に、ユーザーの批判材料を増やす事態になりかねませんので、炎上時の対応は慎重におこなう必要があります。また、炎上した投稿の不用意な削除対応はかえってユーザーを刺激し、投稿のキャプチャーが出回る要因となるため、こちらも注意が必要です。
9月の炎上【傾向と分析】
先月と比較しすると、時事的問題に加えて「転売」「盗作」など、SNS上の各界隈におけるファン層を刺激しやすいキーワードやカテゴリが多く見受けられました。転売はユーザーや特定のファンを刺激しやすい典型的な炎上キーワードです。先ほど紹介した事例においても、SNS上であえて転売に触れた問題の社員は、転売というタブーに触れるSNSリスクを理解していなかった可能性があります。SNSの個人利用、企業での公式SNS運用問わず、取り上げるトピックがSNSにおいてどのような特徴を持つのか理解したうえで情報発信することをお勧めします。
また、炎上後の対応として
「投稿を削除する」
「アカウントを削除する」
「リプライ欄を封鎖する」といった事例も数多く見受けられました。繰り返しますが、証拠を消して意見を受け付けないという姿勢は、ユーザーの批判材料を増やすだけであり炎上の沈静化対応とはなり得ません。早急な炎上収束のためには、
「誠実な態度」
「批判や問題と向き合う心構え」
「深い謝罪の気持ち」この3つの姿勢を対応をもって示すことが大切です。
炎上対応時には、一般例に沿うようなオーソドックスな対応方法から、特殊な状況下で臨機応変な対応をしなければならない場合もあるでしょう。そのよう場合に備えて、炎上対応時のエスカレーションフローを事前に定めておくなど、炎上時においても確実な沈静化対応を手段として選択できる準備を整えておくことをお勧めします。
事前の炎上対応マニュアル作成で、どんな批判にも対応できる企業体制づくりを
多種多様な人々が意見を交流するSNSにおいて、社会のトレンドを把握して批判意見を回避することと同様に、批判をうけた時に適切な対応を行うことは重要なオペレーションとなります。事前の炎上対応エスカレーションフローを作成することは、万が一炎上が起きた際の沈静化を早め、二次炎上を防ぐことに繋がります。
「エスカレーションフローとはどのようなものなのか想像がつかない」
「そもそも自社にはどのような炎上リスクがあるのだろうか?」
というようなお悩みを抱えているかたは、ぜひレピュ研を運営するジールコミュニケーションズにご相談ください。事前の炎上対応マニュアル作成コンサルタントから万が一の炎上対応まで、徹底的にサポート致します。