【2022年9月】企業炎上調査分析レポート

本レポートはレピュ研を運営する株式会社ジールコミュニケーションズが、独自の調査から「企業の炎上」として判別した事例の分析内容です。先月特に目立っていた炎上事例とその発生要因を解説し、月間を通してどのような傾向、トレンドが見られるのか解説しています。企業におけるWeb・SNS及び、レピュテーショナルリスクの管理・評価・対策等に活用していただくことを目的として毎月発表しております。

2022年9月の炎上件数の推移

ジールコミュニケーションズの独自調査・判定より、2022年9月の炎上件数は30件となりました。炎上タイプの内訳は下グラフの通りです。

メディアによる炎上が激減した一方で、個人による炎上が激増しました。ただ、いずれもYoutuberやメディア上の著名人による炎上であり、なかには企業に所属、または提携しているユーザーもいたため、繋がりのある企業・法人のイメージダウンは免れぬ事態となっています。

公式SNSアカウントが開き直りのような投稿をして炎上

ある公式Twitterアカウントの振る舞いが、企業SNSとしての義務を果たしていないとして炎上する事態となりました。

炎上した企業は幼児向け製品の外資系メーカーで、日本支部の代表を務める男性自らがTwitterアカウントを運用していました。当社はネットを中心に知名度をあげていましたが、一方で使用中の事故が多発しており、各小児科団体や、SNS上の医師たちからは名指しで注意喚起されてもいました。

今回の炎上では、このような各方面からの注意喚起に対して、公式Twitterアカウントが反論する形で以下のような投稿を行い、その投稿をインフルエンサーが引用リツイート・批判したことで発生することとなりました。

公式アカウントの「義務」と「権利」

今回の炎上で、SNS上のユーザーから疑問視されたのは「公式SNSアカウントとしての役目を怠っている」という点でした。

SNSとは、本来コミュニケーションの取りづらい顧客やファンユーザーとのコミュニティ創出もさることながら、従来であればテレビやHPでしか出来なかった、呼びかけや注意喚起・啓蒙・啓発を簡単におこなうことが出来るという側面があります。性質上、どうしてもSNSによるファンコミュニティ創出や認知拡大に目が行きがちですが、自社の製品に注意事項があった場合、企業の対応として「注意喚起を促さなければならない」ということは、SNS上のみならず現実の一般社会において、企業としての「義務」になります。SNSが人々の社会と強く結びついているからこそ、「注意喚起は企業の義務である」という社会のベースとしてある考え方がSNS上でも適用されることは不思議な事ではありません。

ここまでの話において、企業として最低限しなければならないこと(注意喚起)=義務、その上で認知施策やコミュニティ創出を行うべきであるという考え=権利と置き換えた場合、人々が生きているリアルな社会とSNSの考え方が非常にリンクしていることが浮き彫りとなります。

「おじさん構文」が炎上をブーストさせる

「おじさん構文」という言葉を聞いたことはありますか?

おじさん構文とは、主に中年男性が若年層の女性に対してよく送るとされるメール構文を指したネット用語です。中年男性とのコミュニケーションをとる事の多い女性、いわゆる「パパ活女子」というわれるユーザー層がこぞってSNS上に晒上げた結果、悪意を持って広がる結果となりました。

バイドゥ株式会社『気になるおじさん構文の特徴』より引用
https://simeji.me/simeji-ranking/backnumber/2022_105/

おじさん構文だから炎上に発展したという事例はほとんどありません。しかし、既に炎上した情報がおじさん構文だった場合、燃料を投下するかの如く炎上がブーストすることは、SNSにおいてよくある事象です。では、なぜおじさん構文はこれほどまでに嫌われてしまうのでしょうか?

それは、おじさん構文が認知された経緯にあります。そもそも、おじさん構文の成り立ちは、およそ20年前のガラパゴス携帯電話によるメール機能にまで遡ります。今でこそスマートフォンの発達やフリック機能・メッセージアプリの開発によって、視覚的にも感覚的にもより会話に近いコミュニケーションが可能になりました。そのため、昨今のメッセージアプリは会話のように内容が端的でありながら、感情も伝わりやすいという利点があります。

しかし、20年前のガラパゴス携帯電話では1つのメールに入れられるだけの情報を詰め込んで送ることが当たり前でした。なおかつ、無機質な画面のため感情が伝わりにくく、フランクだったり積極的にアプローチをしたい相手に対しては絵文字を多用しないと気持ちが伝わりづらいという難点がありました。さらに、画面が小さかったため、句読点を多用して行を整えるという手法もスタンダードでした。

このようなガラパゴスメールのレガシーを抱えたまま中年になった男性は、いざ若い女性とコミュニケーションをとる段階になった際に、20年前と同じような感覚で相手にアプローチをかけてしまう傾向にあると考えられます。メールを受け取ったユーザーは、その独特のメール構文をネタにSNSを更新し、結果として同じようなメール構文の傾向を「おじさん構文」と呼ばれるようになったという成り立ちを、弊社では推測しています。

この「メールを受け取ったユーザー」「若年層のSNSユーザー」であることが、おじさん構文が嫌われる理由に拍車をかけていると考えられます。若年層のSNSユーザーは、SNSを承認欲求を満たすプラットフォームとし、気に入ったもの・嫌だったもの・何気ないことまで何でもSNSを通じて情報発信する傾向にあります。その中でも、中年男性とコミュニケーションをとる機会の多いユーザー、いわゆる「パパ活女子」「サービス業」の女性たちがこぞって、嫌なものの代表例としておじさん構文のメッセージを晒上げたことで、認知度が増し、結果的におじさん構文=嫌なもの、という認識が広まってしまったのではないかと考察されます。

また、「パパ活女子」や「サービス業の女性」が嫌だと感じるものとして「おじさん構文」があげられてしまったことを加味するに、おじさん構文のメッセージがあいての女性に対する下心の透けて見える内容であったことは想像に難くありません。このことから、おじさん構文は「古い」「独特」「なんとなく嫌だ」という曖昧な嫌悪感から、「女性に対する下心が透けて見える嫌らしさ」という明確な嫌悪感にパワーアップしてしまったことも伺えます。

「下心が透けて見える」ということは、そもそも相手とのコミュニケーションにおける距離感を図り間違えているということです。その代表例であるおじさん構文を用いて企業の公式SNSアカウントを運用した場合、SNSユーザーからのどのような反応が予想されるでしょうか?8月の炎上レポートでもお伝えしたように、公式SNSの言葉は企業の言葉です。まるで、おじさん構文で情報発信をおこなう企業自体に下心があるかのような錯覚に陥ってしまうという可能性も捨てられません。

社長の不祥事がSNS上で拡散され炎上

老舗企業の社長が起こした不祥事によって、企業公式SNSが炎上する事態となりました。

事の発端は、とある老舗和菓子企業の社長が、信号無視による衝突事故をところから始まります。事故は社長による過失にも関わらず、当の本人は被害者に対して暴言を吐くなどの威圧行為をおこないます。この一連の流れを録画した動画を、被害者がSNSに投稿。その後、炎上を取り扱うインフルエンサーに取り上げられたことで、社長の不祥事は一気に拡散され、炎上する事態となりました。さらにその後、炎上した企業の従業員を名乗る人物が、企業の隠ぺい体質や、社長の別不祥事をSNS上でリークし、炎上は加速度的に燃え広がる結果となりました。

炎上トレンド:内部告発系

2022年7月の炎上レポートでもとりあげましたが、昨今のSNSでは「内部告発系」の炎上がトレンドとなっています。内部告発系の炎上とは、企業の従業員やアルバイトが、所属する企業の不祥事をSNS上で暴露し、結果炎上してしまうことを指します。

このような内部告発系炎上がトレンドとなったきっかけや要因として、「エンタメ化する炎上」 「内部改正のトリガーづくり」があげられます。

エンタメ化する炎上

一つ目の要因としてあげられるのは「炎上がエンタメ化しつつある」ということです。特徴として、今回の炎上や2022年7月の炎上では、炎上を取り扱う「炎上系インフルエンサー」をトリガーとして不祥事が爆発的に拡散しています。では、この炎上系インフルエンサーとは一体どのような存在なのでしょうか?

炎上系インフルエンサーとは?

炎上系インフルエンサーとは、企業や法人・著名人の不祥事をニュースのように拡散することで人気を得ているユーザーのことを指します。リアルで言う 「ゴシップ誌」と同じような位置づけになります。この炎上系インフルエンサーは絶大なフォロワー数を誇り、彼らに不祥事を拡散された場合の影響力は計り知れません。

炎上系インフルエンサーの特徴として「SNS上の不祥事を見つけ出すことに長けている」という点があげられます。現に、7月の炎上事例では、告発者の投稿から約1時間30分後には、炎上系インフルエンサーが速報として情報発信をおこなっています。彼らにとって不祥事は、人気を得るためのコンテンツ材料となるため、常日頃からSNS上の不祥事や情報を自ら求め、探しているのだと推測されます。

炎上系インフルエンサーのように、炎上をコンテンツとして扱う影響力を持ったユーザーが表れ始めたことにより、SNS上のユーザー達も炎上をゴシップ誌を読むかのように楽しみ始めている、という傾向にあります。

内部改正のトリガーづくり

先述の炎上系インフルエンサー台頭に伴い、「社内体制や悪習といった企業の膿を、SNSでの告発をきっかけにして打破していこう」という動きが見られるようになりました。この要因としてあげられるのは、「社内における内部上申システムが整備されていない」と伴に「SNSリスクマネジメントをおこなっていない」という点が大きいと推察されます。

7月の内部告発、今回の内部告発でも特徴としてあげられるのは、従業員やアルバイトが所属企業に対する不満を溜め込んでいたにも関わらず、それを改善したり発散させる場が無かったということです。この一因として社内での上申システムが整備されておらず、現状を打破できない状況にあったことがあげられます。また、仮に上申したところで、従業員の意見に耳を傾ける柔軟性に欠けていたため、結果として別のルートで状況を打開していこうという算段を立てたことは、想像に難しくありません。

さらに、不祥事を専門的に取り扱う炎上系インフルエンサーであれば、企業や法人の不祥事を率先して使用してくれる可能性があります。炎上系インフルエンサーによる炎上拡散をトリガーとして、企業側が社内体制の是正に乗り出すように促すという一連のフローは、ここ最近の内部告発系炎上でもスタンダードとなりつつあります。

9月の炎上【傾向と分析】

一旦、減少傾向をみせた炎上発生件数ですが、毎月着々と頻度が高まりつつあります。7月のような社会的に大きなインパクトがない限り、炎上件数は高まったまま年末に突入するのではないかと想定されます。

先述した通り「内部告発」が炎上のトレンドとなりつつあります。その背景には、炎上をゴシップ誌のように楽しむカルチャーがSNS上で形成されつつあることと、それを糧にした炎上系インフルエンサーの台頭があげられます。

企業や内部的な不祥事が日の下にさらされるということなので、もちろん根本的な原因は不祥事を起こしたこと自体にあります。しかし、不祥事で被る悪影響とは別として、SNSで炎上した場合のブランドイメージの低下も加味しなければならないフェーズに、今、日本の企業は突入しています。SNS炎上の恐ろしいところは、タイミングや炎上の経緯によって悪影響を受ける度合いも異なってくる、というところです。したがって、もし自社が炎上してしまった場合の予測が難しいこともあり、「このような炎上であれば、これくらいの悪影響で済むだろう」「○○%売り上げが落ちるかもしれない」というような定量的仮説を立てることが出来ません。企業として、常に最悪のケースを想定して、事前の対策をおこなっていく必要があると言えるでしょう。

事例の分析で、炎上リスクのノウハウを蓄積

ジールコミュニケーションズが開催している無料のオンラインセミナーでは、今回ご紹介した炎上事例の他にも、様々な事例をさらに深掘りする形で解説しております。セミナー中の炎上事例解説では、データに基づいた炎上トレンドや、具体的に注意すべき投稿内容についてお伝えしております。

ぜひ、弊社セミナーにご参加の上、今後のSNSリスク対策にお役立ていただければ幸いです。

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