炎上事例をもとに、原因と対策を解説します。
今回は2018年5月に、大型家電量販店Bの社内ルールが差別的だとして批判され、炎上したケースをご紹介します。大型家電量販店Bは、働く外国人従業員のマナーが良くないと社内ルールを厳しく徹底したつもりでしたが、外国人差別だと炎上してしまいました。Twitter上では大手企業が労働基準法に反していると、話題になっていました。同じような炎上にあわないためにも、原因と対策について知っていきましょう。
外国籍従業員を対象としたルールが批判され炎上
2018年5月某日、大型家電量販店Bは社内ルールとして次のようなことを示しました。
外国籍メンバーは、入店後に母国語での会話は禁止
※休憩中やロッカーでの会話も母国語は禁止です。日本語を使い、接客のため訓練してください。
大型家電量販店Bが打ち出した今回のルールの目的は、
「外国籍メンバー同士で勝手に休憩するのを辞めてほしいため」
「売り場で母国語でのおしゃべりを無くし、お客様にご迷惑がかからないようにするため」
「常に丁寧な日本語を意識して、お客様にわかりやすい言葉で接客してほしいため」
など、さまざまな思いのもと作られたようでした。しかし、ルールを見たネットユーザーたちは、
「接客中ならまだしも、休憩中も禁止とかどう考えても差別だし、法律違反!」
「これ、一番ダメな人種差別のルールじゃん。厳しく処罰を課さないとダメ」
「外国人に限って母国語の使用を禁止している…。完全に違法だわ!周知します」
などと、人種差別的なルールになっていると批判が殺到し、炎上してしまいました。
炎上参加者の中には賛同意見も
差別的な意見だと批判が出ている一方で、大型家電量販店Bのルールに賛同するネットユーザーもいました。
「母国語の禁止で、日本語が早く上達するなら全然ありだと思う」
「私語禁止などの注意を、何度言っても直らなかったからこういう事態になったんだと思うけど…」
「売り場でぺちゃくちゃ喋る店員がいたら、日本語であろうがなかろうが不快に思うお客は多いし、このルールは良いと思う」
ただ、拡散されている情報は批判的な言葉ばかりで、ポジティブな意見はかき消されてしまっている状態だったと言えます。
炎上した2つの原因
原因1:労働基準法に違反?と議論されていたため
外国籍従業員に向けたルールが、労働基準法に違反していのではないかと議論され、炎上してしまいました。
今回大型家電量販店Bが決めたルールには「休憩中やロッカーでの会話も母国語は禁止」といった内容が記されていたのです。論点になったのは「休憩時間も言語制限がある点」でした。労働基準法で休憩時間は次のように定められています。
1. 労働時間の途中に置かれた、労働者が権利として労働から離れることを保障された時間をいいます。
2. 労働者には、施設管理の必要や職場規律の維持のために必要な限度での例外を除き、休憩時間の自由利用が保障されています。
ネット上では量販店Bのルールで定められていた「休憩時間の言語制限」について、「施設管理の必要や職場規律の維持のためではないため、おかしいのではないか」といった批判的な意見が多数みうけられました。
原因2:外国籍の方のみを対象にしていたため
大型家電量販店Bが定めたルールが、外国籍の方のみを対象にしていたため、炎上してしまいました。
外国籍従業員のみに向けられたルールに対し、ネットユーザーたちは
「外国籍だからといって、全員マナーが悪いみたいな書き方には納得がいかない」
「日本人以外をぞんざいに扱っているようにしか見えない」
などと、大々的に「外国籍メンバーのみが対象」と表現していたことに、批判が殺到していました。
公式発表・謝罪はなし
今回の炎上に関して、大手家電量販店Bからの公式発表や謝罪はありませんでした。元量販店B店員だと話すユーザーの間では
「こういった突発的な決まりは店舗独自のもの」
「売り場責任者とか、店長が勝手に決めたんだと思うけど…」
といった意見がありました。ただ、「どのようなカタチであれ、発信された情報には企業全体で責任を追うべきだ」といった声が相次ぎ、炎上はヒートアップしていました。
差別問題による炎上は多い?3つの事例
2018年にはいってから、差別問題で炎上する事例が多く起きています。なかでも、女性や性に関する差別問題が炎上しやすい傾向となっています。次の3記事は差別が原因で炎上した事例です。
▼珍しい事例です。法人の採用活動方法が差別的だと告発され炎上!
▼珍しい事例です。性に関する内容をネタにして炎上!
▼女性差別で炎上した事例をまとめています。
企業が炎上対策できる3つの方法
方法1:何が差別表現に当たるか知っておく
時代の変化に合わせて、何が差別表現に当たるか、学び続けることが重要です。
差別表現はダメだと思っていても、何が差別表現に当たるのか多くのパターンを知っておかなければ対策できません。今何が差別表現とされているのか、どのような言葉を使うと差別表現になってしまうのか、学び直す必要があります。
具体的な方法としては、「ネット用語の学び直し」「差別的な問題で炎上した事例を知る」のが得策です。特に「ネット用語の学び直し」は効果的でしょう。新しくできた用語が、ネガティブな意味か調べたり、ネガティブ用語だった場合どれくらい危険性があるか学んだりするだけでも、炎上を未然に防ぐ第一歩となります。
方法2:現場の独断でルールを決めないようにする
責任の所在がわからないまま、ルールを決めるのはやめましょう。
ルールを決めるときは、誰がどのような責任で定めるか、レピュテーションリスク(企業評価に関わるリスク)をはらんでいないかなど、責任の所在とデジタルリスクを考えるとスムーズに作れ、炎上しにくいものとなります。
今回の炎上を企業側の視点で見た場合、「外国籍メンバーを対象にしたルール」が店舗独自で勝手に決められたものなのか、会社全体で決めたものなのかによって、炎上後の対策や対応方法は大きく変わってくるでしょう。問題があるのではないかと指摘されたり、炎上になったりしたときに、責任の所在がはっきりしているかどうかは炎上対策において重要なポイントとなります。
方法3:ガイドラインがあるからと甘く見ない
ガイドラインを定めたからと言って、炎上が確実に食い止められるわけではないため、注意が必要です。
ガイドラインとはSNS運用で企業が守る指針を定めたものです。通称「ソーシャルメディアポリシー」とも呼ばれています。ガイドラインは、SNS運用の目的・ユーザーに対する対応方法・削除/禁止投稿の基準・炎上になってしまったときの対策方法など、ソーシャルメディアにおけるさまざまな指針を決めています。ガイドラインを定めることで、ユーザー対応や発信情報にブレがなくなり、運営が安定すると考えられています。
ただ、2017年終わりから2018年5月ごろにかけて、ガイドライン(ソーシャルメディアポリシー)を定めているのにも関わらず、炎上する法人が跡を絶ちません。理由は、定められたガイドラインの項目が何を指しているか不明瞭になっているためだと考えられます。ガイドラインを定めたあとは定期的に内容を見直し、決めた項目が何を指しているのか確認しておく必要があります。
レピュ研では、最新炎上事例データをもとにして、炎上予防セミナーの開催や、炎上ガイドライン(ソーシャルメディアポリシー)の作り方や注意点の情報配信をしています。デジタルリスクでお悩みという方は、お気軽にお問い合わせください。