「ソーシャルメディアポリシー作りに大切な10の項目」「ソーシャルメディアポリシー作りで参考にしたい11の企業事例」ついて、炎上対策の専門家としてご紹介します。
ソーシャルメディアポリシーは企業がソーシャルメディアでユーザーと関わるとき、トラブルを無くしたりネット炎上のリスクを防いだりと、さまざまなメリットをもたらします。ただ、どうやって作ったらいいか分からなかったり、作ったものが正しいか判断できなかったりと、多くの企業が作り方や運用方法に悩みを抱えているのが事実です。
そこで今回は、正しいソーシャルメディアポリシーの作り方から、導入している企業事例まで一挙にご紹介します。作り方が分からないと困っている方や、炎上対策の1つとして作成を検討している方は必見です。ぜひ一緒に自社に合ったソーシャルメディアポリシーを作り上げていきましょう。
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目次
ソーシャルメディアポリシーとは
ソーシャルメディアポリシーとは、従業員がソーシャルメディアを使うときに守るべき社内規程のことです。
そもそもソーシャルメディアとは、誰もが参加できる情報発信者と受信者がつながる媒体のことを指します。「ソーシャルメディアポリシーを決める」ということは、従業員および関係者にソーシャルメディアの使い方にルールや決まりを設けるのと同意義となります。
ソーシャルメディアの一覧
SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)はソーシャルメディア内におけるサービスの1種にすぎません。ソーシャルメディアポリシーを定めるときの範囲となる媒体をまとめました。
カテゴリ | 主なサービス |
---|---|
電子掲示板 | 2ちゃんねる(2018年8月現在は5ちゃんねる)等 |
ブログ | アメーバブログ/livedoor blog/はてなブログ/Seesaaブログ/WordPress/ |
ナレッジコミュニティ(集合知) | wiki/ウィキペディア日本語版/NAVERまとめ |
ソーシャルブックマーク | はてなブックマーク |
ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS) | mixi/GREE/Facebook/Twitter/Instagram |
画像や動画の共有サイト | youtube/ニコニコ動画 |
ライブストリーミング配信サイト | youtube Live/ニコニコ生放送/twitter ライブ配信 |
ソーシャルメディアポリシーの歴史
ソーシャルメディアポリシーが企業へ本格的に導入されるようになったのは、2013年8月のネット炎上が原因です。
2013年8月某宅配ピザ店のアルバイト店員が、勤め先である店内の床に寝そべったり冷蔵庫に体を入れたりするなど、不衛生な画像をSNSに投稿し炎上したことが始まりです。社会的信用を失ってしまった運営会社は、最後まで信用を取り戻せず破産してしまいました。
過去の失敗を繰り返さないために、ソーシャルメディアポリシーはできたのです。2018年現在では、多くの企業が公式サイト上でソーシャルメディアポリシーの存在を明らかにしています。
ポリシーとガイドラインの違い
「ソーシャルメディアポリシー」と「ソーシャルメディアガイドライン」は全く違うため注意が必要です。
ソーシャルメディアポリシー | ソーシャルメディア上におけるルールを定め、必ず実行する(従う)原則のこと |
---|---|
ソーシャルメディアガイドライン | ソーシャルメディア上で守ることが好ましいとされる方針・指針のこと |
企業の中には、ポリシーとガイドラインを同じ意味だととらえているところもありますが、別物のためどちらを決めるかハッキリしておきましょう。なお、ソーシャルメディアポリシーとソーシャルメディアガイドライン、どちらも決めている企業もあります。
ソーシャルメディアポリシーの2つの役割とは
ソーシャルメディアポリシーには2つ役割があります。企業の従業員や関係者向けのものと、外部・第三者ユーザー向けのものです。作るソーシャルメディアポリシーが、誰に向けたルールなのか理解しておきましょう。
役割1:企業の従業員や関係者向けポリシー
企業としての、投稿の質を担保するための役割が1つ目の目的です。
従業員が個人でSNSをはじめとしたソーシャルメディアを使うとき、企業側ですべての投稿をチェックできません。そのため、個人でSNSを含むソーシャルメディアを使うとき、内容や注意点などを企業側で取り決めておくことが大切です。
また企業でSNSなどの公式アカウントを使うときも、決まりがなければ担当者が自己判断で投稿するしかありません。従業員や組織関係者向けにソーシャルメディアポリシーを作り、投稿に一定のクオリティ・基準値を設けることが重要です。
役割2:外部・第三者ユーザー向けポリシー
企業側の方針・指針を理解してもらい、外部・第三者ユーザーとのトラブルを未然に防ぐ役割が2つ目の目的です。
企業側にとっては問題ない行動であっても、ユーザーが不適切に感じて拡散されれば、炎上になるときがあります。不特定多数の人に見られていることを意識して、公式アカウントの運用方法や投稿内容、ユーザーへの返信対応などを企業側で取り決めておくと、トラブルを未然に防ぐことができます。
例えば、Twitterでフォローしてくれたユーザーをフォローし返す「フォローバック」をおこなっていた企業が、急にフォローバックしなくなったらどうでしょう。企業側で取り決めた内容であっても、外部に何も知らせていなければ、フォローバックしなくなったことに不快感を表すユーザーがいるかもしれません。「外部機関・ユーザーに対しフォローはしない」と記載されたソーシャルメディアポリシーを公開して企業の方針を知ってもらい、ユーザーとのトラブルを未然に防ぐことが重要です。
ソーシャルメディアポリシーで決めておきたい2つの軸とは
企業がソーシャルメディアポリシー作成において重要な軸は2つあります。「炎上を未然に防ぐ方法」「万が一炎上が起きたときの対策法」です。炎上する前と後で、ソーシャルメディアポリシーは大きな存在感をもたらしてくれます。
軸1:炎上を未然に防ぐ方法を決める
1つ目の軸は、ソーシャルメディアごとの役割や使い方・リスクを理解し、企業への脅威を知るための情報管理方法について決めておきましょう。
ソーシャルメディアとは何か、どんなリスクが潜んでいるのか、過去の炎上事例から学んだり、自身でソーシャルメディアを体験したりして、ネット炎上の歴史と対策方法について深く知る必要があります。
炎上を未然に防ぐための有効的な対策方法は「ネット監視」です。企業にとって脅威となる投稿内容や監視対象を、ソーシャルメディアポリシーによってあらかじめ定め、定期的に監視して情報管理するフローを決めておきましょう。
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軸2:万が一炎上が起きたときの対策法を決める
2つ目の軸は、万が一の炎上が起きたときの対策・対応フローについて決めておきましょう。
炎上が起きてしまったときに求められることは、すべての対応に整合性がとれていることです。対応の仕方が次々に変わってしまうと「信憑性がない・誠実さに欠ける」などとユーザーに疑念を抱かせてしまいます。炎上が起きたことを誰に周知するのか、その後の対応はどうしていくのか、など炎上が起きたときのフローをあらかじめ決めておく必要があります。
例えば「ユーザーからご指摘が入ったときはどこの部署が対応するのか」「従業員が不適切な写真を投稿して炎上してしまったときは、原因となった投稿は削除するのか」など、細かいところまで対策・対応フローを決めておく必要があります。
ソーシャルメディアポリシーに入れておきたい10項目
ソーシャルメディアポリシーを作るときの項目決めは、過去に起きたネット事件や情報漏えい、知識不足からくる違反行為などがもとになっています。過去の事例をもとにして、ソーシャルメディアポリシーに入れておくべき10の必須項目をご紹介します。
項目No. | 大項目 | 解説 |
---|---|---|
1 | 個人情報保護法とプライバシーの権利 | 顧客(消費者)の個人情報を使ったり、個人情報の収集や保管をするときは、個人情報保護法やプライバシー権を守ることを記します。どんな項目が個人情報にあてはまるのか、プライバシーとはどんなことを指すのか、企業としてあらためて知ることが重要です。 |
2 | 機密事項や知的財産権の保護 | 口外してはいけない企業情報を記します。第三者に漏らしたり、ネット上に公表したりするのを禁止にできます。主に知的財産権に関する、創作物や技術・名称などの価値や権利を保証するものが対象です。 |
3 | 著作権違反の回避 | 企業の著作物を第三者が使うことを許し、企業が外部の著作物を使うときの方法を記します。企業内従業員が第三者に該当するのか、どういった条件で企業内の著作物を使うことができるのかなど、明らかにしておく必要があります。 |
4 | 商標権違反の回避 | 外部の商標を使うときの決まりを明確に記します。商標とは、「誰が作った商品なのか」「どこが提供しているサービスなのか」を表す印のことです。 外部の商標を「少しくらいなら…」と無断で使った結果、炎上や逮捕といったケースもあるため注意が必要です。 |
5 | 誹謗中傷の禁止 | どういった内容が誹謗中傷に当たるのか記し、それを禁じます。根拠のない批判と、事実に基づいた批判では、炎上時の対応方法も変わります。社内で誹謗中傷が何に当たるのか認識をすり合わせ、整合性の取れた対策をしましょう。 |
6 | 透明性の保障 | やらせ行為はしないことを記します。ソーシャルメディア上で従業員が消費者や顧客になりすまし、口コミやレビューをして炎上した事例があります。 ネットでは「やらせ」「ステルスマーケティング」などと言われ、批判が集中するため注意しましょう。 |
7 | 非難を受ける可能性のある技術利用の制限 | マルウェアやスパイウェアを使ったマーケティングを制限または禁止していることを記します。また関わりある組織・企業とは一切協力しない旨も合わせて書きましょう。これらはメールアカウントやネットバンキングのログイン情報などを盗み出すことができ、違法行為とされています。 |
8 | 自己責任の明確化 | 発言に対する責任の所在がどこにあるか記します。例えば従業員のSNSに企業名が入っていたとき、発言の責任がどこにあるのか明確にしておきましょう。 SNSのプロフィール文に企業名を書くときは、所属する企業とは一切関係ないことを表明するなど、原則を徹底しておきましょう。 |
9 | 傾聴の態度 | ソーシャルメディアを通じて有益な情報交換したり、第三者の言葉に耳をかたむけたりして、サービスや品質向上につながることを記します。発信するだけでなく、ユーザーの声に耳をかたむける行為を大切にしていることを表現することが重要です。 |
10 | インターネット上の特性の理解 | 一度ネット上に出た情報は、多くのユーザーに伝わる可能性があり、取り消すことができないものであると記します。ネット上の表現や発言には細心の注意をはらい、慎重な態度でのぞんでいると書きましょう。従業員や関係者はもちろんのこと、外部・第三者ユーザーに対して示すことが重要です。 |
ソーシャルメディアポリシー作りで参考にしたい11の企業事例
実際にソーシャルメディアポリシーまたは、ソーシャルメディアガイドラインを作り、ネット上に公開している企業があります。「どんな内容を盛り込めばいいのか分からない!」「作ってみたけど本当にこれで大丈夫なのか心配!」という場合はぜひ参考にしてみましょう。
事例1:日本コカ・コーラ株式会社
日本コカ・コーラ株式会社は「ソーシャルメディアガイドライン」という名称で、従業員や関係者に対してソーシャルメディアの行動指針を定めています。日本コカ・コーラ社が掲げる基本理念や5つの基本的価値観など、自社のソーシャルメディアに関わる全ての人へ向けた内容となっており、ソーシャルメディアポリシーを作る上では、とても参考になります。
事例2:シャープエレクトロニクスマーケティング株式会社
シャープ株式会社の公式Twitterアカウントにおけるコミュニティ・ガイドラインです。シャープ株式会社の公式Twitterは、2018年7月現在47万人ものフォロワーを抱える巨大な影響力をもった企業アカウントです。コミュニティ・ガイドラインの内容は至ってシンプルで、ユーザーへの対応方法や注意・禁止事項などが箇条書きにまとめられています。
シャープエレクトロニクスマーケティング株式会社 コミュニティ・ガイドライン
事例3:株式会社朝日新聞社
株式会社朝日新聞社のソーシャルメディア・ガイドラインでは、自社に所属する記者に対する行動指針と、ソーシャルメディア上で発言する責任の所在について記されています。内容はとてもシンプルで、ソーシャルメディア上の行動は記者個人の責任に委ねる旨が書かれています。
事例4:富士フィルム株式会社
富士フイルム株式会社ではソーシャルメディアポリシーにおいて「企業行動憲章」と「行動規範」を設け、従業員に対するルールをしっかりと定めています。また、ソーシャルメディアを使うユーザーに向けた注意書き等も記されています。
事例5:シックス・アパート株式会社
シックス・アパート株式会社は「インターネット上のウェブサイト構築・管理のための技術の開発と、関連する製品・サービスやコンサルテーションの提供」を行っている企業です。※主な事業内容参照
シックス・アパート株式会社のソーシャルメディア利用ガイドラインでは、ソーシャルメディアで投稿するときのガイドラインや、従業員が社名をプロフィールに入れた場合の行動指針などが書かれています。
シックス・アパート株式会社 ソーシャルメディア利用ガイドライン
事例6:NECグループ
NECグループのソーシャルメディアポリシーでは、「情報発信の責任」「適切な情報共有」「ソーシャルメディア上の規程」などが盛り込まれています。ソーシャルメディアポリシーとは別にガイドラインも定めているため、作るときはぜひ見ておきましょう。
事例7:学校法人東海大学
学校法人東海大学では、ソーシャルメディアのガイドラインとして「学生を対象としたもの」「学園に所属する関係者全てを対象としたもの」の2点を作り分けて公式Webサイトに掲載しています。ターゲット別に作られたソーシャルメディアガイドラインは、とても読みやすいデザインとなっています。
事例8:株式会社サンリオ
株式会社サンリオのソーシャルメディアポリシーでは行動原則のほかに、ユーザー対応や削除事由、公式アカウントの一覧が記されています。内容に細かな具体性はありませんが、とてもシンプルでユーザーにも親しみやすい作りになっています。
事例9:資生堂グループ
資生堂グループのソーシャルメディアポリシーでは、ソーシャルメディアの目的・心構え・全社員へ向けたルールなどが書かれています。他企業に比べて、ソーシャルメディア参加への明確な目的が記されており、参加目的でポリシー作りに悩んでいる方は必見です。
事例10:株式会社ユーキャン
株式会社ユーキャンのソーシャルメディアポリシーでは、従業員および関係者へ向けた内容が主に書かれています。他企業にはあまりない特徴として「株式会社ユーキャンと契約中の方」へ向けた行動指針が記されています。
事例11:大和ハウス工業株式会社
大和ハウス工業株式会社のソーシャルメディアポリシーでは、姿勢・行動・基本マナーを遵守する旨が記されています。また、公式アカウントがユーザーに反応するときの条件や行動指針も盛り込まれています。
ソーシャルメディアポリシーの作り方まとめ
ソーシャルメディアポリシーを作るとき、盛り込んでおきたい項目があることや、企業ごとに違いがあることを知っていただけたと思います。「ソーシャルメディアポリシーをこれから作り始めたい」「今すでにあるソーシャルメディアポリシーを作り変えたい」と思っている方は、ぜひ参考にしてくださいね。
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