炎上事例をもとに、原因と対策について紹介します。今回は不適切なテレビCMで、炎上した化粧品会社のケースを解説します。
炎上後、某化粧品会社の商品を買わないようにする不買運動もおこっています。同じような失敗や炎上にならないためにも、原因と対策について知っていきましょう
容姿によって態度を変える「差別表現」CMに批判の声
某化粧品会社「L社」のCMに不適切な表現があったとしてネットで話題となり、テレビで取り上げられるほど大きな炎上になりました。炎上となったCMは、男性と女性が登場するのですが、容姿によって登場人物が顔色を変えるといった、差別的な表現をしたものでした。誰がみても差別だと分かるそのCMには、批判が殺到してしまいます。
また、CMを作っていたL社は設立が2016年だったため、ネット上では「話題性作りの炎上商法だ」などと思う人も多かったようです。CMの内容や炎上商法を狙った広告スタイルなどから、某化粧品会社L社のイメージは低下し、不買運動を勧める人も出てきてしまう事態となっています。
反感を買った3つの原因
原因1:女性への差別
CMでは、L社の化粧品を使っている女性Aと、化粧品を使っていない女性Bを起用しています。CMでは女性Bと男性が会話をしていますが、途中から現れる女性Aに目を奪われてしまいます。
「化粧品を使っていない女性Bでも、L社の化粧品を使ってもらえれば、女性Aのように美しくなることができます」
といった意図を伝えたかったようです。ただ、登場した女性Bは一般的な方で、女性Aは人気アイドルでした。ネットユーザーからは
「一般の人とアイドルを比べる意味がわからない」
「女性はブスでなくても美人に負ける。アイドルのような美人だけが男性に相手にされるのか」
「普通の女性がアイドルに負ける姿が露骨すぎて観てられない」
など、CMの女性演出を不愉快に思う人が多くいました。
原因2:男性への差別
CMには女性と会話する男性役者が入れ替わる、2パターンがありました。見た目の違う男性Cと男性Dが登場します。男性Cはイケメン役者、男性Dはブサイク役者として、SNSでは話題となりました。CMに登場する女性は、イケメン男性Cには笑顔で接し、ブサイク男性Dには嫌な顔をして怯えるような仕草をしています。このことからネットでは
「ブサイクな男は怖がられる対象なのか」
「これ男女逆転したら炎上どころじゃすまないだろうな。だからって男性が傷つかないわけではないんですよ」
など、CM内の男性の演出を不愉快に思う人が多くいました。
原因3:倫理が欠けている演出
CMでは、女性が落とした物を男性が拾ってあげるという演出がありました。イケメン男性Cに親切にされた女性は、笑顔で会釈します。しかし、ブサイク男性Dが親切にしたときには、明らかに嫌な顔をして、怯えるような態度をとります。これに対して
「人の親切心を踏みにじるようなCMを流すのはどうなのか」
「親切にされたら、素直に感謝するべきだろう。見た目で感謝をしないような、差別的演出は倫理にかけている」
炎上商法とは?
新しく発売する商品や、売り上げが伸び悩んでいる商品を、どうにかして消費者に知ってもらいたいと思うのが企業です。その中で生まれたのが炎上商法です。炎上商法とは、わざと反感を買うような内容の広告打ちだし、それに怒った消費者の、怒りの感情を逆手に使いマーケティングを行うことを言います。
炎上はときに話題作りとして起用される
炎上商法が成功した例で、ルーマニアのチョコレート菓子「ROM」があります。
ルーマニアのチョコレート菓子「ROM」は、パッケージに自国ルーマニアの国旗をモチーフとしたデザインを採用し、多くの国民に愛されてきました。しかし、年がたつにつれて徐々に売れ行きが乏しくなってゆきました。そこでROMは、パッケージデザインを自国の国旗デザインから、アメリカの国旗デザインに変更するとゆう大胆なパッケージ変更を行ったのです。それが、ルーマニア国民の愛国心に火が付き、ネットでは「元のルーマニア国旗のデザインに戻せ」という大規模な抗議行動が起きました。
その後ROMは「パッケージ変更はジョークでした!でも、ルーマニア人の愛国心の再発見を国民みんなで喜びましょう」と打ち出し、一連の炎上を鎮火させました。結果、ROMはルーマニアでのチョコレート菓子のマーケットリーダーになり、市場では、圧倒的な数字である20%ものシェアを獲得しました。(1)
炎上商法の落とし穴
炎上商法は、人の怒りの感情を逆手に使う商法ですが、成功するのはほんの一部にすぎません。元々マーケティングの基本は、消費者に自社の商品を好きになってもらうことにあります。炎上商法はその真逆の存在であると言えるでしょう。炎上商法は、自社の商品を知ってもらいたいと思う気持ちが強すぎで、消費者の気持ちを一切無視してしまっています。ビジネスとは、消費者であるお客様がいてからこそ成り立つものではないでしょうか。
不買運動とは?
今と昔の不買運動の違い
不買運動とは、特定の商品を対象にし、その商品を大勢の人で買うことを避ける行為のことを言います。不買運動により、企業は一定の顧客を失うことになり、結果的に企業を攻撃することができます。
不買運動を成功させるには、大勢の人が一致団結する必要があります。昔は地域の呼びかけなどで広まっていたに過ぎなかった不買運動も、ネットの普及率が上がったことで、簡単に多くの人に呼び掛けることができるようになりました。
SNSを使った不買運動とは
ツイッターでは今、ハッシュタグという検索機能をつけて不買運動を拡散する傾向があります。「#○○不買運動」「#○○買わないで」などを、不買運動になった理由と一緒に書き込み、Twitterに投稿します。すると、ハッシュタグから同じ意見の人を簡単に探すことができ、ハッシュタグを使うことで仲間意識ができてきます。これにより、ネット上とはいえ一致団結した不買運動に発展する傾向があるのです。
消費者は広告に敏感になった?
2013年ごろから、CMを含む広告の不適切表現が原因の炎上が出はじめてきました。また、レピュ研調べでは2017年にはいり、CMの不適切表現が原因の炎上が増えている傾向にあります。消費者はCMに敏感になってしまったのでしょうか。
化粧品会社の不適切広告で炎上した企業を分析した記事もかいています。ぜひ合わせてお読みください。
原因は、SNSの普及により消費者がCMを流している会社に意見を言いやすくなったこと、1消費者の声に多くの人が賛同しやすい環境をSNSが作り出していることにあると思います。
テレビで流れているCMや、ネット上にある広告の内容が不愉快だと感じれば、すぐにSNSに不満を投稿することができます。またその投稿を見た人たちが不満に同調し、拡散していきます。こうした連鎖がネット炎上につながり、問題が目立つようになったのではないでしょうか。
企業ができること
賛否両論の表現はさける
今回炎上してしまった企業は「CMで印象をつけ他社との差別化を図ったものだった」とコメントしています。しかし、結果的に多くの人からの反感を買い、炎上してしまいました。
エッジを効かせたコンテンツと、賛否両論のあるコンテンツは似ているようで違います。メッセージ性があったり、見る者の心に残ったり、突き抜けた発想のコンテンツを提供することで、炎上商法ではなくポジティブな意見の拡散を狙っていきましょう。
リスクマネジメントをする
リスクマネジメントとは、あらかじめ起こりうるリスクを総合的に分析しておくことです。炎上が起こってから鎮火させるよりも、炎上が起こらないように予防することが重要です。例えば、リスクマネジメントを行うことで、不備があったコンテンツを市場に出回る前に見つけることができるでしょう。
リスクマネジメントを行う上で、重要なのが知識です。レピュ研では、ネット炎上を日々分析しています。豊富な知識でネット炎上のリスクマネジメントを行うことができるので、SNSの使い方や、ネット上のお悩みなどあれば、ぜひお気軽にご相談下さいね。
■炎上に参加する人たちの正体を詳しく分析しています。
>炎上に参加する人たちの正体とは?行動パターンと心理
■SNSで炎上してしまったときの対処とは?
>SNS炎上の流れと炎上したあとの3つの対策方法
■10代の若い女性を中心に人気なインスタグラムの炎上事例をまとめました
>他のSNS炎上とは違う!インスタグラムの炎上する4つの事例
(1)AdGang「カンヌ2部門受賞の超ハイレベルな“炎上マーケティング”」