本レポートはレピュ研を運営する株式会社ジールコミュニケーションズが、独自の調査からデジタルリスクに値すると判断した事例を分析したレポートとなっております。2023年毎月にわたって、特に目立っていたまたは特徴的な炎上事例とその発生要因等を解説し、どのような傾向・トレンドがみられるのかを追っていきます。企業または学校におけるデジタルリスクの管理やトレンドは悪党に活用していただくことを目的として毎月発表しております。2月は「迷惑動画」による炎上について解説してまいります。
目次
2023年2月までの炎上発生件数推移
ジールコミュニケーションズの独自調査・判定より、2023年1月の炎上件数は25件となりました。炎上タイプの内訳は下グラフの通りです。
依然として2022年・2023年1月の平均炎上発生数とあまり変わらない件数に着地しました。炎上の内訳も目立った変化はなく、「個人」による炎上タイプが割合を大きく締めています。個人の炎上というと法人の炎上とはあまり関連性がないと思われがちですが、炎上の発生地や現場となったために、ブランド毀損を被ってしまう「炎上被害企業」が続出しています。昨今において、炎上とは発生させてしまうリスクを防ぐだけではなく、「もしも炎上に巻き込まれてしまったリスクも考慮しなければならなくなってきています。
カラオケ店の消毒用スプレーとライターで火炎放射をする動画が炎上
カラオケボックスの店内で、店内備品の消毒用スプレーを用いて火炎放射を行う動画が迷惑行為として炎上しました。
実際に迷惑行為が行われたのは、あるカラオケチェーン店のボックス内です。当店を訪れた男子学生が、備え付けのアルコールスプレーと手持ちのライターを用いて火柱を上げるなどの悪戯行為をおこない、その様子をInstagramのストーリーに投稿しました。Instagramのストーリーは24時間で消えてしまうものですが、数名の炎上系インフルエンサーの目に留まり拡散・炎上する流れとなりました。当男子学生は通っている高校や年齢などの個人情報が拡散されてしまう事態となります。
また、迷惑動画の発生場所となった炎上被害企業は、当迷惑動画を確認後に消毒用スプレーの設置場所を移動するなど、対策を取らざるを得なくなりました。
線路内に立ち入り寝転ぶ動画が炎上
線路内に立ち入って寝転ぶ動画が炎上しています。
問題となったのは、ある男子学生がInstagramのストーリーに投稿した1本の動画でした。線路で寝転んでポーズをとる等、大変危険な行為をが収められていました。この動画が、炎上系のアカウントに#特定希望というハッシュタグとともに拡散されると、あっという間に男子学生は個人情報を拡散されてしまい、実名の乗ったまとめ記事が複数作成されてしまう事態となりました。メディアに取り上げられることはありませんでしたが、デジタルタトゥーとして男子学生の将来に重くのしかかる結果となってしまいました。
飲食店で舐めた食器を戻す動画が炎上
ある男子学生が、飲食店の食器を舐めまわした後に戻す不衛生な動画が炎上しました。
現場となったのは、ある飲食チェーン店です。店舗に来店した男子学生が、店内にある割り箸などの食器を舐めまわしあまつさえ戻すという不衛生な動画をInstagramのストーリーに投稿しました。この動画を複数名の炎上系アカウントやインフルエンサーが拡散。2日のうちに個人名・学校名・地域が特定されてしまいました。
この不衛生な行為にたいして店舗を運営する企業側は、HP上にニュースリリースを掲載。刑事と民事の両面から厳正な対応をとっていくことを公表しました。
【傾向と分析】2023年1月〜3月(3/20現在)の迷惑動画発生状況について
では、2023年における迷惑動画の投稿件数や傾向はどのようになっているのでしょうか?ジールコミュニケーションズでは、迷惑動画を独自の調査でピックアップしリサーチ・分析をおこないました。炎上に発展する前の事例や拡散による悪影響が少なかった事例もリストアップしているため、先述の炎上発生件数グラフとはリンクしておりませんので予めご了承ください。
2023年1月〜3月(3/20現在)の迷惑動画発生件数の推移
2023年1月〜3月20日現在における迷惑動画の発生件数は約90件ほどとなっております。迷惑動画の発生件数の推移は下記グラフの通りとなっております。
解説①:どうして2月の迷惑動画発生件数がピークになったの?
2月上旬の迷惑動画発生件数がピークとなった背景には「迷惑動画炎上の一時的トレンド化」があげられます。2023年の迷惑動画が社会問題的に扱われるようになったきっかけは、とある飲食店での不衛生動画の拡散でした。当該動画は1月19日に投稿されたものですが、1月29日に炎上を取り扱うトップインフルエンサーに告発され、瞬く間に拡散され炎上しました。このインフルエンサーは炎上情報を発信することでファンユーザーを増やす活動をおこなっています。
トップインフルエンサーが先陣を切って迷惑動画でインプレッション数を稼ぐと、これにならったその他のユーザー達がこぞって迷惑動画炎上を取り扱うようになります。結果として、迷惑動画の情報発信が炎上系インフルエンサーにとってのトレンドと化し、そのピークが2月上旬だったと推測されます。
2023年1月〜3月(3/20現在)の迷惑動画 発生男女比
2023年1月〜3月20日現在における迷惑動画投稿の男女比は下記グラフの結果となりました。なお、この結果は動画内で迷惑行為をおこなった本人の身体的性別から統計をとったものとなっております。その他は、人物が映っていないために性別の判断ができなかった事例になります。
解説②:どうして男性の割合が多いの?
迷惑行為・迷惑動画投稿をおこなう人物像に男性が多い割合として、弊社の分析チームでは女性より男性のほうが自己顕示欲≒自己愛(ナルシシズム)が強い傾向にあるためと考えております。
米ニューヨーク州立大学バッファロー校の経営管理大学院がおこなった研究では、男性と女性の自己愛の差を「リーダーシップ」「自己顕示欲」「特権思想」の3つの視点から考察・分析しています。自己顕示欲が強いことはもっともですが、特に強い傾向がみられた「特権思想」…自分が満足するためなら、他の人を利用して構わないといった考え方は、迷惑行為を行なってでも自己アピールを行いたいという迷惑動画投稿の本質との親和性を感じ取ることが出来ます。なお、この研究はあくまで男性にそのような傾向がみられるというもので、すべての男性に当てはまるわけではありません。
出典:US National Library of Medicine National Institutes of Health「Gender differences in narcissism: A meta-analytic review.」
2023年1月〜3月(3/20現在)の迷惑動画 発生地域
2023年1月〜3月20日現在における迷惑動画投稿の発生地域は下記の図の結果となりました。なお、下記の図はリサーチを行った迷惑動画事例91件のうち、発生地域の特定が出来た44件のデータをもとに作成しております。
解説③:どうして関東圏と西日本の発生率が高いの?
弊社の分析チームでは、各地域の治安と迷惑動画の発生率に親和性があるのではないかと考察しております。下記は各地域の治安を可視化して迷惑動画の発生件数別に彩色した分布図になります。左下にいくほど治安が悪く、逆に右上にあるほど治安はよくなります。
この分布図をみていくと、治安の良くないとされている左下の範囲に、色のついた地域(迷惑動画が発生した地域)が密集していることが確認できます。この分布図はあくまで目安のため、一概に迷惑動画が多く発生している=治安が悪いというわけではありませんが、治安と迷惑動画の発生地域に一定の関連性がみてとれるのではないかと思われます。
事例の分析で、炎上リスクのノウハウを蓄積
ジールコミュニケーションズが開催している無料のウェビナーでは、今回ご紹介した炎上事例の他にも、様々な事例をさらに深掘りする形で解説しております。ウェビナー中の炎上事例解説では、データに基づいた炎上トレンドや、具体的に注意すべき投稿内容についてお伝えしております。
ぜひ、弊社ウェビナーにご参加の上、今後のSNSリスク対策にお役立ていただければ幸いです。