本記事では、企業としてレピュテーショナルリスクを回避するためにはどのようなSNS教育が効果的なのか解説します。
レピュテーショナルリスクとは企業の“評判”に関わるリスク全般を指しますが、このレピュテーショナルリスクとSNSは密接な関係にあると言われています。自社に所属する従業員のSNSの利用モラルが足りないことで、企業イメージに直結するようなトラブルに発展してしまうほか、企業や商品、サービスへの不信感、違和感、怒りなどマイナスな意見をSNSに投稿されることでマイナスイメージを持たれてしまうことも多いです。
今回はこのようなSNSから発生するレピュテーショナルリスクを回避するためにはどのようなSNS教育が有効なのか想定される事例をもとに解説します。
目次
SNSから発生するレピュテーショナルリスクとは?
まず、SNSから発生するレピュテーショナルリスクにはどのようなものがあるのか、代表的なリスクを4つご紹介します。
従業員による倫理、モラルに欠ける不適切なSNS投稿
いわゆるバイトテロと呼ばれるような不適切なSNS投稿はレピュテーショナルリスクとしてイメージしやすいと思います。その他にも他社への誹謗中傷や差別的表現、公共の場での迷惑行為を投稿するなどさまざまなケースが想定されます。勤務先が特定されない限り企業のリスクに発展することはほとんどありませんが、過去の投稿や友人とのやり取り、写り込んでしまった情報等から簡単に個人情報が特定されてしまいます。
公式SNSアカウントの運用に対する批判
公式SNSアカウントを保有、運用している場合はその運用方法もレピュテーショナルリスクに直結するため注意が必要です。個人アカウントと異なり、明らかに不適切な投稿でなくても企業イメージや世間からの期待にそぐわない投稿はすぐに炎上等のトラブルに発展してしまいます。ガイドラインやポリシーを遵守した運用を続けるとともに、自社が世間からどのようなイメージを持たれていて、どのような情報発信を期待されているのか分析することが大切です。
SNSによる情報漏洩
SNSからの情報漏洩は故意的なものだけではありません。SNS上のメッセージで相手を間違えてしまったり、複数の相手に送ってしまったりする「誤爆」によるリスクや、ウイルス感染などシステム的な要因のリスクも想定されます。また昨今ではリモートワークが広まったこともあり、勤務時間中のSNS利用に関して危機意識が低くなっていることが危惧されています。リモートワーク中のデスクの写真やリモート会議の様子を写真や動画に撮りSNSに投稿しているユーザーも多く見られ、社外秘情報の漏洩リスクが高まっているといえるでしょう。
SNSへの口コミ、評判投稿
特にレピュテーションに直結する第三者による口コミもSNSと大きな関わりがあります。企業やサービスに対して感じた違和感や不満、怒りなどマイナスな口コミは匿名投稿可能なTwitter等に投稿されやすいほか、各種専門口コミサイトに投稿された過激な口コミもSNS上で拡散されることが多いです。
また顧客や消費者だけでなく、退職者や在職中の社員からも内部事情を告発するような投稿がされることも多いため、退職後もSNSへの投稿を制限しないとレピュテーションの低下につながる恐れがあります。
SNSから発生したレピュテーショナルリスクの事例3選
過去、実際に起こってしまった事例を3つご紹介します。どれもSNSの不適切な利用や対策不足によりレピュテーションの低下につながってしまった事例です。自社に置き換え、しっかりと対策が出来ているか確認してみましょう。
事例①:従業員による不適切なSNS投稿
2021年6月、有名飲食チェーンの従業員がバックヤードでの不衛生、不適切な行為をSNSに投稿して炎上しました。企業側は「お客様に不快な思いをさせた」と謝罪を発表せざるを得ない状況に陥り、レピュテーションに影響を及ぼした事例です。バイトテロは2019年に大流行しその後一時落ち着いていましたが、2021年に入ってから緩やかな増加傾向にあるため改めて注意が必要になってきています。
事例②:企業公式アカウントでの不適切な投稿
2021年4月、ある会社の公式Instagramアカウントで「花嫁修業」と称し、素手でトイレ掃除をする様子を投稿して炎上しました。コロナウイルスが流行している最中だったこともあり、「パワハラではないか」など厳しい意見が集まりました。
これらの意見に対して同社社長は「強制的にやらせているわけではないのでパワハラではないがコロナ禍では不適切だった」と見解を発表しましたが、企業の体質等を疑問視する声は収まらず、レピュテーショナルリスクへと発展してしまった事例です。
事例③:第三者によるSNSへの口コミ投稿
2021年7月、着付け教室に参加したTwitterユーザーが教室で起こった出来事をTwitterに投稿して炎上しました。講師から身だしなみを否定するような言葉で30分程度叱られた、という旨が書かれた投稿には教室を批判するたくさんのリプライが届き、「26,000いいね」「8,000RT」され大きな話題になりました。
その後、同教室で同じような経験をした複数のユーザーからも投稿が相次ぎ、レピュテーションを大きく低下させることになった事例です。
回避のために必要なステップ
ご紹介した事例の中で、1つは発生が懸念される事例があったのではないかと思います。実際にこれらのレピュテーショナルリスクを回避するために、企業としてどのような対策が必要になるのか解説します。
1:リスク、課題を洗い出す
まずは下記のような項目を参考に、現状自社が抱えているリスクや課題点を洗い出す必要があります。このステップは担当部署だけではなく、会社全体を巻き込んで行うことが大切です。広報、 経営企画、リスク管理担当、コンプライアンス担当、SNS関連担当、セキュリティ担当など必要部署を巻き込んであらゆるリスクを把握しましょう。
・自社関連ワードでSNSをモニタリング(社名、商品・サービス名、業界特有のキーワード、有名社員や代表名等)
・従業員に対してSNSの利用状況に関するアンケートを実施
・SNS運用の担当、関連部署に対して抱えている課題やリスク等をヒアリング
・既存の情報セキュリティ、SNS利用・運用などのルールやガイドラインに過不足がないか確認 など
2:SNSに関する各種ルールの見直し(策定)
リスク、課題の洗い出しが終わったら、既存のSNSに関するルールがそのリスクに対応できているか確認しましょう。ルール策定時から社内環境やSNSを取り巻く環境が変化してしまったことで、きちんとルールとして機能していないケースも多いです。実際に炎上等のトラブルが発生してしまった企業でも「ルールはあったが機能していなかった」という事例もあるため、注意が必要です。
またルールがない場合は、レピュテーショナルリスク抑制のための社内体制を構築していく上での「軸」となるルールを決めた上で、次のステップに進むことがおすすめです。
3:対象従業員に向けたSNS教育の実施
ここでようやくSNS教育の実施というフェーズに入ります。SNS教育を実施しても「ただやっただけ」で終わってしまうケースはとても多いため、どんな目的を持って、誰を対象としてSNS教育を行うのか明確にし、適切なプログラムを策定することが大切です。
具体的な従業員向けSNS教育のプログラム策定については、次の記事も参考にしてみてください。
4:SNS上の情報を日々モニタリングする
基本的なリスク抑制のための施策を行った後も、SNS上の情報はモニタリングを継続することが大切です。会社、サービス、商品に対する評判や従業員によるSNS利用状況、公式アカウントへのリアクション等、関連する情報は漏れなく把握し、危険な投稿を発見した際は対応できる準備をしておきましょう。
5:モニタリング結果をルールや教育に反映
前のステップでモニタリングした結果は分析した上で、SNS利用ルールや教育に都度反映していくことで、より効果的な施策実施が可能となります。SNSを取り巻く環境は日々変化しているのに加えて、自社を取り巻くリスクも「新サービスリリース時」「新入社員入社時」など時期によって異なります。その時々のリスクにしっかりと適応できるよう、ブラッシュアップを重ねましょう。
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従業員向けSNS教育における3つのポイント
回避のために必要なステップの3つ目でご紹介した「対象従業員に向けたSNS教育」について詳しく解説します。限られた時間でより効果的な教育を行うためには次の3つのポイントを押さえておくのがおすすめです。
自社のリスクに適応したプログラム
前項の「リスク回避のためのステップ」の中でも解説しましたが、自社のSNSリスクをすべて把握することは必要不可欠です。下記のような方法でリスクを漏れなく洗い出し、SNS教育として今社内に向けて伝えるべき情報とその対象者を決めましょう。
時事的要因、トレンドを押さえたプログラム
SNSのリスクは時事ネタやトレンドなどの外的要因にも大きく左右されるため、社内で把握したリスクだけでなく、外部の情報もしっかりと把握しておく必要があります。特に、SNS上で話題にあがっていたり世間的に騒がれていたりする内容を発信すると良くも悪くも注目を浴びやすく、炎上等のきっかけになりやすいです。SNS教育のプログラムにもこれら外的要因を加味した内容を含むことでより効果を発揮すると考えられます。
一般従業員向けももちろんですが、特に公式アカウントを運用している場合はこれらのリスクが高いため、SNS運用担当者に向けて教育を行う際は必ずプログラム内に含むようにしましょう。
当事者意識を持たせるプログラム
せっかく正しい情報を提供しても、受講者に当事者意識を持たせ、行動の抑制ができないとSNS教育実施の意味がありません。プログラム策定時にはどのような情報を伝えれば当事者意識を持たせることができるのか、受講者目線で考え工夫することが大切です。具体的に次のような内容を含むことでリスクにつながる行動の抑制が期待できます。
・従業員自身に近い環境で実際に起こったSNSトラブルの事例を紹介する
・ルールを破ってトラブルに至った際の具体的な罰則等も説明する
・万が一、炎上等を起こしてしまった際、その後の自身の人生にどのような影響を及ぼすのか解説する
レピュテーショナルリスクを回避するための社内体制を整える
ご紹介した通り、レピュテーショナルリスク回避のためには会社全体で協力し、適切な社内体制を整えることが重要です。レピュ研を運営する株式会社ジールコミュニケーションズでは、企業様をレピュテーショナルリスクからお守りするためのさまざまなソリューションをご提供しております。「現状の社内体制におけるウィークポイントを知りたい」「一通り実施したが内容に不安がある」「社内のリソースだけではすべて網羅することが難しい」など、レピュテーショナルリスクやSNSに関して、少しでも不安なことがありましたら無料でご相談を承りますので、お気軽にご連絡ください。