レピュ研を運営する株式会社ジールコミュニケーションズが、独自の調査により「ネット炎上」として判別したデータをもとに作成したレポートです。先月特に目立っていた炎上事例とその発生要因を解説し、月間を通してどのような傾向、トレンドが見られるのか分析しています。
企業におけるWeb・SNS、及びレピュテーショナルリスクの管理、評価、対策等に活用していただくことを目的として毎月発表している調査レポートです。
1.ホテルが打ち出した旅行プランが炎上
ある有名なリゾートホテルの「ママと息子の初めてのお泊りデート」という宿泊プランが炎上しました。具体的なプランの内容は次のようなものです。
・ママを「キュン」とさせるためのポイントをホテル側が息子にレクチャー
・ママにドリンクを作ってあげる
・お揃いのパジャマで就寝 など
プランの内容や打ち出し方が「気持ちが悪い」と批判の声が多く集まっています。
発生要因とユーザーの意見
多くのユーザーが違和感、嫌悪感を抱いたのは次のようなポイントです。
・「お泊りデート」という言葉のチョイス
・息子(男の子)に対象を限定した点
・ホテル側が母親をキュンとさせるための行為を子供に「レクチャー」するという点
元々このリゾートホテルでは母と娘専用のプランがあり、「母と息子のプランも作ってほしい」という要望に応えて企画されたとのことです。しかしプラン内容がエスコートやデートなど、「家族」ではなく「男女」を連想させるものが多かった点や、母親のために子どもに対して強要させるような内容が多かった点が今回の炎上の原因となりました。
ユーザーの意見の中には「性的搾取」「格が下がった」「残念」などと宿泊プランに対してだけでなく、ホテルの今後にも影響を及ぼしそうな厳しいものも見受けられます。
2.過去の誹謗中傷が明らかになり炎上
SNS上での誹謗中傷をなくすために活動する一般社団法人の代表が、過去に自身のTwitterで誹謗中傷にあたる投稿をしていたことが発覚し炎上しました。
投稿内容は、ある子役を誹謗中傷する人を批判する意見を述べたあと、それをひっくり返して自身も誹謗中傷に便乗する、というTwitterでよく見られるネタでした。「誹謗中傷はやめよう」という意見を持つ人を揶揄しているとも捉えられ、団体の趣旨とは正反対の投稿だったため非難の声が殺到しています。
注視したい2つのポイント
発生の要因は言うまでもなくSNS上での誹謗中傷という不適切な投稿でしたが、この事例で特に注視したいのが「過去の投稿を掘り返されて炎上に発展した」という点と「炎上後の対応が適切ではなかった」という点です。
過去の情報が掘り返されて炎上した
今回炎上したタイミングは、当人がこの団体を立ち上げてすぐのことでした。何か新しい情報を発信したり、企業(団体)として話題になるような出来事があった直後、このように過去の情報を掘り返されてしまうケースは過去に多数発生しています。
炎上後の対応方法がさらに批判された
誹謗中傷の投稿が発覚したあと、当人は謝罪文を発表しました。しかしその発表方法がTwitterのみ、且つテキストとして残らない画像での発表だった点や、自身を否定するTwitterユーザーはブロックしたり、リプライを制限したりする不誠実とも捉えられる対応だったことなどからその対応についても批判され、影響が尾を引く形になっています。
3.学生に送ったメール文が外部に告発されて炎上
ある全寮制の医科大学で教授が全学生に一斉送信で送ったメールが、外部に告発されて炎上しました。この大学では新型コロナウイルスの感染者発生を受け、2週間の自室待機を実施、毎日数分の入浴時間以外の外出を禁止とされていたと言います。さらに食事に関してはコンビニ弁当やカップ麺のみというかなり質素なものだったため、学生が学生課に「牛乳とヨーグルトが欲しい」と連絡したところ、次のようなメールが学生全員に届いたということです。
To:先ほど「牛乳とヨーグルトが欲しい」と電話した学生へ
病気によりこのような物を摂取する必要があるのであれば、その旨改めて連絡しなさい。
そうでなければ、〇〇大を退学して幼稚園に行くことを強く勧めます。
このメール文が学生から告発され、メディアでも取り上げられるほど大きな話題となりました。
企業としての懸念点
この事例は企業として決して正しい行為とは言えない事象がきっかけとなりました。しかし学内、社内メールという閉鎖的な環境で発信された情報が外部に流出、告発される可能性があるという点はどんな企業でもリスクとして認知しておく必要があります。
5月の炎上【傾向と分析】
5月の炎上の傾向として、発生件数自体はそれほど多くありませんでしたが、全体を通してその後の企業のレピュテーションに大きな影響を及ぼしたり、信頼に大きな傷がついてしまったりした炎上が多数発生しました。また明らかに不適切な言動がきっかけとなった事例の他に、時事的要因が大きく影響した炎上も目立っています。
具体的にはコロナウイルスにまつわる発言や情報発信が原因となった事例が全体の約50%を占め、東京オリンピック開催予定日を目前にコロナ関連の情報への関心がさらに高まっていると考えられます。また、SNS以外の情報や言動がきっかけとなった事例も多いことから、引き続きSNSを活発的に運用していない企業であっても炎上リスクに備えておくことが必要と言えます。
モニタリングでリスク早期発見を
どのようなきっかけの炎上であっても、SNSやWeb情報のモニタリングと早期発見は炎上早期収束のために必要不可欠です。まだ自社にまつわる情報のモニタリングを行っていない企業様はぜひこの機会に一度Twitterや各種掲示板、GoogleやYahoo!等で自社の情報を一度調べてみるのも良いかもしれません。「情報の見方が分からない」「社内にリソースがない」などモニタリングに関する疑問点はレピュ研を運営するジールコミュニケーションズまでお問い合わせください。