本記事では企業におけるSNS教育の必要性を4つのポイントから解説します。
従業員教育の一環としてSNS教育やそれに伴うSNS利用ルール等を策定している企業様は増えています。企業として「やっておいた方が良いこと」として認知は拡大していますが、具体的にどのような点から今企業に必要とされているのか、ピンと来ていない方もいるのではないでしょうか?
今回はなぜ今SNS教育が必要なのかについて4つのポイントをまとめましたので、ぜひ今後のSNS教育の実施や見直しにお役立てください。
目次
調査データから見るSNS教育の必要性
まずはSNSに関する調査データの変化からSNS教育の必要性を見ていきます。特にコロナ禍以前とは大きな変化が見られ、リスクにも変化が現れています。これらの新たなSNSリスクに対応するためにも、適切なSNS教育が必要になるため最新の動向は常に知っておくことが大切です。
メディアへの接触時間の変化
まず、メディアへの接触時間の変化のデータを見ていきます。株式会社博報堂DYメディアパートナーズメディア環境研究所による「メディア定点調査」によると2020年から2021年にかけて、メディア全体への接触時間が1日あたり40分増加していることが分かっています。具体的に内訳を見てみるとテレビ、新聞、ラジオなど4大マスメディアと呼ばれるメディアはほとんど変化がないのに対して、ソーシャルメディア等の利用が想定されるスマートデバイスへの接触時間は大きく増加していることがわかります。
株式会社博報堂DYメディアパートナーズメディア環境研究所「メディア定点調査」
直接的な利用時間の変化のデータではありませんが、まずは環境としてこのような変化があることを知っておきましょう。
消費者のSNS動向の変化
つづいてコロナ禍における消費者のSNS動向の変化について見てみます。アライドアーキテクツ株式会社が実施した「新型コロナウイルス感染症拡大防止に伴う外出自粛に関するアンケート」によると、コロナ禍においてSNS利用時間が増加した人は全体の3割を超えていることが分かっています。さらにSNS利用時間が増えた人のうち、特定の企業の見方が変わった経験があるかという問いに対しても63%の人が「ある」と解答しています。
アライドアーキテクツ株式会社 「新型コロナウイルス感染症拡大防止に伴う外出自粛に関するアンケート」
これまで、SNSは企業として気軽に情報発信やコミュニケーションが取れるツールとして認識される場面が多かったですが、より企業イメージやレピュテーションに直結する媒体に変化していると考えられます。この変化も企業としてSNS教育を行う重要性の1つと言えるでしょう。
年齢階層別SNSの利用状況の変化
3つ目のデータとして、総務省「通信利用動向調査」による年齢階層別のSNSの利用状況の変化をご紹介します。利用者数の増加にばかり目を向けられがちですが、その内訳をみると特に60代以上の利用者が急増していることが分かります。
総務省「通信利用動向調査」
若年層の利用者が多いと錯覚しがちですが、実際はこのように幅広いユーザーが利用しているのがSNSの実態です。若年層向けの対策だけでは不十分である他、情報の発信時においても多様な価値観を持ったユーザーが存在するという事実を理解した上で利用する必要があります。このような状況はきちんとSNS教育で従業員に落とし込んでいくことが大切です。
コンプライアンスにおけるSNS教育の必要性
従業員1人のSNS利用がきっかけで、企業のコンプライアンスについて問われてしまうこともあるため、そのような事態を防ぐためにもSNS教育は必要です。実際にどのようなケースが想定されるのか具体例を2つご紹介します。
不適切なSNS利用がコンプライアンス違反だと指摘
もっとも多いのは従業員個人のSNS利用方法が不適切だとして批判されるケースです。プライベートで利用しているアカウントでの言動も、過去の投稿やプロフィール等から勤務先を特定されてしまうことがあるため企業として注意しておく必要があります。特に下記のような項目は教育時にしっかりと落とし込み、企業の不利益、また従業員自身のその後の人生に大きな影響を及ぼす可能性があると理解してもらうことが大切です。
・他者(社)への誹謗中傷や過激な批判
・人種、性別、思想、信条等の差別的表現にあたる投稿
・ 第三者の知的財産権、プライバシー権などの権利侵害に該当する投稿
・ 違法行為や倫理上問題のある行為を助長したり容認したりする投稿 など
コンプライアンス違反とされる行為がSNS上で告発される
直接的なSNS利用が原因でなくても、オフラインでの言動が第三者によってSNS上で告発され、炎上に発展することもあります。そのためSNSの利用方法だけでなく、SNSにはどのような特性やリスクがあり、情報を投稿されてしまうことでどのようなことが懸念されるのか、などもSNS教育でしっかりと落とし込んでおきましょう。
泥酔や騒音、歩きたばこ、歩きスマホなど公共の場での迷惑行為がSNSで告発される
↓
一緒に投稿された写真に写っていた社章や会話の内容から会社名が特定
↓
会社としてのコンプライアンスに問われる事案に発展
情報漏洩防止におけるSNS教育の必要性
SNSを介した情報漏洩を防止するという観点でもSNS教育は重要となります。故意による情報漏洩だけでなく、知識不足や不慮の情報漏洩を備えるためにも社内全体のリテラシー向上が大切です。
故意による情報漏洩
会社の愚痴のような形で社内の情報をSNSに投稿したり、注目を浴びたいという思いから発表前の社外秘情報や内部事情を投稿したりなど、意図的に社外に情報を発信するケースは様々あります。それらの行動を抑制するためにも、情報発信時のルールを策定した上で、そのルールをもとにしたSNS教育が必要です。具体的に次のように自社で想定されるケースを事例として教育プログラム内に組み込むなどして当事者意識を持たせる工夫をしましょう。
・取引先のオフィス内で撮影した写真をSNSに投稿する
・新商品のイメージキャラクター等PRに関する情報をSNSに投稿する
・会社への愚痴として部署名や名前を含んだ投稿をする
・その他匿名であっても自身の業務内容を投稿する など
知識不足による不慮の情報漏洩
故意による情報漏洩の他に、SNSに関するリテラシー不足によって意図しない形で情報漏洩につながってしまうケースもあります。また、誤爆などヒューマンエラーによって発生することもあるため、下記のように思わぬところから情報漏洩が発生しないよう、具体的な事例を用いて教育を行いリスクを抑制する必要があります。
・社内で同僚と撮影し、SNSにアップした写真に売上目標等の社外秘情報が写り込んでいた
・プライベートアカウントと業務用アカウントを間違えて投稿してしまった
・不特定多数のユーザーから閲覧可能と知らずに、SNS上で友人とプライバシーに関わるやり取りをしてしまった
使用者責任におけるSNS教育の必要性
従業員の不法行為は民法715条で定められている使用者責任に問われる可能性があります。この不法行為についてはSNS上での言動も含まれることがあるため、企業側はSNS教育等を用いて、従業員のSNS利用方法をある程度はコントロールする必要があるといえるでしょう。
条件があるため全ての不法行為が該当するわけではありませんが、該当した場合雇い主側の企業に直接的な過失がなくても損害賠償などの請求をされてしまう恐れがあるため注意が必要です。
第715条(使用者等の責任)
1.ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
2.使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。
3.前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。
具体例を挙げると、従業員がSNSで社内の取り引きに関わる内容を投稿し、その投稿によって取引先に不利益が生じた場合などは使用者責任に問われる場合があります。そのような事態を防ぎ、従業員個人が担っている責任について知ってもらう為にもSNS利用に関する教育は重要となるのです。
なぜ必要なのか知った上でSNS教育を実践
4つのポイントから、なぜ企業におけるSNS教育が重要なのかご理解いただけたと思います。SNS教育はただやみくもに実施するのではなく、自社にどのようなリスクがあり、どんなリスクを抑制するために実施するのか明確にした上で実践に移すことが重要です。ぜひ本記事を参考に社内におけるSNSリスクについて見直して見てはいかがでしょうか?
レピュ研を運営する株式会社ジールコミュニケーションズでは、SNS教育など企業のSNSリスク抑制のために必要な社内体制構築のお手伝いをしております。「社内のリソースでは難しそう」「教育するだけのSNSに関するノウハウがない」など、何かお困りの際はお気軽にご相談ください。
SNS教育のポイント4つと実施例
・SNS教育の意義や効果
・SNS教育実施前に決めておきたいこと
・対象者ごとのプログラム策定ポイント
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