本記事では、ソーシャルリクルーティングから派生するSNSリスクについて、対策と共に解説します。
2020年の採用トレンドとして、SNSを活用したソーシャルリクルーティングという手法が注目されてきました。SNSを使った情報収集が定着している今、企業の公式アカウントから採用に関する情報発信をすることで様々なメリットが見込めますが、その一方でSNSならではのリスクが潜んでいます。そのため、リスクが不安でなかなか手を出せていないという担当者様も多いのではないでしょうか?
今回はそのようなお悩みをお持ちの方に向けて「ソーシャルリクルーティングに潜むリスクと対策方法」について事例をもとに解説していきます。ソーシャルリクルーティングがトラブルの元とならないように是非今後のリスク対策のご参考にしてみてください。
ソーシャルリクルーティングとは?
ソーシャルリクルーティングとは
ソーシャルリクルーティングとはTwitterやFacebookなどのSNSを活用した採用方法のことを指します。ソーシャルリクルーティングは2004年にアメリカで開始された手法で、2013年時点ではアメリカの94%の企業が実施しているほどスタンダードになっています。日本でも、SNS利用者の増加、新型コロナウイルスの影響により対面での採用活動が難しくなったことが要因となり、導入企業が増えてきています。ソーシャルリクルーティングと同じような意味合いを持つ言葉としてダイレクトリクルーティングがありますが、人材バンクなどのSNS以外の方法も活用している点に違いがあります。
ソーシャルリクルーティングのメリット
ソーシャルリクルーティングを用いた採用活動には、様々なメリットが考えられます。1つ目のメリットは、若年層の採用に適している点です。総務省平成29年版情報通信白書によると、20代の97.7%が何らかのSNSを利用していることが分かっています。そのため、若手を積極的に採用したい企業にとっては直接アプローチするのに最適なプラットフォームとなっているのです。2つ目のメリットとして、SNSは種類によって利用しているユーザー層に特徴があるため、年齢や性別など採用したいターゲットによってプラットフォームを選ぶことができるという点が挙げられます。さらにSNSの特徴の1つでもある拡散力を使い、採用にかかる費用を大幅にカットできる点もメリットと考えられます。
ソーシャルリクルーティングに潜む4つのリスク
ソーシャルリクルーティングならではのリスクを4つご紹介します。ソーシャルリクルーティングにはメリットがある一方で、トラブルへと派生するリスクも潜んでいるので注意が必要です。
企業側の不適切な情報発信
「採用」というターゲットが絞られたSNS活用であっても、拡散力が強いというSNSの特性は変わらないため、軽率な発言や不適切な表現は企業リスクに発展します。求職者からの質問や書き込みに対し、攻撃的な反論や個人的な発言をしてしまうとその見解が企業の考えだと誤解され、批判される対象となってしまうこともあるので、企業アカウントを私物化しないようにしましょう。また、信憑性のない情報発信により、大きなトラブルへと発展し、結果的に企業イメージを低下させてしまうこともあるので、日常的に正しい情報発信を心掛けなければなりません。
個人情報の漏洩
SNSにおける個人情報の取り扱いリスクにも特に注意が必要です。具体的なリスク発生の事例として次のようなものが想定されます。
- 求職者の氏名や学校名をSNS上に公開してしまう
- 求職者の面接の様子を無許可で公開してしまう
- 設定を誤ってSNS上の不特定多数の人から求職者の個人情報が閲覧できる状態になってしまっている
SNSだから大丈夫ということはなく、故意、過失に限らず企業への不信感につながるため注意が必要です。
求職者による企業情報の漏洩
情報漏洩に注意が必要なのは、企業側だけではありません。求職者が面接に来た際に、社外秘などの情報の管理を徹底していないことでSNS上に晒されてしまう可能性があります。また、メールの文章や面接中の会話、態度など、閉鎖的な空間でのやり取りであっても、SNSに投稿されてしまうことがあります。特に求職者に対する不適切な言動は、 キャプチャーや録音されたデータがSNSに投稿されてしまう可能性もあるので注意が必要です。このリスクはソーシャルリクルーティングに限ったものではありませんが、企業公式アカウントを保有していることで、批判する意見はそのアカウントに対してのリプライやDMで届いたり、過去の投稿の揚げ足を取られたりする可能性もあるため、把握しておきましょう。
内定者の炎上リスク
内定者のSNSからもリスクが発生する可能性があります。個人のアカウントから不適切な発言をした場合でも、過去の投稿などから個人情報が特定され、内定先が特定されてしまうことがあります。正式な従業員でなくても、有事の際は企業名も一緒に拡散されてしまう可能性もあるため従業員と同じようにリスク対策、教育をしておくことが大切です。
採用活動にまつわる3つの炎上事例
採用にまつわるSNSトラブルの事例を3つご紹介します。どんな企業にも起こりうることなので、しっかり把握しておくことが大切です。
内定者の情報漏洩
ある企業ではFacebookグループの誤った情報公開設定によって、内定者の個人情報が流出してしまうトラブルが発生しました。Facebookグループとは、友達や友達以外のユーザーと興味あるテーマについて情報を交換したり共有できる機能のことです。Facebookグループの公開設定は、以下の3段階で制限することができます。
- グループ内のすべての情報が公開される「公開」
- グループ名やメンバーリストなど、投稿内容以外は全て表示されてしまう「非公開」
- グループ名やメンバーリストも第三者には公開されず、検索しても表示されない「秘密」
この事例では公開設定が「非公開」になっていたことが原因で、ある企業の内定者の情報が漏洩してしまいました。ネット上に公開すべきではない情報の管理には細心の注意を払い、事前にテスト運用をするなどの対策が必要です。
人事担当者による不適切な発言
ある老舗文房具メーカーの人事担当者が、東日本大震災が発生した直後に、被災者でもあった求職者に対して不適切かつ配慮に欠くメールを送信したため批判が殺到しました。内容は次の通りです。
このメールを配信した中には、被災されている方が多数いると思います。
こんなことくらいしか出来ませんが、履歴書とESをお送りします。
ただ、非常に厳しい条件をつけさせていただきます。
書類選考を希望される方は、添付資料を3月15日(火)消印有効で下記までご郵送ください。
その指示が難しい場合は・・・その先は言う必要ないですよね。
自分で考えてみてください。
※一部レピュ研が内容を変更しています。
メールを送付した日付が3月13日であったため、2日で書類を完成させなければならず、被災した求職者にとってはとても厳しい条件であったと言えます。メールを受け取った求職者がSNS上に公開したことで数多くの批判が殺到し、炎上へと発展しました。
この事例のように、メールなどの閉鎖的な空間でも不適切な情報の発信を行うとキャプチャー機能によりSNSに拡散されてしまう可能性があります。ネガティブな情報や画像・動画の投稿は、拡散スピードが非常に早いため、企業リスクへと発展させないように注意が必要です。
内定者による不適切な発言
ある大手百貨店から内定をもらっていた男子学生が、SNSに不適切な発言をしたことで炎上へと発展しました。男子学生の投稿には、同じ大学に通う生徒が起こした準強姦事件に対する見解が投稿されていましたが、凶悪事件を容認していると捉えられるような内容だったため、ユーザーからは批判が殺到しました。内定を出した企業にも批判が殺到するほど大きなトラブルへと発展しています。男子学生が投稿した内容は次の通りです。
「別に(犯人は)悪いと思わないね。」
「皆同じようなことしてんじゃん」
「変わんねーよクソが。女がわりー。」
男子学生は、複数のSNSを連携させて開設していたため、ある1つのSNSに記載していた内定先・実名・大学名・学部名・アルバイト先などの情報がみるみる間に拡散され、 最終的には内定が取り消しになる事態となりました。
この事例のように、入社していない学生でも不適切な発言をすると企業に損害が生じてしまう場合があります。そのため、既存の従業員だけではなく、内定者にもSNSの利用に対するガイドラインを設けるなどの対策が必要です。
リスクに備えるための対策方法
ソーシャルメディアポリシー作成
どんな形でも企業としてソーシャルメディアを使用する場合は、予め姿勢やルールをソーシャルメディアポリシーとして定めておくことが大切です。運用方法についても細かくマニュアル化し、投稿の質を担保することでトラブルを未然に防ぐ効果が期待できます。実際に情報発信を行うときには、立場の違う複数の人に、発信する情報内容が適切か確認を取るなど、誰が見ても不快に感じない情報発信をするための体制づくりが大切です。
SNS教育
SNSの利用方法について従業員・内定者に教育を行うことも重要な対策の1つです。企業がどれだけリスク対策を行っていても、従業員・内定者1人の不適切な発言によって、企業に大きな影響を与えることがあります。また、SNS教育を行っても想定されるリスクに対して”当事者意識”を持ってもらえなければ、不適切な行動を抑制するのは難しいです。そのため、従業員・内定者が起こしたリスクの事例を共有し、”問われる責任”や”その後の人生に与える影響”などを理解してもらうことが大切です。
【SNS教育のプログラム策定ポイント4つと実施例】をダウンロードする
ネット監視
どんなにリスクを発生させないための対策を行っていても、100%防ぐことは難しいです。そのため、ネット上に企業のネガティブな情報が出ていないか日常的に監視をし、有事の際に早期発見・迅速な対応を行う準備をしておくことが大切です。また、自社に関する情報だけではなく、社会情勢や業界についての情報の監視も並行して行うことで、次に企業に起こりうるリスクを想定できる効果が期待できます。
お困りごとがある際には
レピュ研を運営するジールコミュニケーションズでは、今回ご紹介したような採用時のSNS上のトラブルについて無料相談を行っています。「自社で行っている対策方法が正常に機能しているか不安」「対策したくても何から手を付けていいかわからない」という方は是非お気軽にお問い合わせください。