企業炎上分析レポート【2023.01】

本レポートはレピュ研を運営する株式会社ジールコミュニケーションズが、独自の調査からデジタルリスクに値すると判断した事例を分析したレポートとなっております。2023年毎月にわたって、特に目立っていたまたは特徴的な炎上事例とその発生要因等を解説し、どのような傾向・トレンドがみられるのかを追っていきます。企業または学校におけるデジタルリスクの管理やトレンドは悪党に活用していただくことを目的として毎月発表しております。

2023年1月までの炎上発生件数推移

ジールコミュニケーションズの独自調査・判定より、2023年1月の炎上件数は24件となりました。炎上タイプの内訳は下グラフの通りです。

2022年のジールコミュニケーションズが集計した炎上発生件数では、毎月ごとの炎上件数は24件前後となっており、2023年1月の炎上件数も引き続き平均数での発生となりました。また、直近になって目立ち始めていた個人を発生源とした炎上ですが、2023年1月は炎上の半数が個人によるものと判定されています。一方で政治関連の炎上はなりを潜めており、SNSやネット全般として個人のリテラシーレベルが特に問われていると見受けられます。

広告のキャッチコピーが女性蔑視だとして炎上

新聞広告のキャッチコピーが女性蔑視だとして炎上しました。

問題視されたのは、男女が対になっている新聞広告です。電車内に掲示された以下のようなキャッチコピーに対して、フェミニストまたはツイフェミと呼ばれるTwitter界隈で活躍しているユーザーから批判の声が上がりました。

ところが当該キャッチコピーは、当初から男性と女性を入れ替えたバージョンが存在することが後々判明。批判者による「早とちり」だったということで自然と炎上は鎮火する形となりました。

若い女性は”無知”が良いというバイアス

「すごい」と「やばい」を若い女性に言わせることが、なぜこれほどまでにも批判を煽るのでしょうか?それは、現代社会までレガシーとして残り続けている「若い女性は無知が良い」または「若い女性は無知でも構わない」という偏った解釈に拠るところと考えられます。

以前に「女性蔑視で炎上しないために!『アンコンシャス・バイアス』とは?」という記事でも取り上げましたが、私たちは人間は育ってきた環境や経験・学びなどによって無意識の先入観(バイアス)を形成し、知らず知らずのうちに差別や誹謗中傷をおこなってしまう場合があります。これは「アンコンシャス・バイアス」と呼ばれ、しばしばジェンダーや人権問題を議論する際に話題となる概念です。常日頃からジェンダーや人権に関して意見を唱えている一部のユーザーは、このアンコンシャス・バイアスに対する感性が鋭いため、広告やPRを行う際には彼らの目線を意識する必要があります。

今回の若い女性に「すごい」「やばい」と言わせるキャッチコピーでは、アンコンシャス・バイアスの中でもステレオ・バイアスという先入観が問題視されたと推測されます。

ステレオ・バイアスとは、相手の属性やこれまでの経験・背景にもとづいて、ジェンダーや国籍・皮膚の色等から先入観をもって他者を決めつけてしまう先入観のことを指します。今回の炎上事例に即すると、以下のような考え方がステレオ・バイアスにあたります。

  • 女性は頭が良すぎないほうが良い
  • 女性は進学せずに花嫁修業をして早く嫁いだほうが良い
  • 女性は男性より頭が良くてはいけない
  • 女性は若い間は、少しくらいおつむが弱いほうが可愛らしい
  • 25歳を過ぎても頭の弱い女性は、痛々しい

このような言葉を耳にしたことはないでしょうか?もちろん、古臭い・女性蔑視的な考え方だと一蹴される人が大半だと思われます。しかし、日本社会に長い間蔓延り、現在でも一部では「当たり前」として受け入れられ続けている女性蔑視的な考え方です。アンコンシャス・バイアスの真に恐ろしいところは、この考え方自体が時代錯誤の差別的な思考回路であるということに気づけないという点にあります。

もちろん、そのような考え方の人は今では一握りです。しかし、その時代が変わりつつあるからこそ、その一握りの感性を持った人々が殊更に注目され、糾弾されるようになったものと考えられます。

アルバイトが店内でのいたずら動画を投稿して炎上

ある地方にある大手コンビニエンスストア店舗で発生した、アルバイトのいたずら動画が話題になっています。

炎上の発端となったのは、TikTokに投稿されたいたずら動画でした。大手コンビニエンスストアの制服を着た女性が、掃除用のモップで悪ふざけ・商品の飲食物をかじりながら撮った写真などを次々と投稿し、結果的にTwitterに転載される形で動画コンテンツが拡散され、炎上してしまいました。

この炎上による処分について、当該コンビニエンスストアの運営企業は「未成年のため詳細は公表しない」としていますが、SNSやネット上ではすでに当事者の個人名や出身校まで特定されており、デジタルタトゥーとして彼らの将来に響いてしまうことは確実でしょう。また、コンビニエンスストア側も「教育不足」「人材のリテラシーが低い」「衛生観念が低い」と見做され、ブランドイメージのダウンは避けられません。

相次ぐ迷惑動画炎上とその背景

2023年に入ってから迷惑動画による炎上、いわゆる「バカッター」「バイトテロ」といった炎上事例が多発しています。迷惑動画による炎上が多発している背景には一体何があるのでしょうか?

炎上のエンタメコンテンツ化

以前から弊社が提唱している説ですが、2022年あたりから炎上がエンタメコンテンツ化している傾向にあると捉えております。炎上のエンタメコンテンツ化とは一体何かというと、炎上の持つ爆発的なある種のトレンド性を逆手に取り、あえて炎上事例を積極的にピックアップしていくことで集客率を高めていくという傾向を指します。現に、炎上系のYotuberや炎上を取り扱うTwitter上のインフルエンサーがトレンドを席巻し、彼らが不適切な投稿を晒上げる度に大きな話題となるようになりました。さらに、こういった炎上系Yotuberや炎上系インフルエンサーのもとには常日頃から内部告発やタレコミがリークされており、今、最も炎上の中心にいる人物といっても過言ではありません。

「バイトテロ」「バカッター」を知らない世代がSNSを利用し始めた

「バイトテロ」「バカッター」は一時期社会現象といえるほど大きな問題として扱われていました。しかし、なぜまた今になってこのような炎上が多発するようになったのでしょうか?

それは、Z世代と言われるSNSでの炎上事件の数々を知らない若年層が、SNSの主な利用世代となりつつあることが背景にあげられます。バイトテロやバカッターという言葉が一般化し定着し始めたのは2013年です。現在Z世代と呼ばれている若年層(10~25歳)が0~15歳のころにあたります。それから10年の時を経て、バイトテロやバカッターによる弊害を知らずに育った世代が、同じような過ちを繰り返しているものと推測されます。

1月の炎上【傾向と分析】

2023年1月の炎上で最も特徴的、そして話題となったのは「迷惑動画」による炎上です。バイトテロ・バカッター問わず、InstagramのストーリーやTikTokといった動画系のプラットフォームを中心に不適切な動画投稿が多発しています。

2つ目の炎上事例『アルバイトが店内でのいたずら動画を投稿して炎上』でも解説いたしましたが、不適切動画を投稿することで自信が被るデメリットや、SNSを利用する際の一般的な基礎教養を学んでいない、また迷惑動画投稿による被害を経験していない若年層がSNSを利用し始めたことで、まるで再流行するかのように迷惑動画炎上が多発する事態となりました。

今でこそ必要性が認知されつつあるとはいえ、この2013~2023年の10年間において、社会的にSNSリテラシーを学ぶことが大切だという認識はまだ一般的ではありませんでした。そのため、最もSNSを活用しているにも関わらず、SNS利用のリテラシーに欠けている若年層のユーザーが大量に存在するのです。

また、迷惑動画による炎上で被害を被るのは炎上の発端となった当人だけではありません。炎上の現場となった、あるいは炎上に利用された企業もまた、対応に追われる事態となります。今後は被害者・加害者問わず、炎上に巻き込まれた際には両者それぞれ対応をおこなう必要が出てきます。自社が炎上を引き起こす可能性だけではなく、炎上に巻き込まれた際にどのようなフローで動く必要があるのかについて今一度確認することをお勧めいたします。

事例の分析で、炎上リスクのノウハウを蓄積

ジールコミュニケーションズが開催している無料のウェビナーでは、今回ご紹介した炎上事例の他にも、様々な事例をさらに深掘りする形で解説しております。ウェビナー中の炎上事例解説では、データに基づいた炎上トレンドや、具体的に注意すべき投稿内容についてお伝えしております。

ぜひ、弊社ウェビナーにご参加の上、今後のSNSリスク対策にお役立ていただければ幸いです。

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