【2021年8月】企業炎上動向調査レポート

レピュ研を運営する株式会社ジールコミュニケーションズが、独自の調査により「ネット炎上」として判別したデータをもとに作成したレポートです。先月特に目立っていた炎上事例とその発生要因を解説し、月間を通してどのような傾向、トレンドが見られるのか分析しています。
企業におけるWeb・SNS、及びレピュテーショナルリスクの管理、評価、対策等に活用していただくことを目的として毎月発表している調査レポートです。

公式SNSでセクハラ・人種差別的投稿をしたため炎上

ある地域観光団体の公式Twitterが、セクハラ・人種差別的な投稿をしたため炎上しました。炎上した公式Twitterでは、以下のように観光にかこつけた性的な発言や他国を貶める内容が日常的に投稿されていました。

現在、たくさんのお花が開花中!
まるで、女性専用車です。
たくさんの「とってもいい香り」
思わず息を吸い込みます。

例え、都市部がほぼほぼロックダウン状態になったとしても、
貴方の心と○○の湿原は広大です。
△△国や□□共和国、▽▽国に比べれば幸せです。

このような投稿に対して、
「公式SNSを、このような問題のある人に任せる雑な組織に違いない」
「○○地域に対するイメージが崩れてしまった」
「日常的にセクハラまがいのガイドをしているんじゃないか?」
と批判の声が上がり、炎上を引き起こしてしまいました。

杜撰な運営体制による炎上

炎上後、当該団体は以下のような謝罪文を公表しました。

今回の一連の発言は、セクシャルハラスメント、人種差別など、人権侵害の表現を含む不適切な内容でありました。
~省略~
それらの発言を防ぐ体制がないことにも問題がありました。
~省略~
今後はSNSやホームページの適切な運用が図れるよう勉強していきます。第三者のアドバイスを受けガバナンスを見直し、組織体制の改革をします。

この謝罪文から、 本来ならばSNS運用前に整備すべきガイドライン作成やSNS教育を行わなかった、という杜撰な運営体制が炎上の背景としてうかがい知ることが出来ます。また、当該SNSの運用は団体の男性1名のみで担っており、第3者による客観的監視体制もありませんでした。単独でのSNS運用は、担当者の性別・年齢などの要素によって、投稿内容に偏りが出やすくなる恐れがあります。事前準備、実際の運用ともに体制構築が不十分だったと言えるでしょう。

イメージとの乖離が引き起こすバッシング

今回の炎上における直接的な原因は、当該団体に対してユーザーが抱いていたクリーンなイメージと実際のSNSの投稿内容にズレがあったためです。法人炎上の大多数が、ユーザーの持つイメージとの乖離により発生しています。特に、当該団体が担当しているガイド地域は、美しい景観と自然豊かな土地として名高い観光地です。このように、企業や団体が本来持つイメージや理想が高くあるほど、実際のSNS投稿内容との差が出来やすく、炎上に発展しやすい傾向にあります。

投稿拡散のメカニズム

問題となった公式SNSは、特にフォロワー数も多くなく、影響力・拡散力のあるアカウントではありませんでした。拡散されるきっかけとなったのは、Twitter上のインフルエンサーによる当該アカウントの批判投稿です。今回の炎上に限らず、問題のあるアカウント自体にはさほど力はないものの、多くのフォロワーを抱えた影響力のある第3者が問題提起をすることで広く拡散されるケースは、過去の事例でも多くみられます。

特定の職種を貶める発言をしたため炎上

とある職業団体が発行する情報誌のコラムにて、特定の職業を貶めるような発言がされているとして、SNS上で物議を醸しています。

「不要不急の商売は次々と潰れていく」と題された当該コラムは、筆者が行きつけのサービス店に行ったときの体験談を記したものであり、そのサービス業に対して「素人でもできる不要不急の商売」と職業差別的な主張をおこなっていました。この主張に対して
「選民思想・特権意識の表れだ」
「貴族気取りで世間知らず」
という声が多く上がり、炎上に発展しました。

的外れな謝罪文による炎上の長期化

問題のコラム掲載から11日後、炎上から2日後に掲載は取り下げられ、当該団体は以下の内容で公式の謝罪文を発表しました。

一部不快な思いをさせてしまう記述がございました。関係者のみなさまにご迷惑をおかけいたしましたことを深くお詫び申し上げます。
~省略~
今後は掲載前のチェック体制を強化するとともに、二度とこのようなことのないよう努めてまいります。

この謝罪文が発表されると、
「チェック体制は強化するのに、差別的思想は正していかないのか」
というユーザーの声があがり、炎上は長期化する事態となってしまいました。今回の炎上は「コラム筆者の差別的思想」をきっかけとして発生したものであり、「チェック体制の強化」とは、あくまで二次的な対応策です。謝罪文に盛り込む内容として、「認識を改める」「謙虚な心をもって臨む」など、ユーザーからの批判を受け止めた上で今後の対応を明文化する必要性があったと言えるでしょう。

新型コロナウィルスの感染防止措置が徹底されなかったため炎上

8月に開催された音楽フェスが、飲食・酒類の提供や密状態を招いたとして物議を醸しました。開催にあたり、酒類の提供が自治体から許可されていると虚偽の表明を行ったことや、開催区域の県・市から新型コロナウィルス感染防止対策措置を呼び掛けられていたにもかかわらず徹底されなかった点が問題視され、 SNS上では当該音楽フェスの主催者を批判する声が多く上がっています。

動画拡散による告発

炎上のきっかけは、当該音楽フェスの参加者が投稿した動画が拡散されたことによるものです。

投稿された動画には、
・ほとんどの参加者がノーマスク状態
・ソーシャルディスタンスがとられておらず、密が形成されている
・大声で歓声をあげている
といった様子が映されていました。
開催前から防止対策やクラスター発生の懸念等で注目されていたイベントなだけに、動画は瞬く間に拡散され炎上に発展しました。

炎上後の誤った対応方法

今回の炎上事例で注目したいのは、「炎上後の対応方法」です。SNSで非難された当該フェスの主催者は、炎上後に誤った対応を行ったため、二次炎上、炎上の長期化を招いてしまいました。

当該フェスの出演者がSNS上で主催者を擁護

炎上を受けた当該フェスの出演アーティスト数名が、主催者を擁護する投稿をおこないました。しかし、県知事の抗議ツイートを引用した投稿や、批判者を挑発する投稿が相次いだため、かえって批判の声が勢いづく結果となってしまいました。特に出演アーティストによる擁護に関しては、ユーザーからの批判に対して的の外れた反論をしたため、炎上の収束どころかアーティスト自身のイメージ低下を招く結果となりました。

炎上後に公式HPの関係者項目を削除

当該フェスの主催者は、炎上後に公式HPを改変し、出演者・後援者等の関係者の項目を削除しています。この対応がユーザーから「批判と向き合わずに逃げだした」と捉えられてしまい、 結果として批判の声がさらに高まるとともに、二次炎上へと発展してしまいました。

8月の炎上【傾向と分析】

上半期に引き続き、新型コロナウィルス関連の炎上が多くみられました。
特に、「イベント」「ワクチン」といった時事的なキーワードが炎上のトリガーとなった事例が多く見受けられます。社会全体が敏感な時期であるため、情報の発信時には一層注意すべき内容だと言えるでしょう。

また、炎上・拡散の経路として、影響力のある第3者を通して炎上する事例がやや目立ちました。「フォロワー数が少ないから炎上には発展しづらい」ということはなく、「フォロワー数が少なくとも炎上に発展する可能性は十分ある」というメカニズムを理解し、自身の発信した情報が他者の目にどのように映るか、という意識を忘れずにSNSを利用することが大切です。

公式SNSの場合であれば、ガイドラインで投稿NGのテーマを決めることであらかじめ発信出来る情報に制限を設けるなど、SNS投稿時のルールを策定しておくと炎上発生の確立は格段に減りますので、積極的なガイドラインの作成・活用をお勧めします。

ガイドラインの策定で炎上を回避できる企業体制づくりを

企業とSNSの危険性は常に隣り合わせで存在しています。 公式SNSを運用している・していないにかかわらず、 SNS炎上を回避できる社内体制づくりが重要となります。そのためにも、まずは体制構築の要となるガイドラインの作成をし、ルールをもって社内を統率していきましょう。

「何から始めたらよいか分からない」
「社内にSNSリスクや炎上に関するノウハウがない」
というお悩みをお持ちの方は、ぜひレピュ研を運営するジールコミュニケーションズにご相談ください。ガイドラインの作成からSNS教育、社内体制構築まで一貫してサポートいたします。

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