「レピュテーションをマネジメントするとは」「レピュテーションをマネジメントするための2つの活用方法と3つの事例」について詳しくまとめました。
レピュテーションをマネジメントすることについて、正しく理解できていない、いまいちピンときていない、といった法人はまだまだ多いのではないかと思います。
そこで今回は、レピュテーションマネジメントとはどういうことか、具体的な事例を紹介しながらマネジメント方法など解説していきます。
法人の評価を維持・向上させたい方や、法人のマイナス評価をプラスにさせたい方は必見です。正しいマネジメント方法を学び、大切な法人を一緒に守っていきましょう。
目次
レピュテーションマネジメントとは
レピュテーションとは評価のことをいい、レピュテーションマネジメントとは、法人の評価を維持・向上させるための活動のことをいいます。また、評価の維持・向上だけでなく、失ってしまった信頼を回復するために活動することも、レピュテーションマネジメントのひとつです。
法人の活動や発信する内容が、そのまま顧客や消費者に伝わるわけではないため、日頃から顧客や消費者、そのほかの関係者とどれだけ良好な関係を築けているかが重要となります。
レピュテーションマネジメントの対象
レピュテーションマネジメントの対象は、顧客、消費者にとどまらず、社内、取引先、株主や地域社会など法人に関わるすべてのステークホルダーが対象となります。
ステークホルダーによって法人に求めていることは異なり、それぞれのステークホルダーが法人の何を見ているのかも異なります。
※ステークホルダーとは利害関係者のこと
ステークホルダー | 企業に求めること |
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消費者 | 消費者や顧客をどれだけ満足させてくれるか |
社内 | 人事評価・安定性・収益があるかどうか |
取引先 | 支払い能力や信頼性など |
株主 | 各企業が生み出す価値はどんなものか |
地域社会 | 良き企業市民として地域にどんな貢献をしてくれるか |
レピュテーションマネジメントの重要性
レピュテーションマネジメントが重要視され始めたのは、スマートフォンの普及にともない、ソーシャルメディアが発達してきたことにより、消費者や顧客、さまざまなユーザーが自由に世界へ発信できるようになったことがきっかけでした。商品やサービスの評価、法人に対する評価などネット上ではユーザーの声があふれかえっているため、法人にとってユーザーの声を無視することは難しくなってきています。
その理由はユーザーの声の中にあります。商品やサービスに対する発信を逃さないことで、法人の改善へつなげることができたり、また法人に対するネガティブなワードであってもいち早く察知することで、法人の評価を守ることができるからです。法人の評価は法人に関わるすべての人の評価で成り立っているのです。
レピュテーションマネジメントの2つの方法
レピュテーションマネジメントには2つの手法があります。レピュテーションを維持・向上させていくための「攻め」のレピュテーションマネジメントと、低下してしまったレピュテーションを回復させるための「守り」のレピュテーションマネジメントです。現状をよく把握し、適切なマネジメントをすることが必要です。
「攻め」のレピュテーションマネジメント
もともと世間からの評価も悪くなく、イメージも悪くない法人でも、現状の評価を維持し、さらに評価を高めていかなければ法人の成長にはつながりにくいと言えます。評価をしてもらうには、マスコミやメディアを使って、法人の活動内容を広めていくなどして、世間の注目を意図的に集める必要があります。
また「万人受けではなくコアなファン向けの商品で、根強い人気を狙う」といった攻めのブランディングも、レピュテーション向上に一役買ってくれるかもしれません。
「守り」のレピュテーションマネジメント
事故や不祥事などで評価が下がってしまった法人は、さらなる悪化を防ぐとともに、下がってしまった評価を回復させなければなりません。以下の4点を軸に「守り」のレピュテーションマネジメントをおこなっていきましょう。
- 事故や不祥事が起きた場合、現状のあらゆる情報を収集し、分析する
- 法人にとって不都合な情報であっても、早い段階で社会に発信する
- 情報を隠ぺいしない、包み隠さず話しますといった姿勢をつらぬく(信頼度や法人の信用度を高められる可能性がある)
- 従業員ひとりひとりにも状況説明をしっかりとおこない、社内で一貫性をもって対応していく
4点以外にも、商品のデメリットをあえて公表することで、守りの姿勢がとれる場合があります。あらかじめデメリットな部分を伝えておけば、デメリットな部分を見つけても法人に対して不快に思うこともありません。
レピュテーションマネジメントにおける2つのコミュニケーション
レピュテーションマネジメントにおいて大切になるのがコミュニケーションです。
2017年にトランスコスモス株式会社がおこなった、消費者と企業のコミュニケーション実態把握についての調査では「いつでも好きなコミュニケーション手段で問題解決できれば企業の評価が高まるか」という問いに対して、約78%もの消費者が「高まる」と答えました。消費者にとって法人とのコミュニケーションこそが、法人の評価の決め手となっているのかもしれません。
平常時のコミュニケーション
平常時のコミュニケーションとは、企業の評価をできるだけ向上させるためのプラスにはたらく手法のことをいいます。具体的には、日頃から消費者や顧客などのステークホルダー(関係者)と連絡を取り合うなど良好な関係を築くための手法です。
いつも自社の商品やサービスを利用してくれているからといって、この先も変わらず自社の商品やサービスを選んでくれるとは限りません。消費者の意見に耳を傾け、顧客のために動く姿勢をみせていくことにより、さらに強い信頼へつなげることができるのです。
危機管理コミュニケーション
危機管理コミュニケーションとは、法人が問題を起こしてしまい、法人の評価をマイナスからゼロ、ゼロからプラスに引き上げるための手法です。危機管理コミュニケーションでもっとも重要なことは、実際におこなう前の準備です。
以下の4点は入念に準備しておきましょう。
- 他の危機対応の事例を集めて参考にし、自社に置き換えて想定しておく
- 問題が起きた場合、伝達の流れや対応者の決定、誰が仕切っていくのかなど、社内フローを徹底しておく
- 問題が起きて、危機管理コミュニケーションを実際に活用する場合に必要なマニュアルの用意(第一報の発信や、記者会見の詳細、広報担当の窓口など細かい部分まで考えておく)
- 実際に問題が起きたことを想定し、マニュアルに沿って模擬訓練を行う
レピュテーションマネジメントの活用事例と明暗を分けた2つの事例
レピュテーションマネジメントは正しく機能していることが大前提です。正しく機能させるには正しい理解と入念な準備が必要です。どんなことで失敗したのか、どんなふうに活用すればいいのか、いくつか事例を紹介していきます。
レピュテーションマネジメントの活用事例
法人 | チョコレートをはじめとするチョコレート製品の製造・化工・販売をおこなっているA社 |
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悩み | テレビでチョコレートのネガティブな部分を紹介され、チョコレート業界の売れ行きが低下してしまった |
対策 | 社内調査で分かったチョコレートのポジティブな部分をさまざまなメディアを通して丁寧に説明した |
結果 | A社の結果は新しい成果として発表されネガティブな情報をポジティブな情報に書きかえることに成功した |
テレビの影響からチョコレート業界全体で売上の低下につながってしまったこの事例では、A社の評価が下がったわけではないにも関わらず、多額の費用と時間を費やし行動に移しています。チョコレート業界のために行動したA社に対し、顧客や消費者だけでなく世間から称賛の声が上がりました。
レピュテーションマネジメントの失敗事例
問題内容 | 2015年にT社の不正会計が発覚し、金融庁がT社を処分 本格的な調査が始まったときは、不正発覚からすでに1ヶ月半経っていた また2017年にもT社による「会計不正」や「無資格検査」「品質偽装」といったごまかしが相次いで表面化した その際、ほとんどのケースに「つじつま合わせ」がおこなわれていた |
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結果 | 社内事情を優先させ、評価してくれる顧客や取引先を騙した結果、T社は信用を失い、東証一部から二部へ降格した |
調査が遅れたとき、世間には調査期間など明確な情報は共有されませんでした。これは問題発覚時の調査の流れや社内体制が整っていなかったことが原因のひとつと考えられます。また、社内の一貫性は大事ですが「嘘」の一貫性は言うまでもなく逆効果になるだけです。顧客や取引先からどんなに強い信頼を得ていても、失うのは一瞬です。T社のように回復することが難しく、一部上場から降格してしまった法人や、倒産してしまった法人も少なくありません。
レピュテーションマネジメントの成功事例
問題内容 | 1982年にJ社で起きた毒物混入事件 何者かによって鎮痛剤に毒物が混入されたという情報が入り、J社は即座に新聞、テレビなどを通じて世間に情報提供をおこなうとともに、高いコストをかけて自主回収にふみきった |
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結果 | 鎮痛剤は店頭から姿を消したが、迅速かつ誠実な対応によって、事件発生2ヶ月後には売り上げの80%まで回復した 事件を通じてJ社の法令順守(コンプライアンス)の姿勢が社会に伝わったことにより、かえってレピュテーションは高まった |
J社は問題が起きた直後に対応するためのチームを構成し、顧客を守ることを第一に考えました。また情報を惜しむことなく提供しつづけ、マスコミなどから厳しい追及を受けても常に誠意ある対応を見せていました。この対応は後に「ビジネス史上もっとも優れた危機対応」として世界各国で取り上げられています。
レピュテーションマネジメントまとめ
法人による悪質な事件や問題が増え、顧客や消費者はもちろん、関係者でさえも法人に対し安易に信頼を寄せづらくなってきています。第三者が信頼できる法人かどうかを知るには、自身で体感する以外に「法人が世間からどのように思われているか」などの評価から感じ取るほかありません。現状の評価を維持したり、さらに向上させていくためには、さまざまな試行錯誤が必要です。マイナス評価を回復させていくためには、並々ならぬ努力と時間が必要です。そして一度信頼をなくしているという事実も忘れてはいけません。いつ何がおきても対応できるようにすることで、法人のレピュテーションを守り、法人全体を守ることができるのではないでしょうか。