【2022年6月】企業炎上調査分析レポート

本レポートはレピュ研を運営する株式会社ジールコミュニケーションズが、独自の調査から「企業の炎上」として判別した事例の分析内容です。先月特に目立っていた炎上事例とその発生要因を解説し、月間を通してどのような傾向、トレンドが見られるのか解説しています。
企業におけるWeb・SNS、及びレピュテーショナルリスクの管理、評価、対策等に活用していただくことを目的として毎月発表しております。

2022年6月の炎上件数の推移

ジールコミュニケーションズの独自調査・判定より、2022年6月の炎上件数は34件となりました。炎上タイプの内訳は下グラフの通りです。

2月から炎上件数の発生増加傾向が注目されていましたが、6月は2022年上半期最多の炎上が発生することとなりました。特に注目すべきは、他の月と比べて法人炎上が多いという点です。また、参議院選が近い影響もあり、政治が関連した炎上発生が増加傾向にありました。

企業公式アカウントでの不適切な投稿が炎上

企業の公式アカウントにおいて、センシティブな内容を面白おかしく投稿したことにより、批判が集まっています。
炎上したのは、全国展開をおこなっている著名なホームセンターです。天候が不安定な6月、当該企業の公式Twitterアカウントにて、以下のような投稿がされました。

「ゴリラゲイ雨が来たらちょっと困るけど、ゴリラゲイ雨をみてみたい気もする」

実際のツイートより引用

ゴリラゲイ雨とは、ゲリラ豪雨(ゲリラゴウウ)をもじったネットミーム的なワードです。2008年ごろからネットやSNS上でトレンドに上がるようなったゴリラゲイ雨ですが、「ゴリラ」と「ゲイ」を組み合わせた差別的な情報を企業の公式アカウントが投稿したとして、SNS上の一部のユーザーから大反発をうけることとなります。

「ゲイを笑いものにして差別を助長させるのは、企業の公式アカウントが行うべきではない!」
「差別的で不愉快に思う人だっているはずなのだから、謝罪すべきだ!」
「この企業ってLGBTQ+への理解があんまりないんだね」

この批判をうけた当該企業は、投稿を取り下げて謝罪文を公表しましたが、サジェストにゴリラゲイ雨が入るなど、企業のレピュテーションに悪影響を及ぼす結果となりました。

加速するホモフォビック的なネットミームの流れ

ゴリラゲイ雨に留まらず、2000年代から爆発的に流行したアダルトコンテンツキャラクターや、昨今では大手動画配信サイトを端にトレンド化した音MADなど、セクシャルマイノリティを揶揄した(ホモフォビック的な)笑いのトレンドは、SNSのみならず、ネット全体で断続的に発生しています。そもそも、「炎上」とは主張の強いユーザーの意見がまかり通る嫌いがあるため、根本的にジェンダー差別の含まれたトレンドであっても、圧倒的な量の肯定意見によってジェンダー差別の指摘をする意見が流されてしまうという背景があります。

SNSにおけるフェミニストの台頭によってジェンダーに関連する意見の発信が活発になり、日本のジェンダー指数も徐々に浸透していると思われがちですが、「おもしろければ何でもよい」といったような臭いものに蓋をする風潮が、本当のジェンダーレス的な社会の実現を阻んでいるのが現状です。

ご不快構文(謝罪風の謝罪)で二次炎上

当該企業はかねてより「SNS炎上防止」に力をいれていたことで有名でした。特に、万が一炎上が発生してしまった際には、「いかにスピーディーかつ誠実な対応をおこなうかは今後のレピュテーションに直結する」として、エマージェンシーの対応に備えた心構えも十分でした。

ところが、実際に投稿された謝罪文は以下のような内容でした。

元ツイートに多数のお怒りをいただいており不快に受け止められた方に謹んでお詫び申し上げます。差別的な意図は念頭になく投稿したものですが、そのような文脈でしようされることもある単語であるとの認識が不足しておりました。誠に申し訳ございません。

実際の謝罪ツイートより引用

この謝罪文をうけたSNS上では、さらに炎上が激化し二次炎上に発展することとなりました。一体、この謝罪文の何がユーザーの神経を逆なですることになったのでしょうか?

「多数のお怒りをいただいており…」

冒頭の一文です。元のツイートに対して多数の批判コメントを受けなければ、そもそも「ホモフォビック的なネットミームを使用して、一部のユーザーを傷つけた」という事実にすら気づけなかったという事実と、ジェンダーレスに対する意識の低さを認めていることになります。

「不快に受け止められた方に謹んでお詫び申し上げます。」

ゴリラゲイ雨というキーワードを用いて、一部のユーザーを傷つけた事実があるにも関わらず、「不快に受け止められた方に」という一文を使用することにより、「不快に受け止められたユーザーがいたかもしれないが、それは受け止め方の問題であり、企業としての問題ではない。」と暗に主張している一文となります。

「差別的な意図は念頭になく…」

「多数のお怒りをいただいており…」と同じく、企業のジェンダーレスに対する意識レベルの低さが露呈した文章になります。今回の炎上の根幹には、無意識のジェンダー差別をおこなうほどの意識レベルの低さがありますが、その問題についての原因究明および今後の改善策に言及していない点もマイナスです。

SNSに投稿した現場写真に対して「危険」の声が殺到し炎上

ある企業の公式Twitterアカウントに投稿された写真が物議を醸しています。

批判を受けたのは、九州に拠点を置く、とある建築・施工系のメーカー企業です。当該企業は、普段から現場や倉庫の画像や動画を頻繁に投稿しており、炎上当日も以下のような現場の作業風景を投稿しました。

実際のツイートより引用

  • 顔に飛び散りそうな火花
  • 外れそうなサイズ違いのヘルメット
  • フェイスプロテクターをつけていない
  • 繊維が巻き込まれやすい軍手を着用
  • 怪我のリスクが高い露出の高い(半袖)服装
                      etc…

など、専門家または同職業に従事した経験のあるユーザーであれば一目瞭然の危険な画像でした。

この画像が投稿されると、一瞬うちに「危険現場企業」として炎上し、そして過去の危険な画像投稿も次々と掘り出される事態となりました。この炎上をうけた当該企業は、投稿およびアカウントを消去し証拠隠滅を図ります。ところがSNS上のユーザーは、

「アカウント消して『逃亡』するなよ!住所諸々出てる企業なんだから電話してやる!」
「魚拓(=スクリーンショット)とったからな!逃げられると思うなよ!」
「危険な穴だらけの現場画像を投稿していい気になるなよ!」

というように、一歩間違えれば死亡事故に繋がりかねないような危険な様子を投稿しておきながら、あまつさえ証拠隠滅をはかって問題をなかったことのように振る舞う企業対応にユーザーの不満は爆発。最終的に当該企業は、公式HP内で企業として「安全対策改善のお知らせ」を掲示し、炎上は収束に向かうこととなりました。

発信情報のWチェックをおこなう重要性

今回の炎上は、建築・施工といった限られた業界内での常識やアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)によって引き起こされた、いわば「偏向的炎上」と言っても過言ではありません。

私たち人間は、自身の経験や見聞きした情報を基に、色眼鏡で物事を判断してしまう嫌いがあります。特に、職場や家庭といった生活の大半をシャアするコミュニティでの経験や情報は、自身の判断に大きな影響を及ぼします。このように、無意識のうちに我々の判断に作用する偏見を「アンコンシャス・バイアス」と呼びます。

今回の炎上では、このアンコンシャス・バイアスが強く影響したために炎上を引き起こしてしまったと考えられます。アンコンシャス・バイアスは、

  • 正常性バイアス
  • 集団同調性バイアス
  • 確証バイアス
  • 権威バイアス

の5つのタイプに分けられますが、今回の炎上は「集団同調性バイアス」だと推測されます。集団同調性バイアスとは、周囲と同じように振る舞うことを良しとするバイアスです。PRとしての情報発信をするにあたり、当該企業のSNS運用担当者は、「『私の知っている』周囲と同じ行為・環境だから、問題はないだろう。」と考えたことが推測されますが、この考えにはある落とし穴が潜んでいます。この場合の「周囲」とは自身の考える範囲の及ぶ狭いコミュニティのことを指しており、多種多様なユーザーが入り乱れるSNSという環境を視野に入れていないという点です。

  • SNS運用担当者自身の周囲と同じ考えであれば問題ないという前提条件
  • SNS運用担当者の知っている環境のみでの反応しか想定していなかった点

この2つの要素が組み合わさった結果、爆発的な炎上を引き起こす結果となってしまいました。

このように、無意識のうちに自信に蔓延る常識を改めて疑う、という行為は大変困難です。アンコンシャス・バイアスによる炎上を防ぐ手立てとして、最も有効な施策は「第三者の監督者(またはコンサルタント)」を立てて情報のWチェックをおこなうことです。監督者として特に有用な人物像として以下のケースが挙げられます。

  • 複数人であること
  • 別部署、出来れば別会社の所属であること
  • 監督者それぞれの年齢や性別がバラけていること
  • 普段から炎上やトレンドの情報収集をしていること

上記のような第三者目線を強制的に作り出すことで、SNS運用担当者だけでは得られなかった視点をもって情報の精査をすることが可能になります。「別部署・別会社の人材を立てるのは厳しい」という場合は、最低限でもSNS運用を複数人で回すことで第三者目線での情報精査を取り入れることをお勧めいたします。

6月の炎上【傾向と分析】

近年最多の炎上件数を記録したことで、SNS炎上というトラブルの注目度はピークに達していると言えるでしょう。昨年であれば特に炎上まで発展しなかった情報も、ニューストピックやまとめサイトのPV稼ぎも兼ねて、面白半分に炎上事例として祀り上げられ、結果として企業のレピュテーションに大きな影響を及ぼす事態となっています。そのような炎上に対して、ユーザーサイドも追い打ちのように批判コメントを投稿し、当たり前のように批判をおこなう節があるため、6月の炎上件数増加はなるべくしてなった現象だと推測されます。

その一方で、SNS運用における企業の認知拡大や、ユーザーの購買意欲増加は勢いを増しています。 アライドアーキテクツ株式会社が2022年におこなった『ライフスタイルに関する調査』の結果では、企業の公式Twitterアカウントをきっかけに商品・サービスを購入したと回答したユーザーが79.1%に上ることが判明しています。これは、同社が2020年におこなった同様のアンケート結果である60.5%という数字を遥かに凌ぐ勢いとなっています。

アライドアーキテクツ株式会社『ライフスタイルに関する調査』より抜粋
https://service.aainc.co.jp/product/echoes/whitepaper/025

このようにSNS運用は、企業の認知拡大とレピュテーションを傷つける炎上リスクの両側面を併せ持った諸刃の剣と言えるでしょう。この先SNSはよりに身近、かつ無くてはならない存在となるでしょう。企業として、SNSを運用することはもちろん、同時に炎上リスク対策を施すことも同じくらい重要になるという点に関しても、ご認識いただければと思います。

事例の分析で、炎上リスクのノウハウを蓄積

ジールコミュニケーションズが開催している無料のオンラインセミナーでは、今回ご紹介した炎上事例の他にも、様々な事例をさらに深掘りする形で解説しております。セミナー中の炎上事例解説では、データに基づいた炎上トレンドや、具体的に注意すべき投稿内容についてお伝えしております。

ぜひ、弊社セミナーにご参加の上、今後のSNSリスク対策にお役立ていただければ幸いです。

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