「ソーシャルリスニングとはなにか」「ソーシャルリスニングで活かす4つの事例と無料ツール」について詳しくまとめました。
2018年現在、少しずつ耳にする機会も多くなった「ソーシャルリスニング」というワードですが、実際にどんなことができて、何を得られるのか、あまり詳しく知られていないのが現状です。
そこで今回は、ソーシャルリスニングについての説明だけでなく、活用方法から使えるツールまで徹底的に解説していきます。企業のマーケティングに活かしたい方や、自社に関する風評や炎上など世間の声が気になる方は必見です。一緒に学んで、自社のブランドを守りつつ効果的なマーケティングを行っていきましょう。
目次
ソーシャルリスニングとは
ソーシャルリスニングとは、ソーシャルメディアから消費者の声を収集し、調査・分析を行い、マーケティングに活かす手法のことをいいます。TwitterやInstagram、Facebookなど代表的なソーシャルメディアに加え、ブログや掲示板、レビューサイトなどから、自社に対する評価やブランド、商品に対する感想・意見などを社内で共有・可視化し、消費者視点のマーケティング戦略につなげることを目的としています。
また、炎上につながりそうな投稿や炎上してしまっている投稿をいち早く検知し、炎上から企業を守ることも、ソーシャルリスニングの大事な役目となっています。
ソーシャルリスニングが注目されているワケ
ソーシャルリスニングが注目されている理由に、消費者の声をリアルタイムで把握できることがあげられます。ソーシャルメディアが普及するまでは、企業側が行うアンケート調査やインタビュー調査などから消費者の声を収集するという手法が取られていました。しかし、企業側が行うアンケートやインタビューは事前に設問やストーリーが用意されているため、質問がかたより、誘導された回答も少なくありません。
ソーシャルメディアの普及後は、消費者が自分で情報を発信できるようになり、その情報を参考にする人も増えてきました。そのため企業側は、ネット上での消費者の本音や、消費者同士の自然なやり取りを自社のサービスに反映することができる反面、自社の風評や炎上に関して敏感にならざるを得ない状況となっています。
ソーシャルリスニングで何ができるのか
ソーシャルリスニングでできることは、大きく分けて4つあります。
市場調査 | 商品名やカテゴリなど特定のキーワードを含む、口コミデータからトレンドの調査が可能 |
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リスクモニタリング | 炎上対策のため、顧客の不満を拾うネット監視や炎上につながりかねない投稿を素早く検知・対応することが可能 |
効果測定 | 広告やキャンペーンの効果を、口コミの内容から調査できる 拡散量や影響力の高いアカウントを把握、今後のマーケティングに活用できる |
ブランド調査 | 他社ブランドとの比較で、サービスなどの改善点を見つけられる 自社ブランドが一般のひとからもしくは顧客からどう思われているか分析できる |
NTTデータ経営研究所が平成25年に行ったソーシャルリスニングの実施状況の調査では、43.4%の企業が「自社の風評や炎上、精密情報の漏えいなどに関するソーシャルリスニング」を実施しており、「自社の商品・サービスに関する投稿数やポジティブ・ネガティブ件数の定量的な把握」のために実施している企業は39.5%と自社の風評や炎上に関する対策のために取り入れている企業が多いことが分かっています。
効果的なソーシャルリスニングをするための準備
ソーシャルリスニングを取り入れていても、効果がなければ意味がありません。効果的に活用するためには、目的に応じて調査・分析のやり方を工夫することが大切です。
ソーシャルリスニング3つの方法とは
ソーシャルリスニングは抽象的表現の「定性的」と具体的数値を用いた「定量的」の両方から分析を行うことが理想です。また分析するデータが多いほど、正確な結果につながります。
1. 数値分析 | キーワードを含む投稿件数を抽出し、カテゴリ別の割合などを算出する |
2. 投稿・アカウント分析 | 抽出した投稿から頻繁に出るキーワード割り出しなど |
3. セグメント分析 | 数値・投稿・アカウント分析で得た情報を、さらに細かく分類していく |
分類して終わりではなく、「炎上している投稿」「炎上しそうな投稿」「炎上まではいかないけど危険な投稿」など、細かく分類したものの傾向など分析していく必要があります。
ソーシャルリスニング3つの流れ
ソーシャルリスニングを行う前に、ソーシャルリスニングを通じて何を得たいのか、知りたいのか、何の判断材料として活用するのかを設定しなければなりません。
1. 知りたいことの決定 | まずは何についての情報を収集し、何を分析したいのかを決める |
2. 分析対象の定義 | 分析の対象となる母集団を決める 例:炎上に関する内容を対象とした場合、さらに詳しく「炎上」「ネガティブ」などのキーワードを決める |
3. 情報収集・分析 | ツールなどを使って情報収集をし、傾向を見ていく 例:発言内容をカテゴリ分けし、何に対しての発言なのか深掘りしていく |
ソーシャルリスニングの法人活用3事例
今回紹介するのは企業マーケティングに関する活用事例ですが、事前準備をきちんと行っていれば、ポジティブな投稿もネガティブな投稿も収集できるので、風評や炎上を予防するためのソーシャルリスニングも同時に活用することができるのです。
S社の場合 | 課題 | 自社が運用しているSNSや自社に対する投稿について社内でもっと興味を持ってもらいたい |
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対策 | ソーシャルリスニングツールを導入し、分析結果を社内通路に設置 | |
結果 | 社員全体が自分たちのブランドに対してどんな投稿がされているか認識でき、消費者の生の声として、各業務に活かすことができた |
T社の場合 | 課題 | 自社が伝えたいメッセージは変えず、消費者の声を取り入れたコンテンツを企画したい |
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対策 | 独自のソーシャルリスニング調査から消費者の本音やSNS上で話題となっていることを文脈から導き出した | |
結果 | 自社が伝えたいメッセージと消費者の本音をつなぎあわせたコンテンツを企画することができた |
K社の場合 | 課題 | ソーシャルリスニングへの価値が見いだせず、導入を検討したままになっていた |
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対策 | とりあえずソーシャルリスニングに取り組んでみると、競合ブランドよりも自社についての話題が少ないことが分かった | |
結果 | 話題量をKPIとして話題量を盛り上げていくための施策を生み出すことができた |
ソーシャルリスニングでできる4つの活用事例とは
ソーシャルリスニングで活用できるデータには以下の4つがあげられます。
- 風評被害や炎上などのリスク
- ブランドイメージ
- 消費者のニーズ
- 広告施策の方向性
活用事例1:風評被害や炎上などのリスク
企業のブランドイメージを低下させる最大の原因は風評被害や炎上にあると言われています。どんなに小さな火種でも一度炎上してしまうと、鎮火するまでにどうしても時間を要してしまいます。また対応の仕方によっては、二次炎上を引き起こしてしまったり、ブランドイメージを回復させることができず廃業に追い込まれてしまう場合もあります。炎上で最悪の事態を起こさないためには、ソーシャルリスニングだけでなく、ソーシャルメディアポリシーの策定や、万が一のときの社内フローなども決めておくことが重要です。
活用事例2:ブランドイメージ
消費者がもつ、企業の商品・サービスに対するブランドイメージを把握することができます。企業が思っている魅力や欠点と消費者が思っている魅力や欠点では異なる点も少なくありません。企業と消費者の認識の違いを把握することにより、消費者視点のサービスを心がけましょう。
活用事例3:消費者のニーズ
ソーシャルリスニングでは消費者みずから発信している情報を収集するため、アンケート調査では得られなかった率直な意見を知ることができます。企業の窓口に寄せられる、問題意識をもった消費者の意見だけでなく、SNS上に投稿されている消費者の本音を取り込み、新しい企画や問題点の改善などに役立てましょう。
活用事例4:広告施策の方向性
リアルタイムでタイムリーな消費者の反応から、企業の広告やPR施策の良し悪しを測定することができます。広告のキーワード選びや、デザインなど、今話題のものをSNS上から拾い上げ活かすことで企業の広告戦略に幅広く応用できるでしょう。
ソーシャルリスニングに使える2つの無料ツール
Googleアラート | 特定のキーワードを登録すると、登録したキーワードを含む情報が検索結果の上位に入ったときに、自動で通知してくれるツールです。ニュースサイトやメディア情報を見に行かなくても、知りたい情報のキーワードを登録しておくだけで、GmailかRSSフィードに通知がくる仕組みになっています。 |
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Yahoo!リアルタイム検索 | Twitter、Facebook、Instagramの投稿を特定のキーワードで一括検索できるツールです。ただし、非公開にされていない日本語のツイートやステータスが公開となっているFacebook投稿など、検索結果に反映される投稿には制限があります。 |
ソーシャルリスニングを初めて行うという方は、自社に関するワードがどのように拾えるのか、どのようなことが分かるのか、無料で使えるツールで試してみましょう。
ソーシャルリスニングに潜む5つのデメリット
いいことづくしのソーシャルリスニングですが、取り入れ方によっては効果のないものになりかねません。ソーシャルリスニングを取り入れるにあたって気を付けたいことをまとめました。
- 情報量が膨大なため、精査が難しい
- SNS上の投稿は、同じ単語でもつかう状況や人によって意味合いが変わってくる
- データ収集を狙い通り行うためには、ソーシャルリスニングツールを駆使すべき
- 消費者目線のマーケティングを意識しすぎて、商品やサービスにかたよりが出てしまうリスクがある
- 調査対象者の属性が把握しにくい(年齢・性別・職業など)
ソーシャルリスニングまとめ
2018年現在、SNSの利用者は国内だけでも7,000万人以上といわれています。個人はもちろんのこと、企業もSNSを通じて消費者とのコミュニケーションをとること、情報を把握することの重要性は年々増してきています。企業にとって重要なキーワードがどこかに落ちているかもしれませんし、炎上の火種となるキーワードがごろごろ転がっているかもしれません。ソーシャルリスニングは自身でツールを利用したり、独自のシステムを駆使している業者に頼むことで、時間や人が足りなくても導入することが可能な手法です。企業を守るため、企業の発展のため、いい意味で起爆剤となってくれるかもしれませんね。