「あの会社、仕事きつそうだしブラック企業みたい」
「ブラック企業にだけは就職したくないよなー」
こんな風に、会話で一度は「ブラック企業」という言葉を使ったことがあると思います。身近な言葉になった「ブラック企業」ですが、従来ブラック企業の広義とは「暴力団などの反社会的勢力と繋がりを持つ企業」という意味でした。しかし2017年現在、その言葉は本来の意味を飛び越えて、企業の風評被害を助長する化物のような存在になりつつあります。レピュ研では「ブラック企業」の言葉のもつ意味が、時代の流れとともにどう変化してきたのか、まとめてみました。
ブラック企業は進化する
2008年「ブラック会社に勤めているんだが、もう俺は限界かもしれない」というビジネス書の発売を皮切りに、ブラック企業という言葉が世の中に広まりました。2012年からは、労働について問題視されている企業の頂点を決める、ブラック企業大賞という企画が毎年開催されていたり、2013年には新語・流行語大賞に「ブラック企業」がノミネートされていたりと、いろいろなところでこの言葉は話題です。
違法な実態をあらわす言葉
年間約3000件の労働相談を受けているNPO法人POSSEの代表、今野晴貴さんは「ブラック企業」について、こう述べています。
今日使われる一般的な意味は「違法な労働条件で若者を働かせる企業」ということになろう。いわば、若者の側から企業の労働実態を「告発」する言葉である
企業の違法な労働環境を、事細かく説明するよりも「ブラック企業」という言葉のニュアンスが、若者にとって伝えやすいものになっているということです。さらに短い言葉であるからこそ、ネット上でカンタンに企業の実態を暴く「ネット告発」として使われることが多くなったとも言えるでしょう。
ブラック体質は「感染」する
2016年の8月にあるTwitterユーザーの、企業に洗脳されたとも思えるツイートが話題となりました。
冠婚葬祭の為に有給取ったら「有給取って申し訳ありませんでした」という題材でクソ長い反省文書かされたブラック企業で働く学生時代の後輩氏、すっかり毒されてしまったらしく「2連休とか実質無職じゃないっすかww」と言っていて終わったと思った。彼の人としての生は死んだ。殺されてしまった。
— 春野 海 (@Rock_ozanari) 2016年8月8日
冠婚葬祭の為に有給をとった後輩が、なぜか反省文を書かされるという驚きの事実が分かり、Twitter上で話題になりました。さらに、反省文を書いた本人は、反省文提出を当たり前のように受け入れおり、ブラック企業に染まってしまっているようです…
ブラック企業の間違った使い方
ブラック企業は、一目で企業の違法な実態を知ることができる便利な言葉ですが、ときに間違った使い方をされるときがあります。
会社の方針にブラック企業認定
グローバル進出を考えたある企業が、社員に英語教育をしようと、週に10時間以上英語を勉強してもらう指示を出したところ、就活生からブラック企業と思われてしまったケースがあります。会社は社員に対して、どう勉強すればよいか指導し、授業料も全額会社が負担するといった徹底をしていました。ただ、テストで一定以上の合格点を出さないと、給料から教育料を差し引くプランも同時に発表していたのです。もちろん会社の方向性や成長を一緒に願い、猛勉強する社員もいれば、まったく勉強せずに、給料が下がって文句や愚痴を言い出す社員もいたのでしょう。不満を持った社員たちが掲示板やブログで騒ぎ立てた結果、ブラック企業認定されてしまったのです。
ブラックじゃない「ブラック企業」とは
会社の打ち出した方針や教育プランが、自分の考え方や価値観にマッチせず、環境に適応できなくなり、その結果「ブラック企業」と文句や愚痴をもらしてしまう従業員がいるということです。しかし従業員からすれば、急に企業方針を180度変えるような会社だったり、ころころ意見が変わる上司がいたりすると、たまったものではありません。企業として、会社のレベルアップを狙ったものでも、従業員と密にコミュニケーションをとることが今後必要なのかもしれません。
こういった会社と従業員の食い違いによる問題は、ネット上でブラック企業と騒ぎ立てられる要因になります。さらに、企業の真実や本質をなかなか知り得ない新卒者や転職者にとっては、恐怖で後ずさりしてしまうほど「ブラック企業」には強い言葉の意味があるのです。

ブラック企業という言葉に不安を感じてしまう
大学生の仕事に対する意識
大手人材広告企業マイナビが調査した、2018年卒大学生意識調査によると、就職氷河期の真っ只中であった2012年頃と比べ、給料が安く残業が多い企業に行きたくない学生が上昇しています。また、仕事よりプライベートを優先したいと考える傾向が年々増加しており、仕事に対する意識が変わっているのだと分かります。

プライベートも充実した働き方を望んでいる
この調査により、バリバリ仕事はするけど、時間をしっかり管理してプライベートとのオンオフでメリハリをつけたいと思っている学生もいれば、お金は稼ぐものではなく会社から貰うものであり、仕事は獲得するものではなく与えられるものだと思っている学生もいます。時代とともに働き方に意識変化があることを、覚えておかなければいけません。また、時代に合わせた働き方を柔軟に取り入れていくことが「ブラック企業なんじゃないか…?」などという意識を取り払う要因になるはずです。
企業の真実を知ってもらうために

お互いを信頼することが大事
企業の全てのネガティブな評価を、うのみにしてはいけません。人は認知の歪みから、過度にネガティブな評価をしてしまうことがあるからです。心理学の世界では、怒りや悲しみを感じた時に認知の歪みが起こりやすいとされています。退職理由や、指導方法の口コミにネガティブな評価が多いのは、会社への不満だけを抱えたままに口コミを書いたからではないでしょうか。企業のネガティブな情報は、本来の意味をもった表現なのか、認知の歪みから来る本質とは異なるものなのか、判断できる力が就活生には必要なのかもしれません。
社員全員が成長しようと同じ方向を向いて進むことは、企業の躍進や拡大に繋がります。ただ、新しい方針や教育スタイルを発表するときには、従業員が理不尽に思ったり、おかしいと思ったりしていないか、すり合わせることも大切ですね。
レピュ研では、就活生や従業員に企業の本質を知ってもらう取り組みとして「企業の今」を取材して、コンテンツ配信のサービスを行っています。「なかなか企業を知ってもらえる機会を作れない…」「ブラック企業と噂されてしまい、求人活動がうまくいかない」こんなお悩みがあるときは、ぜひお気軽にご相談いただければと思います。